下北沢通信

中西理の下北沢通信

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佐々木彩夏は再び無観客ライブ配信に新風吹き込むだろうか? たこやきレインボー生配信ライブSHOW「真夏のホームパーティー・ザ・ワールド」開催決定!総合演出は佐々木彩夏(ももいろクローバーZ)

たこやきレインボー生配信ライブSHOW「真夏のホームパーティー・ザ・ワールド」開催決定!総合演出は佐々木彩夏ももいろクローバーZ

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ももいろクローバーZ佐々木彩夏が総合演出を担当した生配信ライブSHOW「真夏のホームパーティー・ザ・ワールド」を見た。コロナ禍で集客が困難になるなかで、配信ライブは現況で自分たちの魅力をファンに伝えるための重要なツールとなっている。私が専門としている演劇でも類似な現状は起こっている。
演劇でもZOOM演劇のような新たな状況に適用した作品を志向するか、舞台を無観客で上演してそれを中継するか方向性が分かれているが、アイドルも同様である。
そうした中でももクロの動向は特に独自路線を行く。横浜アリーナでのソロコンが中止となった佐々木彩夏が大規模なライブハウスを借り切り、移動撮影を駆使したライブショーを配信。その後の西武ドームでの夏ライブを中止しての配信では逗子アリーナを借り切り、野外や船上も含めての移動撮影を敢行しまだテレビが元気だった時代のバラエティーショーを再現した。
 最初に自分のソロライブ配信「A-CHANNEL」で複数のスペースに美術を持ち込み、移動撮影によりシーンを展開するというおそらくライブ配信史上初の新機軸を打ち出した佐々木彩夏が今度は妹グループのたこやきレインボー(たこ虹)のライブ演出を引き受け、配信ライブというコンテンツにさらなる新風を吹き込んだ。
 実はたこ虹というグループの側から今回の配信ライブを考えてみるとたこ虹はこれまでも単純な歌って踊りましたというようなライブをすることはリリースイベントなどを除けばあまりなく、ライブごとに企画演出を練り、時にはショー仕立てで行ったりもしてきた。
 直近の単独ライブ配信「CLUBRAINBOW2020」*1はライブ会場をDJフロアにするというコンセプトのツアー「CLUBRAINBOW2020」をリニューアルし再現するという趣向で、スタイリッシュなライブをいかに臨場感のある形でその熱をそのまま伝えるかというその時の課題は今回とは真逆のものであったが、相当以上に水準の高いものを実現していたと思う。
 今回のライブ配信の方向性は前回と対極と言っていい。臨場感よりも作りこんだ世界観を体現させて、観客を魅了しようというものだった。監督にはMVなどの映像ディレクターとして知られる河谷英夫*2を迎え*3佐々木彩夏総合演出のもとで「ライブとMVの融合」に挑戦した。そして、その試みも予想以上の成功となったのではないか。
成功の鍵となったのが河谷英夫の起用であろう。無観客ライブ生配信ではこれまでそれがライブ中継かテレビの音楽番組の制作スタッフによって作られることが多かったが、いずれもその本来の姿からすればその劣化版に見えてしまうきらいがあった。ももクロが追求しはじめたのはいわば第三の道で、佐々木敦規とその制作チームはライブ演出とライブ中継の専門チームであるが、これまでのももクロによる2回の配信ライブは現場の指揮を佐々木敦規が担当。佐々木敦規はももクロ大規模ライブの総合演出ではあるが、テレビマンとしてはバラエティー、スポーツ中継の経験もある。臨機応変の対応が可能なのが特徴だ。臨機応変の対応が可能なのが特徴だ。
 それに対して、河谷はももクロ陣営ともMVの撮影監督として以前からつながりがあるが、つんく♂とコンビを組んでハロープロジェクトのMVを手掛けた人物であり、いわばアイドル映像撮影のスペシャリスト。それだけでなくWOWOWの映像プロデューサーとしてテレビでの経験もある。
 無観客ライブの生配信に適した人材としては映画監督のように収録で映像制作が出来るというだけでは難しく、テレビの生放送のようなノウハウも必要*4でそうした点では河谷の起用は正解だったと思う。
 冒頭の浴衣姿でたこ虹メンバーが全員で共同生活をしている大阪の「たこ虹ハウス」で「サンデーディスカバリー」(「ムチャミダス」のテーマ)を歌う場面から始まり、「真夏のホームパーティー・ザ・ワールド」の表題通りにドラえもんの「どこでもドア」的な不思議な扉を通り、たこ虹のメンバーがアフリカやヨーロッパ、米国と旅に出かけて、家にいながら世界を巡るというファンタジーである。
 アフリカ篇でのサファリルックやヨーロッパ篇での「ローマの休日」でのオードリー・ヘプバーンにオマージュした衣装、米国篇でダイナーのウエイトレスのような真っ赤な衣装とそれまでのライブ衣装とは一線を画したような「かわいい」衣装で現れることで現実を超えた夢のような世界を見せてくれた。
 全編たこ虹オリジナル楽曲によるものだが、コロナによる非常事態宣言の下でたこ虹ハウスから移動できずにほとんど閉じ込められたような状況で毎日晩御飯の時間に「たこ虹の家にいるTV」を配信し続けたたこ虹に対しての佐々木彩夏の「あなたたちは家にいても世界とつながることができたんだよ」というエールなのかもしれないと思った。
 それを踏まえて、見事だなと思ったのはZOOMを連想させるような画面分割で歌った「もっともっともっと話そうよ-Digital Native Generation-」。アイデアは意表をついたものではあったが、ライブ全体の意図を体現するような演出で、佐々木彩夏の才気を感じた。
 それでも配信が魅力的であったのはたこ虹のメンバーのダンス、歌、そして映像における演技のスキルの高さと優れたアイドル性ゆえであることは間違いない。それがアイドルを魅力的に撮影することに長けた河谷の撮影スタイルとピタリとはまり、それを佐々木彩夏がさらに「かわいい」にフォーカスして衣装や演出面の提案で磨き上げた。それが絡み合って、総合的にいままでにない良質の正統的アイドル映像コンテンツが出来上がった。
 逆に言えばそこが佐々木敦規演出に代表されるももクロの舞台演出との大きな違いだろう。「夏のバカ騒ぎ」に代表されるようにももクロのライブではここまでの「アイドル的なかわいさ」が正面から強調されるということはない。一方のたこ虹は「たこ虹の家にいるTV」ではバラエティー的な対応力や関西出身者らしい笑いへのこだわりも感じるが、「かわいさ」を追求したライブもあるなど女の子の女の子としての魅力を正面から見せていくことに躊躇がない。このようにスターダストプラネットの中では近しい位置にいるももクロとたこ虹だが方向性には大きな違いもある。佐々木彩夏の演出はスタプラ内部の人間であり、自らもアイドルであるという有利さを生かして、たこ虹ならではの魅力である「面白さとアイドル性」の両方を見事に引き出すものとなった。
 

セットリスト
M-1 サンデーディスカバリー(short ver)
M-2 サマーゴーランド(short ver)
M-3 なにわのはにわ
M-4 踊れ!青春カルナバル
M-5 プレイバックス
M-6 Boules de poulpes S'il vous plait
M-7どっとjpジャパーン!
M-8 ウエッサイ・ストーリー
M-9 Whoop It Up!
M-10 恋のダンジョンUME
M-11 もっともっともっと話そうよ-Digital Native Generation-
M-12 Pa Pa Pa Party
M-13 ナナイロダン
M-14 RAINBOW~私は私やねんから~
M-15 Super Spark
M-16 ほなまたね サマー(ギターver)

たこやきレインボー 生配信ライブSHOW 「真夏のホームパーティー・ザ・ワールド 」
◆開催日
8月29日(土)夜7:28(なにわ)開演

◆総合演出 
佐々木彩夏ももいろクローバーZ

◆構成 
オークラ

◆監督 
河谷英夫
■視聴期間
▼生配信
2020年8月29日(土)19:28〜21:00(終演予定)

▼見逃し配信
2020年8月31日(月)12:00〜2020年9月29日(火)23:59
◆視聴チケット
料金:3500円
発売日時:2020年8月21日(金)20:00
※チケット発売情報の詳細は、2020年8月21日(金)19:28からのYouTube生配信
「たこ虹の家にいるTV」(たこやきレインボー公式YouTubeチャンネル)にて発表致します。
https://www.youtube.com/channel/UCkMiZJ-4yUDisrCB6_Bk2Gg

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