下北沢通信

中西理の下北沢通信

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DULL-COLORED POP 福島三部作 第一部『1961年:夜に昇る太陽』 | Fukushima Trilogy #1 “1961: Midnight Sunrise”@Live video streaming

DULL-COLORED POP 福島三部作 第一部『1961年:夜に昇る太陽』 | Fukushima Trilogy #1 “1961: Midnight Sunrise”@Live video streaming

昨年の岸田國士戯曲賞を受賞した谷賢一の「福島三部作」の受賞後初めての再演となった。今回は劇場での上演に加えて、配信による同時視聴も行われ、それを見ることができた。
この作品の上演自体は実は一昨年に「福島三部作」の3部連続上演が行われた時にはスケジュールの関係で見ることができず、その前の年の「第一部単独上演」以来の観劇となった。
谷賢一の「福島三部作」は東日本大震災の際に原発事故を引き起こした福島原子力発電所がどのように誘致、建設されて大惨事を引き起こすに至ったのかという歴史を全三部という長尺の舞台として上演するものだが、そのうち第一部は原発の立地が最初に決まった1961年の出来事が描かれている。

DULL-COLORED POP の「1961年:夜に昇る太陽」は全体を3部構成とし、福島と原発の誘致決定から3・11での原発事故発生までの50年の歴史を振り返ることで福島第一原子力発電所の事故がなぜ起こったのかに切り込んでいく。
 第1部は原発双葉町が誘致することになる経緯が原発用地の土地を東京電力に売却することになる家の兄弟たちの目によって語られる。
 主要登場人物には実はそれぞれ実在のモデルがある。物語の核となる穂積家の3兄弟は長男は谷賢一自らの父が、次男・忠は故岩本忠夫元双葉町長、3男も実在するあるジャーナリストがそれぞれモデルだという。
 県は反対運動を恐れてか、地元に十分に説明をすることなしに秘密裏に原発立地調査を進める。原発立地についての是非の論議が町民たちの総意のコンセンサスを得るということではなくて、「絶対に安全だ」との一方的な説明だけで話をすすめ、この芝居ではただひとり技術的な側面から疑問を呈することのできる東大で物理学を学ぶ長男の質問には直接答えることをしないで、売却を躊躇するなら、他にも適地はあるなどと圧力をかけ、即断即決を迫る。ひとつの家族とするなどいくぶん実際の話をデフォルメしている点はあるけれど、当時の福島県そして双葉町が置かれた絶望的な状況と大方このような経緯で、実際の現実的なリスクなどは論議されることなく、原発の誘致が決まっていったのだろうなということは一定以上の説得力があった。

 この三部作が興味深いのは連作でありながら、演劇としてはそれぞれの作品がまったく異なる様式で上演されていることで、第一部は東北の寒村を舞台にそこに東京の大学に在学していた長男がひさしぶりに帰郷したところから、物語は始められるが、帰ってきた村(のちの双葉町)の子供らが人形劇により演じられるように全体として日本昔ばなしめいたトーンで表現されている。「福島三部作」は各部がそれぞれ双葉郡に住む三人兄弟それぞれの物語となっていて、下の二人が地元に残ったのに対して、長男だけが東京の大学に進学していたこともあり、故郷を出て(を捨てて)東京で暮らすことになる。境遇はまったく異なるが、東京に出て劇作家になり、そこで震災・原発事故を迎えた谷賢一の自身の居た堪れなさをもっとも仮託した人物がこの長兄であると思う。

 作・演出:谷賢一[DULL-COLORED POP]
 美術:土岐研一 照明:松本大介 音響:佐藤こうじ[Sugar Sound]
 衣裳:友好まり子 映像:松渾延拓 舞台監督:竹井祐樹[StageDoctor Co.Ltd]
 演出助手:美波利奈 制作:小野塚央
 国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2021

 出演:大原研二、佐藤千夏、ホリュウキ、宮地洸成[マチルダアパルトマン]
 [以上DULL-COLORED POP]、有田あん[劇団鹿殺し]、井上裕朗、オレノグラフィティ、
 柴田美波[文学座]、都築香弥子、春名風花、平吹敦史、山本亘
 ワタナペケイスケ[アマヤドリ]

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