下北沢通信

中西理の下北沢通信

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しあわせ学級崩壊『幸福な家族のための十五楽章』@WestEndStudio

しあわせ学級崩壊『幸福な家族のための十五楽章』@WestEndStudio

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 しあわせ学級崩壊は主宰、僻みひなたによるオリジナル戯曲とシェイクスピア作品をこれまで交互に上演してきた。大音響のEDMに乗せて、マイクでセリフを朗誦するようなスタイルが特徴で、シェイクスピア作品などではライブハウスやスタジオ空間を使って、オールスタンディングの観客に人が密集したクラブのような雰囲気で作品を見せていくということをしており、現在のコロナ禍の状況では作品上演でのハードルが非常に高くなっていた。
 この『幸福な家族のための十五楽章』は昨年上演を予定していたものの、小屋入り4日前に上演を断念した作品ということだが、舞台の客席側には透明なパネルを張り、観客との接触を物理的に遮断したうえにキャスト全員がマスクをしたまま演技をする*1という徹底的に感染症対策を施した演出となっていた。
 実は劇団はけいこ期間中にもPCR検査を全員が複数回行い、実際にひとり陽性者が出てしまったため、その出演者を差し替えているなど、準備段階からの決定的な感染対策を情報としても外部に公開したうえでの上演ともなっており、感染対策のレベルはその時点でかなり高いと思われる。それゆえに今回の演出には実際の感染対策という以上にこの物語の中で描かれる世界の人物らの閉塞感をビジュアル的に提示するという意味合いが大きいのではないかと思われた。
 内容としては家族を捨てて家を飛び出していた息子が父親の死の報を聞いて、家に戻ってくると、それぞれ思惑の異なる兄妹らの間に疑心暗鬼が広がり、互いに憎しみ合うような空気感に覆いつくされていたという筋立て。オリジナルの音楽*2に乗せた群像による朗誦劇はカタストロフ(破滅)に向けて突き進んでいく。出演者全員が喪服を連想させるような黒のマスクで顔を隠し、衣装も黒。『幸福な家族のための十五楽章』との表題だが、セリフには会話劇的な日常性はなく、劇的に交錯していく有様は時にシェイクスピアのそれを想起させる時もあり、その独特の雰囲気はしあわせ学級崩壊ならではのことかもしれないと考えさせられた。

しあわせ学級崩壊

『幸福な家族のための十五楽章』

作・演出・演奏:僻みひなた

2021年2月26日(金)~28日(日)

しあわせ学級崩壊

『幸福な家族のための十五楽章』

 父が死にましたので。僕たちは、家族とは呼べない何かになってしまいました。

▼脚本・演出・演奏▼
僻みひなた
スタッフ
脚本・演出・演奏:僻みひなた
音楽:上座部
音響:深澤大青
衣装:西田麻梨果
宣伝美術:林揚羽
制作:林揚羽、上岡実来
(以上、しあわせ学級崩壊)
舞台監督:小川陽子
舞台美術:板倉勇人
照明:緒方稔記(黒猿)
制作補佐:佐々木美優
当日運営:斎藤理佐
代役控え:阿部遊劇手
映像撮影:屋上
写真撮影:Yoshiyuki、淺井圭介
WEB:小林タクシー、阿波屋鮎美
▼会場▼
WestEndStudio

西武新宿線新井薬師前駅」南口より徒歩7分
JR、東西線中野駅」北口より徒歩15分 
〒165-0026
東京都中野区新井5-1-1 スタジオライフビル1F

TEL:03-5942-5858
FAX:03-3319-2302
▼タイムスケジュール▼

2021年2月26日(金)~28日(日)

2月

26日(金) 14:00◆ / 18:15◆
27日(土) 11:30 / 15:00 / 18:15
28日(日) 11:30 / 15:00

昨年、2020年、小屋入り4日前に上演を断念した作品、『幸福な家族のための十五楽章』2021年2月に上演が決定致しました。
劇団員さん方の努力と、沢山の方からのお力添えやご支援、ご声援のおかげで、このように発表が出来ております。

本当にありがとうございます。
キャストは全員そのまま。気持ちを改めて、挑みます。全く落ち着かない世の中でございますが、ご来場いただけましたら幸いです。
どうぞ、よろしくお願い致します。

*1:

*2:
しあわせ学級崩壊『幸福な家族のための十五楽章』MV - For A Rainy Day