下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

アップデイトダンスNo.83「静かな息」quiet breath@荻窪アパラタス

アップデイトダンスNo.83「静かな息」quiet breath@荻窪アパラタス

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当初は佐東利穂子とのデュオとして構想していたが、コロナの緊急事態宣言の延長もあって今回は勅使川原三郎のソロとなった。静かなピアノ曲と重なり合い勅使川原三郎の生の呼吸音が息遣いとして聴こえる。初めてコンテンポラリーダンスを見た頃のことを思い出した。「息とダンス」というのが今回のソロダンス「静かな息」の主題のようだが、この息とダンスと音楽の直線ではない関係性はコンテンポラリーダンスというジャンルを見た時に初めて意識した。実は私の場合、コンテンポラリーダンスの前にバレエやジャズダンスの公演などは数は多くないが見たことがあった。ヒップホップのダンスも見たことがあるにはあった。最初に見たコンテンポラリーダンスは関西に拠点を置く冬樹ダンスビジョンというカンパニーであったのだが、彼が多用していた水中の藻がゆっくりとたゆたうような動きはこの「静かな息」と少し共通点があった。そのひとつはそのたゆたうような動きがダンサーの呼吸(息)に連動していて、バレエやジャズダンスのように音楽にシンクロした動きとはなっていないことだった。冬樹の作品には群舞が多かったが、それぞれのダンサーの動きの連動性を「息で合わせる」と言っていて、その動きはバレエやストリートダンスの群舞がそうであるように音嵌め的に直接音楽のリズム(つまりカウント)と紐づけられたものではなかったからだ。
勅使川原三郎作品のダンスの動きと音楽の関係もヒップホップのダンスのように直接的に音楽が奏でるリズム(拍)に紐づけられているわけではないが、かといって例えばマース・カニングハムのように音楽と動きが完全に独立したものとして切断されているわけでもない。ダンスの動きと音楽の間には深い関係がある作品が多く、ダンサーも音をよく聞いて動いている場合が多いがこの「静かな息」という作品では勅使川原の動きは直接ピアノの音に紐づけられているわけではなく、間に呼吸が介在し、その呼吸はピアノの音と響きあっているのだけれど、ダンスのムーブもそれとも響きあっている。
それゆえのピアノの曲と動きの関係性の距離感がこの作品ならではのものとなっていて、そこに「静かな息」の面白さがあるように感じた。
見る側もそれを見るときの呼吸と舞台のパフォーマーの息はどこかでシンクロしているのかもしれず、マスクをしながらの観劇にどこか困難さを体感することが多いのはこうした無意識のシンクロが妨げられるせいがあるのかもしれない。

勅使川原三郎 

【公演日程】2021年
5月14日(金) 20:00
5月15日(土) 16:00
5月16日(日) 16:00
5月17日(月) 20:00
5月20日(木) 20:00
5月21日(金) 20:00
5月22日(土) 16:00
5月23日(日) 16:00
全8回公演
5/18,19は休演日
開演30分前より受付開始、客席開場は10分前。全席自由

【劇場】カラス・アパラタス B2ホール

【料金】一般 予約 3500円/当日 4000円 学生/予約・当日 2500円