もリフの時間『ドリフ&ももクロ ライブフェス』@日本武道館
ももクロをあまり知らない人にはピンとこないかも知れないが、ももクロには目標としてきたグループが3つあった。一つ目はSMAP、次は嵐、そして最後がザ・ドリフターズであった。その理由にいずれもが国民的人気グループでメンバー仲が良く、長く続いていることを挙げていた。そして、これらのグループを挙げたのは女性アイドルでは難しいとされる長く続いて皆に愛されるグループになりたいという意味が言外にあった。
それだけにこれらのグループと関わることはももクロにとっては特別な出来事で、解散や活動休止にはなっているが、個々のメンバーは活発な活動を続けているSMAPや嵐とはいつかどこかで交わることはあってもドリフはメンバーの年齢的なこともあって、一緒に何やりたいという「ももクロの夢」がかなうかどうかはギリギリのところであった。現在ニコニコ生放送で「もリフの時間」という番組をやっていて、親交は深めつつあったが、今回日本武道館でのライブが開催されたのはかなり奇跡的な出来事だったかもしれない。
そして、今回の企画にはもうひとりキーマンがいた。「もリフの時間」でもMCを務める東京03の飯塚悟志である。飯塚といえば今年はキング・オブ・コントでは審査員も務めた現代におけるコントの第一人者だが、今回の企画も番組中で「東京03のコント映像を見たことがある」と言い出した加藤茶が飯塚が脚本も担当していることを知ると「コントを自分たちに書いてほしい」と言い出したことから始まっている。加藤茶としたらそのぐらいよかったんだよということをこういう形で伝えたかったのだろうが、こういうのを見逃さないのがももクロ陣営。その時点で何かのために押さえていた日本武道館を用意してあっという間に今回の企画の実現までこぎ着けたのだった*1 *2。
もちろん会場で生でドリフのコントを見たのは初めてなのだが、テレビ画面を通してでも志村けんや加藤茶の単独の番組とかではなく、ドリフターズとしてもコントを見たのはいつ以来になるだろうか。とっさに思い出せないほど昔なのは間違いない。なんといっても一番に感動したのはコントをやっている3人が年を感じさせないほど元気で生き生きとしていたことだ。そして、それに負けないぐらいに生き生きとしていたのが一緒にコントができたことの喜びをかみしめていたような飯塚悟志の表情であった。
的確なさばきや進行にも定評がある飯塚だが、真価が発揮されたのは相手役のセリフとちりや突然のアドリブを瞬時に笑いに変えてみせる抜群の反射神経。ドリフに書き下ろしたコント「金メダル」では途中で台本を忘れてきた加藤茶がセリフをとちり、ぐだぐだになりかけたのを見事に立て直した。
とはいえ、身びいきはあるかもしれないが、この日の白眉はドリフは出演せずに飯塚とももクロの4人だけでやった「テンポーズ」だろう。良く出来たリズムもののコント台本をももクロが見事に演じきり、大爆笑となったが、それ以上に衝撃的だったのはコントが始まり、4人が黒づくめのテンポーズ(ブルースブラザーズみたいな感じ)が登場した最初のセリフで百田夏菜子がいきなり嚙むというやらかしを飯塚が見事に収めて、もう一度やりなおしに持っていくまでの一連の動きの素晴らしさ。その後はこのままキング・オブ・コントに挑戦してほしいと思うほどの出来栄えだった。
「テンポーズ」はゾフィーの上田航平が脚本を提供したが、全体の進行役としてはかが屋も登場。自分たちのコントのほかももクロとの掛け合いでのコントも披露した。
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ももクロはドリフの音楽ネタの「早口言葉」*3ややはり定番の「お琴教室」「雷様」にも参加、往年のザ・キャンディーズやピンク・レディのような存在感を発揮したが、今回のイベントでの真骨頂は若手のコント師と共作した「テンポーズ」やかが屋との「なぞなぞ」にあったかもしれない。というのは冒頭に書いたようにももクロの目標はキャンディーズではなく、ドリフターズなのであり、ドリフを継承していくには自らが笑いを生み出す必要があるからだ。すでにメンバーの高城れには「永野と高城」のコンビによるコントを地上波ゴールデンの「千鳥のクセがスゴいネタGP」で準レギュラー待遇で披露しているが、ドリフとのコントイベントを続けながらも今度はぜひももクロによるコントイベントをテレビ番組か今回のような大規模会場でやってほしいと思った。
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日程:2021年11月18日(木)
16時30分開場 / 18時00分開演
場所:日本武道館
出演者:ザ・ドリフターズ(加藤茶/仲本工事/高木ブー)
ももいろクローバーZ(百田夏菜子/玉井詩織/佐々木彩夏/高城れに)
飯塚悟志(東京03)