下北沢通信

中西理の下北沢通信

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4月のお薦め芝居(2022年)by中西理(改稿掲載)

4月のお薦め芝居(2022年)by中西理(改稿掲載)


(復刻版、えんげきのぺーじでおなじみの「お薦め芝居」を復刻)*1

 「お薦め芝居」はコロナ禍で公演中止が相次いだ2020年3月以来、中断していたが4月から再開することにした。毎月月末ごろまでに次の月のものを掲載する予定*2






 私が個人的にもっとも注目しているのは劇団あはひ「流れる」「Letters」★★★★(4月3~10日、東京芸術劇場)の2本立て。芸劇eyesの企画による過去上演された秀作の再演なのであるが、特に「Letters」*3エドガー・アラン・ポーの探偵小説を原作に換骨奪胎し「生と死のあわひ」を描いた好舞台で私の2021年ベストアクト*4上位に選んだ作品。KAATでの初演は観た人も限られていたと思うので、今度こそぜひ貴重な機会を生かしてほしいと思う。劇団あはひは早稲田大学出身の若手劇団だが、在学中に本多劇場での公演を行い、続いてKAATでも公演、今回は東京芸術劇場の企画公演にも選ばれた。早稲田にひさびさに現れた次世代のスター劇団候補だと思う。
 追伸 「Letters」は大幅改定に伴い表題も「光環(コロナ)」と改め、事実上の新作として上演されることになった。表題からしてコロナ禍と関係のある作品になるのだと思われ注目したい。





 次に選ぶのは一転して大家の作品。青年団「S高原から」★★★★(4月1~24日、こまばアゴラ劇場)は平田オリザの代表作のひさびさの再演である。昨年のベストアクトの中で生と死のあはひを描いた作品が目立つとの傾向を指摘したが、この作品も死を直接は描かない「関係性の演劇」の手法の中で高原にあるサナトリウムの入院患者とそこへの訪問者、病院職員を群像劇として描き出すことで、死に迫った作品であり、いまの状況を再考するのに最適の作品ということができるかもしれない。





五反田団『愛に関するいくつかの断片 』★★★★(4月25日~5月5日、アトリエヘリコプター)も前田司郎作・演出の2年前にコロナ禍で中止になり、そのままになっていた作品を2年越しで上演するということで見逃せない。「よく分からないけれど、みんながあると思っているような愛について書かれています」と作品のフライヤーで前田司郎が語っているが、これまで前田作品に慣れ親しんできた観客にとっては「何か眉唾だな」としか思えないのだった。その直前に演劇に対する愛のことが語られているので愛っていうのは男女の愛情ではなくて、演劇への愛ということだろうか。それだったら少しは分かるような気もするけど(笑)。いずれにせよ見逃せない舞台である。




ロロ新作本公演『ロマンティックコメディ』★★★★(4月15日~24日、東京芸術劇場)も見逃すことができない。現在もっとも乗りに乗った演劇作家といえばロロの三浦直之の名前をはずすわけにいかないからだ。失恋の大家として知られる三浦だが今回は粗筋によれば「愛とか恋とは違う形でロマンティックを見つけたい」ということらしい。キャストをみると「いつ高」シリーズに出演していた俳優が勢ぞろいしているようだが、これでどんな新たな物語を見せてくれるのだろうか?楽しみでならない。

劇団ロロ新作本公演
数年に一度やってくる移動図書館で開かれる読書会。「ブレックファストブッククラブ」のメンバーたちは、そのときにだけ集まって、長い時間をかけながらゆっくりと一冊の本を読んでいく…。

愛とか恋とは違う形でロマンティックを見つけたい。たとえばなんだろう。たとえば、読みかけの本を閉じて顔を上げたときとか。本を読む前の冬の日差しと、本の中の夏の景色と、本を閉じたあとに見上げた夜空が、混ざり合うほんの一瞬。そういう瞬間をたくさん集めて、物語を満たしたい。
■日程:2022年4月15日(金)~4月24日(日)
■会場:東京芸術劇場シアターイース

■脚本・演出:三浦直之

■出演:
亀島一徳 篠崎大悟 望月綾乃 森本華(以上、ロロ)
大石将弘(ままごと/ナイロン100℃)
大場みな
新名基浩
堀春菜






シベリア少女鉄道『どうやらこれ、恋が始まっている 』★★★★(4月8~17日、俳優座劇場)は最近テレビのコントやドラマにも脚本を提供している鬼才、土屋亮一による新作。この劇団については「とにかく騙されたと思って一度見てみてほしい。驚くから」としか言いようがないのがもどかしいが、公演があるなら必見であることは間違いない。
 土屋亮一は私立恵比寿中学の演劇プロジェクト「シアターシュリンプ」でも作演出を手掛けていたが、最後に予定されて台本も脱稿していた新作がメンバーの急逝で中止になったままになっている。この作品現在のメンバーでぜひ上演をしてほしいのだが……。

シベリア少女鉄道 vol.34
『どうやらこれ、恋が始まっている 』

【日程】2022年4月8日(金)~17日(日)
【会場】俳優座劇場

【作・演出】土屋亮一
【出演】
小関えりか
川井檸檬
浅見紘至(デス電所
イトウハルヒ
仁科かりん
兼行凜
大見祥太郎
曽根大雅(東のボルゾイ) ほか

【一般前売開始】 2022年3月19日(土)10:00~
【料金】 前売5,000円(税込)/当日5,500円(税込) ※全席指定・座席選択制

<来場購入特典>
①劇場に来場した方全員に特典として、漫画家・米代恭氏書き下ろしの本公演イメージビジュアルを使用した<特製クリアファイル(公演おたのしみコンテンツも封入)>をプレゼント
②さらに、配信では観られない<生おたのしみコンテンツ>を開演10分前に上演
【プレイガイド先行】
2022年3月12日(土) 12:00 ~ 3月18日(金)18:00(先着)
お申込みURL: https://eplus.jp/siberia-e/

<配信> ( 『Streaming+』視聴券)
【販売開始】 2022年4月2日(土)10:00~(配信期間終了日の4月26日(火)17:00まで購入可)
【料金】 3,000円(税込)
【配信スケジュール】 2022年4月19日(火)~26日(火)19:29まで
※内容は4月13日(水)の昼夜回を収録・編集したものになります。

【お問合せ】 シベリア少女鉄道 info@sibera.jp 090-4417-3803(10:00-20:00)
【劇団公式HP】 http://www.siberia.jp/





4月はコロナ禍で中止になった公演の復活上演も目立つかHANA'S MELANCHOLY 『風-the Wind-』★★★(4月16~25日、シアター風姿花伝)もそういう1本。HANA'S MELANCHOLY は劇作・一川華、演出・大舘実佐子という2人の女性コンビニよる演劇ユニット。これまでその作品を年間ベストアクトに取り上げるなど注目してきた集団である。
性を含む社会性の高い問題に切り込むが、その作品自体はリアリズムというよりは2・5次元演劇的なエンタメ性も感じさせる作りとなっているのが特徴。一方で物語性を重視した骨太な作りなど最近の小劇場演劇の流れとは一線を画した動きを注目している。 『風-the Wind-』はすでに日米でのリーディング公演を経て、周到に本公演を準備してきたものだけに優れた成果への期待が高まっている。

【概要】
シアター風姿花伝劇作家支援公演 HANA'S MELANCHOLY 『風-the Wind-』を2022年4月に上演いたします。日米でのリーディングを経て、初のプロダクション上演となります。是非、ご期待ください。

【梗概】
現代東京。性風俗店で働く奈菜子は、自分の心を奮い立たせるために龍の刺青を彫る。すると、身体の値段が他の風俗嬢よりも安くなってしまう。自身の価値に疑問を問い続けていたある日、一冊のパンフレットが届く。そこには「世界の恵まれない女の子へ、支援を」と書いてあった。

東京とアフリカのどこかの小さな村。一本の電話を通じた、二人の少女の交流を描き出す。

【プロダクションヒストリー】
2019 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」フリンジ オープンエントリー作品 
2020 米国 ノートルダム大学 オンラインリーディング
2022 モントリオール女性劇作家国際会議 公式プログラム
   ※新型コロナウイルスの影響を受け上演中止
その他注意事項 【ダブルキャストにつきまして】
当公演では2班によるダブルキャストで上演致します。
公演により出演チームが異なりますので、事前にご確認下さい。

Ⓐ班…奈菜子:いしがめあすか/ルーシー:増田野々花
Ⓑ班…奈菜子:白濱貴子/ルーシー:簑手美沙絵
※急な変更が発生する場合もございます。予めご了承下さい。

【作品に関する注意】
本作品は下記の描写、表現を含みます。観劇前に必ずご確認下さい。対象年齢は定めておりませんが、中学生以上の観劇を推奨しております。

1. 女性性器切除
2. 男女による性描写
3. 自殺を仄めかす表現(リストカット・駅ホームへの飛び込み)
4. その他:肉体破損を示唆するワード、性器の名称などを含むワード

※2022年2月1日(火)更新

【上演台本の無料貸出につきまして】
当団体では上演前に希望者の方に上演台本の無料貸出を行います。
ご予約方法などの詳細につきましては3月上旬に公開いたします。

スタッフ
作:一川華
演出:大舘実佐子
音楽:高根流斗
音響:竹下好幸
照明デザイン:松田桂一
舞台監督:みさわだいち(Team連)
演出助手:桜田実和(東のボルゾイ)、千一、大貫友瑞
広報デザイン:松島遥奈
メインビジュアルイラスト:蔡云逸
制作:栗間夏美、川崎歩(歩夢企画)
協力:歩夢企画、柿喰う客、株式会社エッグスター、株式会社ミズキプロ、北区AKT STAGE、劇団青年座、Team連、東のボルゾイ(五十音順)
主催:合同会社風姿花伝プロデュース

 





ピュアマリー「新★名探偵ポワロ」★★★アガサ・クリスティー戯曲の上演。クリスティーは演劇史で取り上げられることはあまりないが、実は現在まで空前絶後のロングランを続けている「ねずみとり(マウス・トラップ)」をはじめ英国演劇を代表する興行成績を連発した人気劇作家でもあった。日本でも「そして誰もいなくなった」や「検察側の証人」など繰り返し上演されている人気演目も多いが「新★名探偵ポワロ」という表題で今回上演される戯曲「ブラック・コーヒー」は初期の作品でもあり、あまり上演されたことがないのではないかと思う。

2022年4月
8日(金) 14:00/19:00
9日(土) 12:30/16:30
10日(日) 12:30/16:30

※開場は開演の30分前を予定

公演内容
ロンドン郊外に居を構える 著名な科学者エイモリ―卿の邸の平穏な晩餐
食後のコーヒータイム、卿が意外な事実を明かし 居合わせた者たちに異様な緊張感がはしる
「邸内にいる誰かが、夕食前に金庫から極秘書類を盗み出した 今から部屋の灯りを消している間に、書類を返せば罪には問わない」
しかし再び灯りがついたとき、事件は起った
混乱のさ中、卿が書類の調査を緊急依頼していた名探偵ポワロが到着
エイモリ―卿の息子夫婦、お喋りな妹、若い姪、秘書、執事、謎の訪問者、
ポワロの指南で次第に露呈していく家族の秘密
追い詰められていく犯人とポワロの頂上決戦!

出 演
辻本 祐樹/髙橋 由美子/瀬下 尚人/横山結衣/由地 慶伍/五東由衣/大至/岩田 翼/坂元 亮介/真京 孝行/山沖 勇輝/丹羽 洸大




 

ひとごと。こどもとつくる舞台vol.2「はなれながら、そだってく。」★★青年団の山下恵実が主宰する「ひとごと。」が、子供たちの発想により作られた物語や絵を、ダンスや歌や芝居にして上演する企画“こどもとつくる舞台”の第2弾だ。演出を山下が担当し、出演者には小野彩加、川隅奈保子、中條玲、藤瀬のりこ、古屋隆太、松田弘子が名を連ねている。この枠組みの作品を見るのは初めてだが単なる子供向けの舞台ではない。キャストにはスペースノットブランクの小野彩加や松田弘子、川隅奈保子、古屋隆太ら通常ならば青年団の本公演でメインキャストを演じるような俳優陣が揃っており内容にもかなりの期待ができそうだ。

2022年4月28日(木)~5月8日(日)
東京都 こまばアゴラ劇場

演出:山下恵実
テキスト:こどもたち
出演:小野彩加、川隅奈保子、中條玲、藤瀬のりこ、古屋隆太、松田弘




 
 お薦め芝居。とりあえずブログ「下北沢通信」で展開中だが、もし掲載可能なメディアがあればぜひ載せてほしいので、連絡をお願いしたい。
 演劇・ダンスについても書いてほしいという媒体(雑誌、ネットマガジンなど)も鋭意募集中。相談はメール(simokita123@gmail.com)でお願い。ブログに書いたレビューなどを情報宣伝につかいたいという劇団があればそれも大歓迎。メール下さい。パンフの文章の依頼などもスケジュールが合えば引き受けます。新規劇団発掘にも力を入れています。招待メールなどいただければ積極的に観劇検討します。

 大劇場中心のお薦め芝居紹介サイト*5発見したが、全然重ならない。見落としがないようにチェックしたいのだが、どこか適当なサイトがないかしら。関田育子の公演見逃してしまった。





中西


*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:最近チケット代にかけられるお金があまりなくて、妻からの締め付けも強いので、招待状をいただける劇団があると本当に嬉しい。

*3:simokitazawa.hatenablog.com

*4:simokitazawa.hatenablog.com

*5:www.fashion-press.net