下北沢通信

中西理の下北沢通信

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いわば「逆YOASOBI」 クラブミュージックからイメージされた文学を朗読 しあわせ学級崩壊「リーディング短編集#1」(A team)@Cafe BPM池尻大橋

しあわせ学級崩壊「リーディング短編集#1」(A team)@Cafe BPM池尻大橋



大音量のEDMの音楽に乗せて、セリフをラップのような抑揚でフレージングしていくのがしあわせ学級崩壊のスタイル(様式)*1しあわせ学級崩壊「リーディング短編集#1」では2つの形式でのリーディング(朗読)公演が行われ、音楽に合わせた独特のフレージングの可能性を探る試みとなった。
2つの形式と書いたが今回の公演には古典といってもいい短編小説をこの公演のために僻みひなたが作った4つの楽曲に併せて朗唱するAteamとその4つの楽曲を原イメージにそこからそれぞれの劇作家が書き下ろした新作戯曲を朗読するBteamがあるこの日観劇したのはそのうちAteamである。
音楽では小説からのイメージを基に楽曲を制作するYOASOBIの手法が注目されているが、こちらはオリジナルのクラブミュージック(EDM)からイメージされる短編の文学作品を選び、それを音楽に合わせて朗読するのを見せるという意味で「逆YOASOBI」と言ってもいいかもしれない。

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この日朗読された文学テキストは太宰治「待つ」*2堀辰雄「X氏の手帳」*3夢野久作「線路」、宮沢賢治「マリヴロンと少女」の4編だが、いずれの小説も何を朗読することにするかはそれぞれの読み手が演出も手掛ける僻みひなたと相談のうえで決定しているということのようだ。
この日会場となったCafe BPM池尻大橋は通りに面し大きなガラス窓1面1面に広がっている開放的なカフェ空間。ただリーディングでは締め切った窓を背中に演者は設置されたマイクに向かって椅子に座ってリーディングを行う。それが異なるパフォーマーによって4回行われることになるが、それを座って見ている観客の感覚では演劇の公演を見ているというよりはアコースティックなライブを見ている感覚に近いかもしれない。
特に最初の大田彩寧による太宰治「待つ」は「省線のその小さい駅に、私は毎日、人をお迎えにまいります。誰とも、わからぬ人を迎えに。市場で買い物をして、その帰りには、かならず駅に立ち寄って駅の冷いベンチに腰をおろし、買い物籠を膝に乗せ、ぼんやり改札口を見ているのです。」などと口語的な女性の一人称描写で書かれていることもあり、メロディーのような抑揚はないけれどもリズムを一定で刻むトラックとも相まって、日本語ラップの一節のように心地よい音楽として聞こえてきた。

太宰治「待つ」大田彩寧
堀辰雄「X氏の手帳」福井夏
夢野久作「線路」村山新
宮沢賢治「マリヴロンと少女」上岡実来

音楽・演出・構成:僻みひなた(しあわせ学級崩壊)
音響・録音・ミックス:深澤大青
文芸補佐:永瀧かづみ
演出補佐:伊岡森愛
宣伝美術:西田麻梨果
デザイン:のりのり
衣装・会場照明:神田夕莉
当日運営:野田ひまわり、あさぎなぎさ、高田ゆきな、中荄啾仁
撮影:yoshikino
広報:岩上みねこ
制作:佐々木美優、濵田優里
企画制作:林揚羽
主催:しあわせ学級崩壊
(以上、しあわせ学級崩壊)
WEB:ブラン・ニュー・トーン(小林タクシー、阿波屋鮎美)