下北沢通信

中西理の下北沢通信

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青年団第96回公演「日本文学盛衰史」(2回目)@吉祥寺シアター

青年団第96回公演「日本文学盛衰史」(2回目)@吉祥寺シアター


青年団日本文学盛衰史*1の5年ぶりの再演。初演の時にもそう思ったのだが、この作品が原作と違うのは平田オリザらが1990年代に行った現代演劇における現代口語演劇を巡る試行錯誤が明治の文学者らによる口語体文学(小説)の誕生に向けての試行錯誤と重ね合わせられているところにあるかもしれない。
平田オリザには珍しく時代によって移り変わっていくような時事問題的な要素が数多く作品に挿入されているのも現代と過去の重ね合わせや対比が念頭にあるからだろう。さらにいえば今回の再演では初演以降の出来事が数多く盛り込まれていたのも平田には珍しく面白いことであった。
 今回の上演が興味深いのはここ数年平田オリザが政治や文化を巡る発言をするたびにネットを中心にバッシングが起こるようなことが多かったことを反映してか、コロナ禍におけるエンタメへの自粛の圧力やあいちトリエンナーレを巡っての政治的な圧力、逆にコロナ禍で五輪を強行したことで露わになってきた利権の存在などをモチーフに積極的に取り入れていることだ。
特に森鴎外が陸軍の軍人でもあったことの意味を考えさせていく中で、東京五輪における森喜朗の存在とつなげてみせたアクロバットは芸としてなかなか見事なものであったと思う。
 

原作:高橋源一郎  作・演出:平田オリザ
吉祥寺公演 2023年1月13日[金] - 1月30日[月] 
伊丹公演 2023年2月2日[木] - 2月6日[月] 
文学とは何か、人はなぜ文学を欲するのか、

人には内面というものがあるらしい。
そして、それは言葉によって表現ができるものらしい。
しかし、私たちは、まだ、その言葉を持っていない。
この舞台は、そのことに気がついてしまった明治の若者たちの蒼い恍惚と苦悩を描く青春群像劇である。

高橋源一郎氏の小説『日本文学盛衰史』を下敷きに、日本近代文学の黎明期を、抱腹絶倒のコメディタッチでわかりやすく綴った青春群像劇。初演時に大きな反響を呼び、第22回鶴屋南北戯曲賞を受賞した作品の待望の再演となる。笑いの中に「文学とは何か」「近代とは何か」「文学は青春をかけるに値するものか」といった根本的な命題が浮かび上がる、どの年代でも楽しめるエンタテイメント作品。

[上演時間:約2時間20分(予定)・途中休憩なし]

原作:『日本文学盛衰史』(講談社文庫刊)

高橋源一郎の長編小説。『群像』に1997年〜2000年にかけて連載。
日本近現代文学の文豪たちの作品や彼らの私生活に素材を取りつつ、ラップ、アダルトビデオ、伝言ダイヤル、BBSの書き込みと「祭」、たまごっち、果ては作者自らの胃カメラ写真までが登場する超絶長編小説。第13回伊藤整文学賞受賞作。

原作者:高橋源一郎

1951年広島県生まれ。作家。明治学院大学名誉教授。
1981年デビュー作、『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長篇小説賞優秀作受賞。
1988年『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞受賞。
2002年『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞受賞。
2012年『さよならクリストファー・ロビン』で第48回谷崎潤一郎賞を受賞。
著書に『今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇』、『これは、アレだな』、『失われたTOKIOを求めて』他多数。


©︎ igaki photo studio

吉祥寺公演伊丹公演
出演
山内健司 松田弘子 永井秀樹 小林 智 兵藤公美 島田曜蔵
能島瑞穂 知念史麻 古屋隆太 石橋亜希子 井上三奈子 大竹 直
髙橋智子 村井まどか 長野 海 村田牧子 山本裕子 海津 忠
菊池佳南 緑川史絵 佐藤 滋 串尾一輝 中藤 奨 田崎小春

スタッフ
舞台美術:杉山 至
舞台美術アシスタント:濱崎賢二 
舞台監督:武吉浩二(campana)
照明:西本 彩 三嶋聖子
音響:泉田雄太 櫻内憧海[伊丹公演]
衣裳:正金 彩
衣裳製作:中原明子
衣裳アシスタント:陳 彦君 塚本かな 原田つむぎ
演出部:原田香純 たむらみずほ
小道具:中村真生
演出助手:小原 花
宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子 太田裕子
宣伝写真:佐藤孝仁
宣伝美術スタイリスト:山口友里
制作:太田久美子 金澤 昭[吉祥寺公演] 赤刎千久子 込江 芳
制作補佐:三浦雨林
タイトルロゴ制作資料協力:公益財団法人日本近代文学館
協力:(株)アレス