綾門優季+三橋亮太 ダブルビル公演「おまおまいういう」(2回目)@アトリエ春風舎
『蹂躙を蹂躙』は今回当初作者である綾門優季と郡司麻衣という女優のそれぞれの一人芝居として上演される予定だったが、綾門が怪我により降板を余儀なくされたため郡司麻衣の一人芝居として上演されることになった。郡司麻衣という名前は聞き覚えがなかった。そのため、初見では綾門、三橋の双方が日本大学芸術学部出身だということもあって、その出身の新人女優かしらと考えて見始めた。とはいえ、少し見ればその演技がずぶの素人ではないことは直ぐ分かるし、どこかで見たことがあるという記憶も頭の片隅に引っかかったため、ネット検索で調べてみると郡司麻衣(本名は野村麻衣)との記述をネットで発見。野村麻衣といえば以前悪い芝居にも所属しており、そこで何度か演技を見ているはずだし、綾門作品にも、「景観の邪魔」に出演して、なかなか印象的な演技をしていた。そういうことが分かってこの舞台を見てみるといかにも野村麻衣らしい狂気を感じさせる演技ぶりであった。
実はこの戯曲『蹂躙を蹂躙』についてはしあわせ学級崩壊がリーディング短編公演2の中で上演*1している。その時に主人公を演じたのが佐藤すみ花で彼女は多重人格の殺人鬼である「私」が主治医を殺してから、病院の外で人を殺しまくるというとんでもない物語が複数の「私」のモノローグのような文体で綴られた戯曲を佐藤すみれは声優のアテレコのように多彩な声色を使い分け、演じてみせた。
アニメ的な色彩感豊かな演出はエンタメ色が強いもので、この戯曲にこんなやり方があるのかと感嘆させられたが、作者本人の演出による今回は演技的にはよりリアルなタッチのもので、佐藤の演技がアニメのアフレコ的で声色を駆使し演じ分けていたのに対し、郡司麻衣のアプローチはよりナチュラルだ。
『蹂躙を蹂躙』作・演出:綾門優季(青年団リンク キュイ)
『え待って?他感作用あるん知らなくて草』作:三橋亮太(譜面絵画) 演出:児玉健吾(かまどキッチン)
【作品によせて】綾門優季
赤ん坊の頃から何者かに監禁された学は、分裂した人格、過去と現在と未来の混同、幻聴と実際の音を平等に認識するなどといった、破滅的な症状に苛まれながら大人になった。ある日、何者かを勢い余って殺めてしまった学は、家の外に生まれてはじめて出てしまう。(『蹂躙を蹂躙』あらすじ)【作品によせて】三橋亮太
上演作品は、次の3つにて構成されています。1『#あぶらぼうず』、2『†定食の豚汁†』、3『クルミvsチーズvsパン』3つの物語はオムニバスのように見えるが通底しており、3つを合わせてひとつの戯曲として完結しています。綾門優季
1991年生まれ、富山県出身。劇作家。キュイ主宰。2011年、キュイを旗揚げ。戯曲は「攻撃的で文語的なセリフ回し」「震災、テロ、無差別殺人など、突発的な天災・人災に翻弄される人々の様子を主なモチーフとすること」を特徴とする。2019年、第10回せんがわ劇場演劇コンクールにて、『蹂躙を蹂躙』で劇作家賞を受賞。三橋亮太
「観客における新たな体験性(ライブ性)」を制作目的とする。
その場で生まれる体験性の濃度を高めるため、会場や土地の文脈・観客のイメージを介し、想像力が会場空間から外に広がる演劇作品を発表する。
出演
■『蹂躙を蹂躙』出演者
郡司麻衣
■『え待って?他感作用あるん知らなくて草』出演者
川端真奈(コトリ会議)
⾼橋星⾳(無名塾)
鳥居彩夏スタッフ
■『蹂躙を蹂躙』スタッフ
振付|黒沼千春(I/O Multimedia Performance Company)
ドラマターグ|伏見瞬
演出助手|工藤咲喜《東京都のみ》/池田優香(noisieeeee ⇄ project)《北海道のみ》
衣裳|なずな■『え待って?他感作用あるん知らなくて草』スタッフ
演出助手|谷平絵梨■共通スタッフ
音響|富山雅之
照明|緒方稔記(黒猿)
舞台監督|黒澤多生(青年団)
宣伝美術|三橋亮太(譜面絵画)
舞台写真|三浦雨林(隣屋)
制作|綾門優季+三橋亮太
制作補佐|半澤裕彦(青年団)、黒澤たける
当日運営|河﨑正太郎(譜面絵画)日時
2023年5月4日[木・祝] - 5月7日[日]5月4日 木・祝 19:30〈A〉
5日 金・祝 19:30〈G〉
6日 土 14:00〈G〉 18:00〈A〉
7日 日 12:00〈A〉 16:00〈G〉
※全ての回で『蹂躙を蹂躙』と『え待って?他感作用あるん知らなくて草』の二本立てとなります。
※『蹂躙を蹂躙』はWキャストとなり、それぞれ〈A〉綾門優季〈G〉郡司麻衣 の出演となります。綾門優季の出演はなくなりました。受付:開演の30分前 開場:開演の20分前
上演時間:約60分