下北沢通信

中西理の下北沢通信

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四季それぞれを彩る花に例え開花したさまを愛でるコンセプトライブ。AMEFURASSHI ワンマンLIVE「FLWRS」@EX THEATER ROPPONGI

AMEFURASSHI ワンマンLIVE「FLWRS」@EX THEATER ROPPONGI



アメフラを四季それぞれを彩る花に例え大輪が咲きほこるように開花したさまを愛でるコンセプトライブ。ももクロとはまた違う完成度の高さがある。まだ早いけどももクロ以来初めてドームに届く存在になるかもしれないと感じさせられた。
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演出をだれがやっているのかは、具体的には分からない*1のだが、映像を駆使した演出というのがひとつの定番となっており、おそらく、ももクロでいう佐々木敦規のようにだれか特定の演出家が手掛けているのではないか。ただ、この演出は振付、映像、構成が全て連動しているため、チームとしてという要素がかなり強いのではないか。そういう意味でPerfumeにおけるMIKIKO、ライゾマ(真鍋大渡)らによるチームを連想させる。
そして、それが出来ているのはダンスや歌などのパフォーマンスにおける精度の高さがあってこそであろう。もっとも、現在のところは楽曲によっては自由度の高い遊びの部分が多いところもあって、そこでうまく緩急を作っているのがアメフラの魅力につながっているのではないかと思う。
今回のライブは季節を表すいくつかの部分に分かれて構成されており、それぞれのパートで雰囲気を変えているのが特徴だ。
最初のパートはスタイリッシュなクールさを強く打ち出したような印象。中古自動車の廃棄場所のようなMVのイメージを完全再現したような映像とダンスのシンクロで魅了した「SPIN」。ダンスを武器とするボーカルグループは男性グループでは増えてきているが、AMEFURASSHIの場合は女性グループとしては珍しく、この「SPIN」では楽曲途中の歌詞が途切れて演奏だけになるダンスブレイクといってもいい部分でその激しい踊りに観客から歓声が起こるようなことが起きている。ダンスがうまいと評判の韓国のグループを含めてもダンスだけで客席にこれだけの反応を起こすのは珍しいのではないか。

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同じくダンスミュージックだが、これまで以上に音圧の高いボーカルにも進歩を感じたのが「SENSITIVE」だ。AMEFURASSHIがガールクラッシュ系に転じた初期楽曲だが、最近はあまり披露されることがなかった。今回のライブでは歌、ダンスともに一層ブラッシュアップされた感があり、この日はハイスピードのダンスで魅せる「SPIN」との対比という意味でも「SENSITIVE」のダンスのしなやかさはより際立っていた。

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さらにヴォーギングを取り入れた「 Love is love」のダンスでも魅了した後に続いたのが、冬曲である「Snow Drop」である。萌花のソロ曲だが今回はほかのメンバー3人がバックダンサーにつき、ダンスナンバーとして見せてくれた。
このパートの最後が「DROP DROP」だが、これは珍しくオリジナルのフロアポジションからのスタートとなった。フェスでの横浜アリーナのセンターステージなどを除くと、AMEFURASSHIがライブを行ってきたライブハウスなどの会場では客席からフロアが見えないので、この振り付けをやることはなかったのだが、EX THEATER ROPPONGIはフロアが客席からせり上がった構造となっており、単独公演でもこの振り付けを披露できる会場で開催できるようになったということは感慨深かった。
「メタモルフォーズ」以降が次の春パートだが、春らしい「グラデーション」に続き、「Magic of love」が来るのは春が恋の季節だからという連想からだろうか。自己言及的に自分たちのことを歌うことが多い彼女ら曲の中では珍しく彼とのデートをあわただしく準備する女性の姿を描いた「Batabata Morning」。その次にアメフラ初期曲で「最後に披露したのはいつだったか」と悩んでしまうほど懐かしい「バカップルになりたい!」が続いたのはこの日一番のスポットライトだったかもしれない。事前に「懐かしい曲をやるかも」とメンバーが宣言していたので、最近新音源が披露された「Sneakers Delight」を想定した人が多かったと思う*2が、軽めのイベントで披露することはあっても作りこまれたワンマン公演での復活は予想していなかった。現在のAMEFURASSHIの本線ではないことは確かだし、頻繁にやられるようになるとは考えにくいが、今回のライブではいいアクセントになっていた。
愛来による「Blue」のソロ歌唱でスタートした次のパート。ここは実は夏ではなく、梅雨を表現したらしい。以前からこの曲は宇多田ヒカルを連想させると言及してきたのだが、愛来ソロによる「Blue」は一層R&B感が増している。
「One More Time」はこれまで夏の終わりをイメージして聴いていたが、並び順からして初夏と位置付けられているかも。久しぶりに聴いた「差し出された手をあの時握ってたら運命変わってたかな?(AMEFURASSHI version」がよかった。歌い出しの市川優月のなんともせつない声がよかった。優月のラップはすでにアメフラにとって不可欠なものになっているが、歌でのこうしたアクセントつけも唯一無二のもので歌姫3人には出せない味だと思う。とはいえ、AMEFURASSHI versionの真価は後半の小島はなパートにあるかもしれない。
夏曲のゾーンは再びノンストップダンス曲。最近のフェスや対バンイベントでも鉄板となっている「Blow Your Mind」「Fly Out」「Tongue Twister」「ALIVE」の4連打。会場はあたかもクラブイベントの会場を思わせるノリで爆発させた。
そして、ラストのパート「秋」は新曲「Secret」で始まった。これはアメフラが誇るそれぞれ個性の異なるボーカリスト4人が競いあうような展開の楽曲だった。ダンスにもそれまでの曲とは違う新しさがあり、ミステリアスでおとなっぽい曲想がいままでにない感じだ。

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ここでは「Drama」「雑踏の中で」と文字通り同じダンスでも劇的な要素が強い楽曲が続いた。ひとつだけ気になったのは以前から入れていたのかもしれないが「雑踏の中で」の途中で名前コール的なものが入ったこと。あくまで私の個人的な意見だが、曲終わりや曲間はともかく、現在のAMEFURASSHIの空気感ならこういう曲にコールはいらないのではないか*3
本編の最後がアメフラのアンセムとでも言うべき「UNDER THE RAIN」、そしてアメフラの最初の曲「ミクロコスモス・マクロコスモス」のだったのも見事なエンディングだった。
アンコールではライブの定番曲の「MICHI」「Lucky Number」で観客を踊らせた後、ようやく初めてのMCに入った。ここでは今後のライブの予定も発表となり、恒例の「梅雨祭」、LINE CUBE SHIBUYAでのワンマンのほか、場所は未定ながら来年2月のライブも発表となった。
そして兼ねてからここで明らかにするとしていたファンネームが「Colors」と発表され、最後の曲として「Colors」が歌われた。ファンネームが曲名と同じになったことで、アメフラのアンセムの色合いが強まったのも確かで、歌詞の四回繰返し「君と」の部分でそれぞれがひとりづつメンバーのことを指差した後、最後に全員がファン(Colors)のことを指差ししたくだりにはグッと来てしまった。

セットリスト
AMEFURASSHI「FLWRS」2024年3月15日 EX THEATER ROPPONGI
01. SPIN
02. SENSITIVE
03. Love is love
04. Snow Drop
05. DROP DROP
06. メタモルフォーズ
07. グラデーション
08. Magic of love
09. Batabata Morning
10. バカップルになりたい!
11. Blue
12. One More Time
13. 差し出された手をあの時握ってたら運命変わってたかな?(AMEFURASSHI version)
14. Blow Your Mind
15. Fly Out
16. Tongue Twister
17. ALIVE
18. Secret
19. Drama
20. 雑踏の中で
21. UNDER THE RAIN
22. ミクロコスモス・マクロコスモス
<アンコール>
23. MICHI
24. Lucky Number
25. Colors

ライブ情報
梅雨祭2024
2024年6月7日(金)東京都 文京シビックホール

AMEFURASSHI ワンマンライブ
2024年9月16日(月・祝)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂

AMEFURASSHI ワンマンライブ
2025年2月11日(火・祝)

※会場は後日発表

2024年3月15日(金)
EX THEATER ROPPONGI
open 18:00 / start 19:00

◆一般 1階全自由 ¥7,800(税込・入場時別途ドリンク代・整理番号付き)<SOLD OUT!>
※お一人様2枚まで ※女性エリアあり
◆U-25 1階全自由 ¥6,500(税込・入場時別途ドリンク代・整理番号付き)<SOLD OUT!>
※お一人様2枚まで ※女性エリアあり
※公演当日25歳までの方が対象です。入場時、年齢のわかる身分証をご提示いただきます。身分証の確認ができない場合は、一般チケットとの差額をお支払いいただきご入場となります。
なお、身分証の確認ができない場合、払い戻しは行いません。忘れずに身分証をご持参ください。
●2階席・バルコニー席 着席指定席 ¥7,800(税込・入場時別途ドリンク代)<SOLD OUT!>
※お一人様2枚まで
●2階席 ファミリー指定席 ¥7,800(税込・入場時別途ドリンク代)<SOLD OUT!>
※お一人様4枚まで

*1:Anna先生によれば演出はダンサー・振付家のCHALIという人らしい。ただ、私が想定したような映像演出の専門家ではないので、全部を彼が担当したとは考えにくい。経歴では「近年はDa-ice、宇野 実彩子(AAA)、Dream Ami、E-girls、SUPER JUNIOR D&E、福岡ソフトバンクホークスチアチーム「ハニーズ」、ヤクルトスワローズチアチーム「パッション」などの振付も担当」とあり、演出はともかく振付家としてはAVEX系とのつながりが深い。何か意味するところがありそうだ。aaa.avex.jp

*2:私もそのひとりであった。

*3:コールを全て否定しているわけではない。「バカップルになりたい!」とかなら構わない。