下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

いぎなり東北産 大一番ライブ《TOKYO INVADER》@立川ステージガーデン

いぎなり東北産 大一番ライブ《TOKYO INVADER》@立川ステージガーデン

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《TOKYO INVADER》という表題のアルバム発売に合わせたいぎなり東北産初めての東京でのホールワンマンライブ。立川ステージガーデン(キャパ2500席)を1席おきの設定のコロナ感染対策で開催した。
ワンマンライブは初観戦とはいえ、ももクロの周回ライブ会場やスターダストのフェスなどで何度も見たことはあったが、アイドルというのは恐ろしいもので以前は子供が元気に頑張っているという印象だったのが、成長してすっかり大人っぽくなっているのに驚いた。
以前から2トップの伊達花彩、橘花怜をはじめ、歌姫の桜ひなのら歌のうまいメンバーが複数いるのが大きな武器ではあったが、他のメンバーもそれに肉薄する実力をつけてきて、こと歌唱力ということに関して言えばいまやスタプラでもトップ級といえるかもしれないと感じた。

《TOKYO INVADER》セットリスト
1. HANA
2. Fly Out
3. Action!
4. re;star
5.恋はじめ
6. Chim Chim Chim Knee
7.深夜特急
8. Being
9.天下一品
10.ワンダフル東北
11.ハイテンションサマー!
12.トラベル
13.いただきランチャー
14.おのぼりガール
15.百花繚乱物語
16. No Make
17. I decided
18.うぢらとおめだづ
19. BUBBLE POPPIN
20.桜プロミス
21.伊達サンバ
22. Burnin' Heart
23.真っ直ぐに、明日がある

2021.06.06
【日程】
2021年10月2日(土)open17:00/start18:00

【会場】
TACHIKAWA STAGE GARDEN

ばってん少女隊 TOUR 2021「温故知新」第1部・第2部@Pia STREAMING

ばってん少女隊 TOUR 2021「温故知新」第1部・第2部@Pia STREAMING

 朝から行くはずであったTOKYO IDOL FESTIVAL初日が台風のために中止。時間ができたので、気になっていたばってん少女隊のTOUR 2021「温故知新」の配信をアーカイブ映像で見ることにした。
 ばってん少女隊ももいろクローバーZ私立恵比寿中学が所属するスターダストプロモーションのアイドル部門スターダストプラネットスタプラ)所属のアイドルグループ。福岡を本拠地としているためにあまり継続的にはフォローしていなかったが、新メンバー二人が加入したこともあり、配信ながらひさびさに単独ライブを見て、ダンスアンサンブルと歌唱が高いレベルで組み合わされて、地方アイドルの荒々しさ、奔放さはなくなって洗練されたライブを展開していることに驚かされた。
 注目すべきは新メンバーの柳美舞、蒼井りるあの即戦力ぶりである。4月の加入から半年あまりしかたっておらず、

【セットリスト】
ばってん少女隊 TOUR 2021 第2部:温故知新(Zepp Fukuoka
1 OiSa
2 Killer Killer Smile
3 乙女の手札
4 Just mean it !
5 ますとばい!
6 己MY self
7 崇シ増シxxx物語
8 FORCES
9 BDM
10 Dancer in the night
11 スウィンギタイ
12 ばりかたプライド
13 すぺしゃるでい
14 MEGRRY GO ROUND
15 びびび美少女
16 ばってん少女。
17 OTOMEdeshite
18 おっしょい!
19 FREEな波に乗って
20 ジャン!ジャン!ジャン!
21 ころりんHAPPY FANTASY
22 ありがとーと
アンコール
1 OiSa
2 わたし、恋始めたってよ!

『TOKYO IDOL FESTIVAL 2021』@お台場・青海周辺エリア(1日目)=台風のため雨天中止

TOKYO IDOL FESTIVAL 2021』@お台場・青海周辺エリア(1日目)=台風のため雨天中止

佐々木彩夏
浪江女子発組合
群青の世界
アンスリューム
いぎなり東北産
まねきケチャ
櫻坂46
B.O.L.T.
いぎなり東北産
ハロプロ研修生
アメフラっシ
B.O.L.T.
アメフラっシ
26時のマスカレイド

日程:2021年10月1日(金)、2日(土)、3日(日)
会場:お台場・青海周辺エリア
主催:TOKYO IDOL PROJECT
公式サイト:https://official.idolfes.com/

ブランニューオペレッタ『Cape jasmine(ケープ・ジャスミン)』@日本青年館(2回目)

ブランニューオペレッタ『Cape jasmine(ケープ・ジャスミン)』@日本青年館(2回目)

【公演日程】
2021年10月6日(水)〜10月7日(木)(全3公演)
10月6日(水)18:30開演
10月7日(木)14:00開演/18:30開演
【会場】
日本青年館ホール
【キャスト】
横山由依AKB48
中山莉子私立恵比寿中学
江上敬子(ニッチェ)
あっこゴリラ
もも(チャラン・ポ・ランタン
根本宗子

アップデイトダンスNo.86「ドビュッシー 光の秘密」(勅使川原三郎振付)@カラス・アパラタス B2ホール

アップデイトダンスNo.86「ドビュッシー 光の秘密」(勅使川原三郎振付)@カラス・アパラタス B2ホール

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最近の勅使川原三郎作品には文学作品などを原作にした演劇要素が強い作品と音楽と対峙した作品とがあるが、「ドビュッシー 光の秘密」(勅使川原三郎振付)は表題通りに全編ドビュッシーピアノ曲を使用し、勅使川原三郎と佐東利穂子のダンサー2人が作品世界そのもの(音ということでもある)と渡り合うというダンス作品となっている。

www.youtube.com
勅使川原三郎は照明プランも自ら手掛け、照明デザインの素晴らしさは時に「光の魔術師」といってもいいほどだが、「光の秘密」と今回は表題にも「光」が入ったように照明効果の見事さは印象に残るものであった。
ドビュッシーの音楽は日本では印象派と紹介されることも多いので、「光の秘密」という表題からは絵画における印象主義が主張した絵画における光と色彩の優位をまず連想したのだが、作品のビジュアルイメージはむしろ対極的なものであった。
今回の舞台では絵画の印象主義がそうであるような鮮やかな色彩は完全に排除され、使用された照明は白色に近い単色光。
光と影、すなわち白と黒のコントラストが特徴的だった。舞台のビジュアルイメージではエレガントな黒の衣装とも相まって、絵画に例えるならば闇の中に人物が浮かび上がるレンブラントの光と影の絵画を連想させるものとなっていた。
朝日新聞に著者が寄稿した記事の引用として、このサイトに以下のような記事が転載されている。

ドビュッシーの定義は、いつも印象派と象徴派の間をさまよっている。印象派は絵画上の運動で、遠近法を捨てて画面を平面分割し、パレットから暗い色を追放した。1874年に最初の展覧会が開かれ、ドビュッシーがローマ賞を得た1884年には、ほぼ終焉を迎えていた。

いっぽう象徴派は詩の運動で、言葉から可能なかぎり意味をそぎ落とし、音楽性とリズムを重視した。こちらは、まさに1884年に出たヴェルレーヌ『呪われた詩人たち』によってにわかに台頭し、マラルメの火曜会に多くの若い詩人を集めた。

ドビュッシーも、火曜会はじめ象徴派のサロンに顔を出し、詩人たちと共作を試みている。

ドビュッシー音楽について印象派のレッテルが定着したのは、1901年に初演された管弦楽のための「夜想曲」らしい。この公演には、「鳴り響く音の斑点」でつくられ、「これ以上印象主義的な交響曲は想像しようがない」という批評が出た。

たしかに、調性感を曖昧にし、輪郭をぼかし、線(旋律)より塊(和声)で構成するなど、ドビュッシーの技法は印象派との共通点が多い。しかしこの作品のイメージ源は、マラルメの火曜会に出入りしていたアーンリ・ド・レニエの詩なのだ。

マラルメの詩にもとづく「牧神の午後への前奏曲」、ヴェルレーヌに想を得た「月の光」。ドビュッシーがとりわけ霊感を得たのは象徴詩だった。

 これはドビュッシーの本質はモネやマネのような印象派ではなく、象徴派の詩人との近親性を持つということなのだが、この舞台から受ける印象もそうしたものだ。ドビュッシーの楽曲でもオーケストレーションされた楽曲である「海」や「牧神の午後への前奏曲」はその音からきらびやかな色彩感を感じることがあるけれど、ピアノ曲は少し違っていて、特にこの作品の中核となる「月の光」などは光といってもそれはかそけき光のイメージであり、それに触発されたダンスにも暗い中にぼんやりと浮かび上がるような静かな美しさに満ちているのである。

勅使川原三郎 佐東利穂子

【公演日程】
9月 25日(土) 18:00
9月 26日(日) 16:00
9月 27日(月) 19:30
9月 28日(火) 19:30
10月 1日(金) 19:30
10月 2日(土) 16:00
10月 3日(日) 16:00
10月 4日(月) 19:30
全8回公演
開演30分前より受付開始、客席開場は10分前。全席自由

【劇場】カラス・アパラタス B2ホール

【料金】一般 予約 3500円/当日 4000円 学生/予約・当日 2500円

死の世界との境界描く コトリ会議「スーパーポチ」@こまばアゴラ劇場

コトリ会議「スーパーポチ」@こまばアゴラ劇場

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コトリ会議は死の世界(彼岸)との境界線を描く。実家で飼われていた愛犬スーパーポチが死んだとの知らせを聞き、久しぶりに故郷である田舎町に住む兄のもとに彼氏とともに帰省する菫が出会う不思議な体験の物語。
実家には小学生の菫と何かあったらしい小学校時代の担任、堂下先生が入り浸りになっているが、どうも様子がおかしい。久々に再会した兄夫婦の言動もどこかおかしく、彼らはもうすぐこの家を出て、もう二度と帰ってこない旅に出るという。もうすでに骨になったうえにミキサーで細かく砕かれてしまったポチのことや旅に出るという兄、ここで出会うことがすべて現実離れしているのはそこがもうすでに分かちがたく、どこか不気味な「死」のイメージに彩られているからかもしれないと感じた。
コトリ会議の山本正典の紡いでいくのはいつも不思議な世界ではあるが、そこはどこか懐かしくもある。それはそこが現実世界ではなく、現実と隣接する非日常の世界で、それはどこかで死の世界(彼岸)そのものであるからだ。こうした死と隣接した世界のイメージはこれまでも演劇では繰り返し描かれてきた。
それは演劇という形式が現実を描きながら、その向こう側にそれを見る人が幻視する世界とを同時に想起させるということを得意とする形式だからだ。
そのことはこの国の演劇的虚構のモデルとなっているのが能楽であり、コトリ会議は岡田利規が最近取り組んでいる現代能を標榜するような作品群のように形式そのものが能を模倣しているわけではないけれど、日常/非日常の重なりを見せていくという構造自体は能楽以来のこの国の演劇の歴史的文脈に連なっているということはあると思う。
実は最近の我が国の現代演劇の系譜のなかで、形式自体は様々なバリアントがあるけれども、現実/非現実の狭間を描く演劇の流れは存在感を増している気がする。先述した現代能などもそのひとつだが、もう一方では五反田団の前田司郎を筆頭にその影響を受けて登場した若手劇団としてうさぎストライプやムニ(宮崎企画)なども出てきている。それがなぜなのかについては引き続いてのご丁寧な思索が必要になってきそうだが、直接的な影響関係は一端置いておくとして、それまで非常に個人的かつ孤立的に見えたコトリ会議の作風もそうした流れの一環として理解することが可能なのかもしれないと思えてきた。

作・演出:山本正典

片手におさまるほどの瓶をわたした。
なにこれ。
せいし。
ばか。
はは。
なくすよ。
なくさないでよ。
ちいさいもの。
だって。
うん。
こんだけしかでなかったから。
ばか。
はは。
じゃあ。
うん。
いってくる。

ポチのとこまで、いってくる。



コトリ会議
2007年結成。作家・山本正典を中心にSF感あふれる壮大な設定の中に、現代社会における”ふつうの人”の持つ気持ちを反映させた物語を創作。その作品でもちいる言葉は、軽妙で笑えるが、詩情に満ちて切なくも響く。そして発話するテンポとボリュームを操り声や音を聴かせる演出を得意とする。
旅をともなう本公演と、イベント的な小規模公演、演劇祭では誰も狙わない”隙き間”を利用した神出鬼没な小作品を、規模によって変幻自在に上演している。

出演

三ヶ日 晩 花屋敷 鴨 原 竹志 まえ かつと 山本正典 吉田凪

スタッフ

舞台監督:柴田頼克(かすがい創造庫)<神戸公演>
中西隆雄<東京公演>
音響:佐藤武
照明:石田光羽
舞台美術:竹腰かなこ
衣装:安達綾子(壱劇屋)
小道具:伊達江李華(小骨座)
宣伝美術:小泉しゅん(Awesome Balance)
制作:若旦那家康

楽しそうなキャ・ノンのパフォーマンスに万感の思い PARADISES「NEVER ENDING PARADISE TOUR」@東京 duo MUSIC EXCHANGE

PARADISES「NEVER ENDING PARADISE TOUR」@東京 duo MUSIC EXCHANGE

PARADISESのライブ映像は何度か見たことはあったのだけれど、実際のライブを生で見たのは初めてとなった。ライブを見に行った主たる目的はキャ・ノン(元雨宮かのん)がこのグループでどんなパフォーマンスをしているんだろうかということだったのだが、本当に楽しそうで自分に合った場所を得ることができてよかったなと思った。こんなことを考えたのは前日に浪江女子発組合ではちみつロケット時代の同僚、播磨かなが本当に楽しそうにアイドルしているのを見て、選択について外からとやかく言う人いたとしても、本人が楽しむことができて、それを観客が共有することができるというのが一番だと思ったからだ。
PARADISESというグループ自体はキャ・ノンだけでなく他のメンバーもそれぞれ魅力的で前途有望だとは思うけれども、まだまだ発展途上であることも確かだろう。以前はかぶせをしていたが、この日のパフォーマンスは完全生歌だったとは思う。ただボーカルにはけっこう強くエフェクトがかけられていて、せっかくのそれぞれの声の個性が少し分かりにくいのはもったいないなと思う。それゆえはっきりとは分からない部分もあるのだが、キャ・ノンは前身のグループで聴いた時よりは歌が格段に安定していて、進歩しているのじゃないかと思った。特に魂の叫びのような感情を載せて歌う歌唱には聴いている方の感情を掻き立てるようなエモーショナルな力があり、このグループならではの魅力を演出していた。
それでもボーカリストとしてはPARADISESの核は月ノウサギだとは思うのだけれど、キャ・ノンも時折拮抗するような実力を見せつつあると感じた。彼女は以前にいた大人数グループ(3Bjunior)で圧倒的なセンターを務める華があったけれど、正直言って歌の魅力はそこまででもないと感じていた。そうしたイメージは払しょくできたといえそうだ。
とはいえ、私が彼女のことを今でも気にかけているのは大森靖子に一目置かせた恐るべき作詞の才能を持っているからだ。まだ作詞した楽曲はないようだけれど、きょうのパフォーマンスを見ていてひょっとしたらこれは自分の作詞なんじゃないかと勘違いするような没入を感じるパフォーマンスが何カ所かあった。これは要するに本人の感性とPARADISESの方向性がある程度シンクロしているということで以前にいたグループでのパフォーマンスではそういうことを感じることはなかった。
彼女の本領はむしろギター演奏や作詞作曲を手掛けていたガチンコスターダストで発揮されていたが、その時に後輩として彼女を追っていた「あいらもえか」を擁するのがスタダの新興注目グループ、アメフラっシである。スタダはグループごとに処遇が違うけれど退社した人をいなかったことにしがちなので、難しいかもしれないが、今年この東京 duo MUSIC EXCHANGEで何度かワンマンライブをしたことや、企業グループの中での位置づけはどちらも新鋭であるという共通点もあり、ぜひ一度対バンライブをやってくれないかなと思った*1

www.youtube.com

1部Open/Start 14:30/15:00
2部Open/Start 17:00/17:30
[問] duo MUSIC EXCHANGE 03-5459-8716

*1:ちなみにアメフラっシはガールクラッシュな曲を志向しているが、アイドルフェスでは完全に浮いていることが多い。

演劇に託した福島への思い 「浪江女子発組合 出張公演 〜ももクロさんお先に失礼します〜 」@明治座

「浪江女子発組合 出張公演 〜ももクロさんお先に失礼します〜 」@明治座

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live.nicovideo.jp
演出家・プロデューサーとして佐々木彩夏が手掛ける公演にははずれがないと再認識させられる舞台だった。
今回の目玉企画は明治座という公演会場を考慮して、ライブの中に入れ込状に据えられた演劇の舞台だ。「幼い頃に浪江町にいたが、今は故郷を離れている二人の女性が約10年ぶりに再会し一緒に花火を見る」というのがここで語られる物語の主要な筋立てなのだが、別れる結果になった背景には直接は言及されることはないが、東日本大震災福島第一原発の事故があるからだ。「そんなことはどこにも描かれていない」という人もいるかもしれないが、演劇というのはそういうもので、彼女たちの名前が福島ひろの(広野)と双葉萌花であることから、この再会が震災により不通になっていた常磐線の全線再開*1*2を描いた「つながる、ウンメイ」の歌詞とリンクし、震災と震災後の福島の復興を隠喩的に描いたものとなっている。そして、そのことは明治座での観客以上に福島・浪江でこの作品の配信映像を見る現地の人たちに向けられているのだ。
台本は構成作家が手掛けたものだが、物語の骨子は佐々木自身が配役を含めて、作家に当て書きを注文したものだ。だから、実質的な作家(すなわち秋元康がよくそうクレジットされている原案)は佐々木彩夏なのだと言ってもいい。この物語には佐々木の(そしてももクロの)福島に対する思いが込められている。
女子高生でラジオリスナーの大熊はな(小島)と友人の双葉萌花(鈴木)が登場。2人は同世代のDJいわき愛来愛来)、富岡優月(市川)の「愛ラブ優 レディオ」を聴いている。はじまってすぐに気が付くのは登場人物の名字がすべて浪江町周辺(浜通り)の市町名に置き換えられている。人物にはそれを演じる人物の属性も反映されていて、それを知るファンには細かい説明をしなくても伝わる仕掛けにもなっている。
www.youtube.com
例えば最初に登場するアメフラっシのメンバーはYoutubeやラジオでの番組を実際にも手掛けており、ラジオ番組はあらかじめファンから募集したアイデアを取り入れて、視聴者からのメールやコメントで進行していく本当のラジオ番組のように展開していく。
 この後、高校生とラジオパーソナリティーを演じていたメンバーは、アメフラっシとしてステージに立ち、「Staring at You」をパフォーマンスした。ラジオを場面転換のつなぎとしながら、リクエスト曲風にアメフラっシ、B.O.L.T.、Awww!とそれぞれの母体グループの楽曲を挿入していき、ミュージカルのような音楽劇として展開していく手法はももクロのバレンタインイベントでもおなじみだが、ラジオ番組風の構成の中に浪江にまつわる最近の情報などを入れ込んで、従来は別のコーナーを立てて行っていた浪江情報を作品中に落とし込んだのも今回の舞台の発明だ。
 次の場面では福島なみえ(佐々木)、福島ならは(内藤)、福島ひろの(高井)と福島家の3姉妹が登場する。最初、高井千帆が福島ひろのと名乗って出てきた場面では名字を地名に差し替えるという役名ルールはどうなってしまったのだろうと戸惑いを感じた。だが、ここでは3人が姉妹なので名字は同じ福島として名前を町名で置き換えている。「なみえ、ならは、ひろの」の三姉妹は実はももクロが元来は2020年4月予定していたがコロナ禍の影響で2年連続翌年への延期を余儀なくされた「大規模ライブ春の一大事」共同主催の地方自治体、広野町楢葉町浪江町である。
 一見寸劇風にも見える「演劇」だが、これがただの茶番劇にとどまらないのは10年前に喧嘩別れしたままになってしまっていた幼馴染と10年ぶりに再会して、一緒に春花火を見て和解するという物語がそのまま佐々木の福島に対する思いを代弁するような内容となっていること。そして、これはそのままこの場面のクライマックスで披露される浪江女子発組合の楽曲「つながる、ウンメイ」*3の歌詞とそのまま響きあうような内容となっているのだ。
第二部終演後、12月のLINE CUBE SHIBUYAでのライブと来年初めのアルバム発売が発表になったが、目標としている武道館に向けて、久しぶりに上昇気流を描いて昇りつめていくときのももクロの勢いを彷彿とさせる感覚を味わうこともできた。佐々木の脳裏には武道館公演へ
の道程もしっかりと描かれているのではないか。
そういう意味ではまだ根拠薄弱と笑われそうだが、この日はなかったが、日程(11月17日)だけが発表されているあーりん主催のアイドルフェス「AYAKARNIVAL」の武道館での開催と浪江女子発組合の参加がどこかで発表されるのではないかと考えている。

9月25日(土)
一部:13:00開場 14:00開演(15:30終演予定)
二部:17:30開場 18:30開演(20:00終演予定)

2021年9月25日(土)
<セットリスト>
1部
01.Overture
02.なみえのわ
03.ミライイロの花
04.MICHI [アメフラっシ]
05.SLEEPY BUSTERS [B.O.L.T]
06.泣くな!サイダー [Awww!]
07.空でも虹でも星でもない [佐々木彩夏]
08.あるけあるけ
09.あの空へ向かって 浪江女子発組合ver.
10.つながる、ウンメイ
11.またキミと。
12.なみえのわ

2部
01.Overture
02.なみえのわ
03.ミライイロの花
04.Staring at You[アメフラっシ]
05.JUST NOD [B.O.L.T]
06.君からの卒業[Awww!]
07.Grenade [佐々木彩夏]
08.あるけあるけ
09.あの空へ向かって 浪江女子発組合ver.
10.つながる、ウンメイ
11.またキミと。
12.なみえのわ

*1:www.minyu-net.com

*2:広野駅と双葉駅の間は途中に不通区間があったため、行き来することができなかった。

*3:www.youtube.com

アイドル?アイドルじゃない? KENTARO‼︎がプロデュースしたボーカルユニット「アンバーのせいにして」 1stシングル「生まれ変わりヒーロー」配信

KENTARO‼︎がプロデュースしたボーカルユニット「アンバーのせいにして」 1stシングル「生まれ変わりヒーロー」配信

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KENTARO‼︎は日本のコンテンポラリーダンス分野を代表する振付家・ダンサー。自らのカンパニーである「東京ELECTROCK STAIRS」を率いてコンスタントに公演を行ってきたが最近はメンバーであるダンサーが相次ぎ横浜ダンスコレクションで審査員賞を受賞、それぞれが自らの集団を率いるカンパニーでの公演を行うことなどが増えてきたせいもあって、第一線での活動からは一歩退いた印象があった。
その間何をしていたのかというのが特にコロナ禍においては公演自体あまりないうえに会場で本人とまとまった話をするのが困難になっていたためによく分からなかったのだが、ダンスにおける若い教え子にプロデュースユニット「アンバーのせいにして」を結成させ、楽曲もプロデュースし、Spotifyを始めとするサブスクで配信デビューさせていたことを知って驚いた。
2本アップされているMV映像のうち2本目の「聖なる逆襲」は高橋萌登率いるMWMWとの合同ダンス作品にもなっており、こちらもKENTARO‼︎が振付を担当。この映像ではアンバーのせいにしての二人もけっこうバリバリに踊っており、紹介などではボーカルユニットという風にはなっているが、実際の生でのライブパフォーマンスはもしあればダンスボーカルユニット、あるいはアイドルのようなものになっているのではないだろうか。アイドル?アイドルじゃない?と見出しに書きたくなったのはそのあたりのところで、実は私の場合、アイドル的要素の強いダンスカンパニーとダンスに表現としての重きを置いているアイドルとはそれほど評価の基準が変わらなかったりする。そういう意味ではアイドルファンがこういうタイプの表現をどう考えるかには興味がある。音楽性も面白いので、楽曲派と言われているようなアイドルファンの一部ははまってもおかしくないと思う。
ちなみにアンバーのせいにしてのSaaya Pajamandom(栗田紗采)は先日開催されたダンスフェス「君が忘れたダンスフェス」*1ではW/unionというプロデュースユニットの作品では女性4人が出演する作品の振り付けも担当、こちらの方でもユニークな才能を見せてくれた。ダンス作品とは書いたが大きな1枚布が見立てられた奇妙なキャラクターの怪物も登場するポップかつコミカルな味わいも持つ作品で、ちょうど4人のキャラクターがぴたりと合うことからショー仕立てのライブが将来あれば寸劇代わりにアメフラっシにも演じてみてほしいと思われたほどだ。KENTARO!!も大学などで若い女性ダンサーに教える機会が多いだけに一度スタプラの若手グループでどこかワークショップとかをしてもらうところが出てきたら面白いのだが*2

Profile
アンバーのせいにして / blame Amber 
Saaya Pajamandom / さあやぱじゃまんだむ
Cosmic Yoiyoi / こずみっくよいよい
Cosmic Yoiyoi (17才)とSaaya Pajamandom (22才)による日常蜃気楼ボーカルユニット。
ダンサー・振付家・音楽家 KENTARO‼︎と通じて出会い、結成。
Saaya Pajamandomは大学でダンスを専攻し、明るさと儚さを併せ持つ素朴なパフォーマーで自らアートワークやイラストを手掛ける。Cosmic Yoiyoiは特徴的な歌声を持ち、小柄ながらも不思議な魅力を持っている。これからの成長をほんのり見守りたくなる2人。

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:表現の幅を広げるためにやってほしいのは本当はアメフラっシなのだが、楽曲提供まで考えると方向性が違いすぎる気がする。

かわいさよりもカッコよさを探求するももクロの後輩グループ Youtube映像で見るアメフラっシ入門

Youtube映像で見るアメフラっシ入門


ももいろクローバーZ私立恵比寿中学が所属するスターダストプロモーションのアイドル部門スターダストプラネットスタプラ)の中でいまだ知名度こそ高くないが、私が個人的にもっとも注目しているグループがアメフラっシ=写真上=である。ももクロ直系のアイドル育成グループに3Bjuniorというのがあり、ここからはロッカジャポニカはちみつロケットといったグループが巣立っていった*1が、この育成グループが解散後、残された精鋭メンバーで結成されたのがアメフラっシである。おかしな名前からギミックありありの面白アイドルと勘違いされる向きもあるかもしれないが、前身グループ時代から鍛え上げられた歌、ダンスの実力を生かして、極めて完成度の高いパフォーマンスを行うダンス&ボーカルガールズユニットへと成長を遂げており、私のイチ押しのグループなのである。
最近になってようやく一部の人の間で話題になりはじめているが、アイドルファンの知人からさえ「どういうグループか分からないので知りたい」との声が上がっている。最近はネット上にライブ映像もアップされてはいるのだが、どの映像を見れば分からないとの声もあり、今回まずは「これを見ろ」という映像を紹介することにしたい。

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きんよるライブとあるが6月に渋谷のライブハウスで開催されたワンマンライブの映像でここでは「MICHI」「Sensitive」「アダムスキーじいさん~ハムとみかん~」「バカップルになりたい!」の4曲が紹介されている。注目は2曲目に収録された「Sensitive」だ。「Sensitive」はこのライブが初披露だったが、この曲を表題曲とするシングルが11月3日に全国流通販売されることになっている。コロナ禍のなか一進一退ではあるが、現在リリースイベントが続いている。最近のアメフラっシの特徴は「ガールクラッシュ」と呼ばれるスタイリッシュな女性のカッコよさ、強さを強調するような楽曲がひとつの主流となっていることだ。いわゆるアイドル曲と呼ばれる楽曲傾向とはかけ離れているため、「K-POPみたい」というような評が散見されているのだが、むしろ洋楽的というべきだろう*2。もっとも、アメフラっシはその一方でその類稀な表現力を生かして変幻自在と自称するように様々な楽曲を手掛けるために上記の映像では最後に収録されている「バカップルになりたい!」のようなコミカルなアイドル曲(?)もある*3

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次の2つの映像はいずれもZEPP HANEDA*4でのライブ映像。最初は第二部での映像で、冒頭が「メタモルフォーズ」。アイドル楽曲には珍しい本格的なEDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)曲だが、前述した「ガールクラッシュ」を最初に志向し転機となった楽曲でもある。この曲が現在のところアメフラっシの代表曲でもあるが、この映像では途中のドロップ部分の煽りで初めて客をジャンプさせた。これはその後、定番となって現在はフェスなどで観客を動かし巻き込んでいく大きな武器ともなっている。「STATEMENT」は曲なかに入る愛来の「このまま終わるもんか」の叫び声が印象に残る。アメフラっシの魂の叫びのような歌であり、スタプラが外部のアイドルも招いて企画した対戦型アイドルイベント「ライブスタイルダンジョン」第二回大会で第一回大会を全勝で圧勝し絶対王者と言われた桜エビ~ず(現ukka)に初めて土をつけて、アメフラを優勝に導いた楽曲でもある。そして、最後の「Staring at You」は最近のライブでは最後に歌われることも多く、アメフラのアンセムのようになりつつある楽曲である。最後の方にメンバー、ファンの全員で指を使って☆の形を作る演出(振付)が印象的だ。
一方、2番目の映像は「Rain Maker」からスタート。ロック調の激しい楽曲で初期はこういう楽曲も多かった。名刺代わりの1曲というか、初めからフルスロットルでかましたい時に歌われることが多い曲。次の2曲「フロムレター」「Over the Rainbowはメンバー個々の歌唱力を生かしたバラード的な楽曲で、グループのポテンシャルの高さを端的に示すことができる曲でもある。「フロムレター」は愛来が参加しない3人で歌い、アメフラっシにはこういう全員では歌わない曲も珍しくない。「Over the Rainbow」では逆に愛来がひとりで登場してソロで1番を歌う。愛来のソロ曲なのかと思わせたうえで2番では鈴木萌花が登場してふたりによるハモを聞かせ、続いて市川優月ポエトリーリーディング小島はなのソロ、全員のユニゾンと続くという凝った構成になっている。フェスなどでは他の仕事(演劇など)でメンバーの一人が抜けた時にこうした楽曲がキーとなるセットリストを組み、4人とそん色のないパフォーマンスを見せることができ、特に最近メンバーの小島はな鈴木萌花が相次ぎ、コロナ感染で欠席せざるを得なくなった時には大きな威力を発揮した*5

最後に最近のライブパフォーマンスからもう1本(参考映像)
www.youtube.com

<ライブパートSETLIST>
M1.BADGIRL
M2.Sensitive
M3.MICHI
M4.メタモルフォーズ
M5.グロウアップ・マイ・ハート

*1:いずれもその後解散

*2:アヴィーチー(Avicii)を彷彿させるとの声があったので、Youtubeで調べてみるとこちらは当たっている部分はあるかもしれない。 www.youtube.com
www.youtube.com

*3:K-POPグループがこういう歌を歌うことはまずありえないだろう。

*4:simokitazawa.hatenablog.com

*5:どこまで意図したものかは分からないが、愛来と萌花の舞台出演などグループを続けながら個人の活動がしやすい状況も作っているのが素晴らしい。来年、高校卒業後はゆずはなの個人活動も増えていくかもしれない。