匿名劇壇「笑う茶化師と事情女子」@こまばアゴラ劇場
作・演出:福谷圭祐
ーお前なんか絶対に茶化してやる
男「事情女子ってなに?」
女「事情があるの。え、なに、チャカシ?」
男「そう、茶化師」
女「美容師、薬剤師、漫才師、茶化師」
女「なにそれ。なにする仕事?」
男「ターゲットの価値観とかとかに干渉して、からかって、依頼人の留飲を下げる仕事」
女「変な仕事してる」
男「要は“なに本気になっちゃってんの?”屋さんだよ」
女「第三者委員会みたいなこと?」
男「違うよ。第三者委員会は、全然違うよ」
とある編集プロダクションでデザイナーとして働く事情女子。
どうやら浮気されたらしい。世界が終わる。
敬遠に抗議の意味を込めて、空振りをしたバッター。
明日も野球がしたいみたい。
黒胡麻卵黄の健康効果は全部プラシーボでしたとさ。
台無しだよ。全部。
笑ってんじゃねーよ。
2011年5月に結成し大阪を中心に活動。メタフィクションを得意とする。作風はコメディでもコントでもなく、ジョーク。
space×drama2013優秀劇団、次世代応援企画 break a legなどに選出。福谷圭祐 作『悪い癖』が第23回OMS戯曲賞にて大賞受賞。
出演
石畑達哉 佐々木誠 芝原里佳 杉原公輔 東千紗都 福谷圭祐 松原由希子 吉本藍子
スタッフ舞台監督:ニシノトシヒロ
舞台美術:柴田隆弘
音響:近松祐貴
照明:加藤直子(DASH COMPANY)
衣裳:安達綾子(劇団壱劇屋)
演出助手:北村侑也
宣伝美術:二朗松田(MADZOODAD216)
舞台写真・舞台映像・パンフレット写真:堀川高志(kutowans studio)
制作:竹内桃子
制作協力:徳永のぞみ
大阪的な笑いとはいえず、関西演劇の主流にもなりにくい作風だが、関西からしか出てこないような劇団だとは思う。一番勢いがあったころの遊気舎、クロムモリブデン、デス電所を思い出させた。
基本的な構造はレイ・クーニーのような緻密なシチュエーションコメディを彷彿とさせる。複数の場所、人物による各種のトラブルが最終的には雪だるまのように膨らんで大勢の人を巻き込んでとんでもない状況が引き起こされていく。
緻密なコメディと書いたが、この集団の作品がユニークなのは終盤における巨大なちゃぶ台返しなど緻密な伏線の回収とそれに収まりきらない破綻した構造が共存していて、最後に濁流のよかうに流されていくことだ。京都勢に押されっぱなしだった大阪劇団のひさびさの有望株であるのは間違いない。