青年団『東京ノート』(1回目)@吉祥寺シアター
青年団「東京ノート」は平田オリザの代表作でもあり、青年団による海外公演やアジアでは現地の劇団との共同制作による現地バージョン上演がなされてきた。それらの総決算として「東京ノート・インターナショナルバージョン」が吉祥寺シアターで上演されたばかりだが、それに続けて東京ではひさしぶりのオリジナル版の上演となった。
作品の詳しい内容については平成の舞台芸術回想録 青年団「東京ノート」(1)*1でまとめたのでそちらを参照してほしいのだが、今回の上演の最大の特徴は初演時から出演していたベテラン陣から最近まで無隣館にいた若手まで広い世代のキャストが一堂に会したことだろうか。
「東京ノート」に欠かすことができないのが、主演以来長女役を演じ続けている松田弘子の存在であろう。もちろん、彼女はいつでも青年団に欠かせない俳優だが、「東京ノート」においては「東京物語」における笠智衆のように作品にとって不可欠な存在であろう。そして、年齢とともに年輪は増しているはずだが、あくまで観客としての印象だが初演の時とほぼ変わらない姿を見せてくれている。
一方、対照的なのは山内健司。今回は従来は志賀廣太郎らが演じてきたフェルメールが専門の学芸員の役を演じている。山内は松田とは逆にあまりこの役という印象がないが、最近は家族の上の兄弟のうち長兄か次兄のどちらかを演じていたことが多かったのではないだろうか。今回はそれを秋山健一が演じていたが、所属事務所のサイトで経歴を見ると、
映画『淵に立つ』(深田晃司監督、2016)への出演はあっても舞台は青年団国際演劇交流プロジェクト『フェードル』(2005)への出演が最後になっている。記憶はあいまいだが、私も最近は「東京ノート」では見た記憶がなく*2、キャスト表を見て少し驚いたのでひさびさの出演ではないかと思う。
逆に若手から今回本公演に抜擢された感があるのが南風盛もえ。家庭教師のかつての教え子の大学生の役だが、この役には幕切れ近くにきわめて印象的なやりとりがある難役でもある。いまの陣容で普通にキャスティングするとすれば今回は出ていない藤松祥子あたいが適任とも思われる役柄。藤松がなぜ出演者から漏れたかは定かではないが、この役に起用された南風盛もえは次世代ヒロイン候補に名を連ねたと言っていいのではないか。
若手では本公演常連組の井上みなみが今回も出演しているが、ボーイッシュな役どころはこれまでにない感じで新境地といったところだろうか。
山内健司 松田弘子 秋山建一 小林 智 兵藤公美 能島瑞穂 大竹 直 長野 海 堀夏子 鄭亜美 中村真生 井上みなみ 佐藤 滋 前原瑞樹 中藤奨 永山由里恵 藤谷みき 木村トモアキ 多田直人 南風盛もえ
スタッフ
舞台美術:杉山 至
舞台美術アシスタント:濱崎賢二
舞台監督:武吉浩二(campana)
舞台監督補佐:海津 忠
演出助手:陳 彦君
照明:富山貴之
照明補佐:三嶋聖子 井坂 浩
音響:泉田雄太 櫻内憧海
字幕:西本 彩
衣裳:正金 彩
通訳:齋藤晴香
城崎食事:森 友樹(急な坂スタジオ) 佐藤亜里紗(boxes Inc.)
宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子 太田裕子
宣伝写真:佐藤孝仁
宣伝美術スタイリスト:山口友里
撮影協力:千葉県立富津公園 千葉県君津土木事務所
制作:太田久美子 西尾祥子(sistema) 有上麻衣 金澤 昭
*1:simokitazawa.hatenablog.com
*2:「ソウル市民」(2018)に出演していたとの指摘あり。