「平成の舞台芸術回想録」に向けて・再掲)平成の舞台芸術30本 「東京ノート」「三月の5日間」「わが星」……
東京ノート
新型コロナ感染対策のために都内の演劇公演が次々に中止・延期となっている。このサイトでは観劇してきた公演についての観劇レビューをコンテンツの柱としてきたが、観劇が困難な状況になり、それも難しくなってきている。そのため、これまでも過去30年間に私が体験してきた舞台について、回想録の形で取り上げる連載をスタート、青年団「東京ノート」、ダムタイプ「S/N」を掲載してきたが、今後しばらく月1ペースで行ってきた執筆のペースをはやめていきたいと思う。とりあえず、近々に「平成の舞台芸術回想録(3)」としてチェルフィッチュ「三月の5日間」を取り上げ、掲載する準備をしていく予定だ。
以下、ままごと「わが星」、上海太郎舞踏公司「ダーウィンの見た悪夢」、木ノ下歌舞伎「東海道四谷怪談」、玉田企画「あの日々の話」、劇団ホエイ 玉田企画 「郷愁の丘ロマンピア」と続く予定。
平成の舞台芸術回想録 青年団「東京ノート」(1)
simokitazawa.hatenablog.com
平成の舞台芸術回想録 ダムタイプ「S/N」(2)
simokitazawa.hatenablog.com
平成の舞台芸術回想録 チェルフィッチュ「三月の5日間」(3)
simokitazawa.hatenablog.com
平成の舞台芸術回想録 ままごと「わが星」(4)
simokitazawa.hatenablog.com
新聞社の企画した「平成の30冊」*1が話題になっているようだ。新たな時代(令和)を迎える前の総括として舞台芸術でも「平成の舞台芸術30本」を試みた。ダムタイプ「S/N」をどうしても入れたいため、「演劇」ではなく「舞台芸術」というくくりにしたが、30本を選んでいった最後の方では選びきれないものが続出して思わず後悔した。選び終わった直後に惑星ピスタチオ「破壊ランナー」を入れ忘れているのに気がついた。こっそり何かを外して入れ替えようかと思ったが、それも忍びないので泣く泣く諦めた。まだまだ、入れ忘れているものがあるかもしれないが、それは容赦してほしい。
順不同とは書いたが、最初の10本は何度選んでも動かないだろう。平成は1989年から始まるが、94年に上演された平田オリザ「東京ノート」は岸田國士戯曲賞を受賞した平田の代表作。現代口語演劇の典型だが、類似の群像会話劇が相次ぎ登場したことで、野田秀樹、鴻上尚史らの作った80年代演劇の流れを一変させた。
TOKYO NOTES
こうした群像会話劇を私は「関係性の演劇」*2と名づけた。リストの中では松田正隆「月の岬」、長谷川孝治(弘前劇場)「家には高い木があった」、はせひろいち(ジャブジャブサーキット)「非常怪談」がこの系譜に入る。この他にも宮沢章夫、岩松了、土田英生らが重要だが、1本を選びにくかったなどの理由もあり、今回の「舞台芸術30本」では漏れてしまった。
公演ダイジェスト:「月の岬」 | SPIRAL MOON
一方、90年代は大規模野外劇でダンスと音楽、演劇を総合させた維新派やダンスパントマイムによる群像劇を駆使して人類の進化や滅亡への予感など壮大な主題を描き出した上海太郎舞踏公司、マルチメディアパフォーマンスの嚆矢といえるダムタイプなど世界でも類のない独自性の高いパフォーマンスも生み出した。これらの集団は海外でも高い評価を受けた。この本拠地が京都、大阪といずれも関西であったのも特筆すべきことだろう。
Dumb Type - S/N
ケラリーノ・サンドロヴィッチのナイロン100℃、松尾スズキの大人計画、いのうえひでのりの劇団☆新感線などエンターテインメント性と芸術性を高度な水準で融合させた劇団が登場してきたのも90年代のもうひとつの動きだ。ケラと松尾は選ぶべき水準に達した作品が数多くあり、どの作品を選ぶかは苦渋の選択だった。それぞれ「1979」「カメラ≠万年筆」、あるいは「愛の罰」「Heaven's Sign」「ふくすけ」なども優れた作品だが、個人的な思い入れも重視し「カラフルメリィでオハヨ」「ファンキー!」を選んだ。
平田らが作った現代口語の群像劇の流れは90年代演劇の主流となっていき、2000年代(ゼロ年代)
*3に入ってもポツドール「愛の渦」、渡辺源四郎商店「月と牛の耳」などの後継を呼んだが、こうした流れを切断し現代演劇の流れを大きく変えたのがチェルフィッチュ「三月の5日間」(岡田利規)と東京デスロック「再生」だった。
チェルフィッチュの「三月の5日間」は役と俳優の乖離、東京デスロックの「再生」は身体に負荷をかける演出の導入でともにポストゼロ年代演劇への道を開いた。
チェルフィッチュ「三月の5日間」
そうした流れはミクニヤナイハラプロジェクト「3年2組」やついにはひとつの到達点として表れ、それ以降の演劇に大きな影響を与えたままごと「わが星」の登場へとつながっていく。
『わが星』オープニング
星の記憶 ~わが星 小豆島滞在記_予告編
2010年以降(ポストゼロ年代)の演劇については綾門優季(キュイ)、山本卓卓(範宙遊泳)、額田大志(ヌトミック)ら注目すべき才能が現れてはいるがいずれも「この1本」という決め手に欠けるきらいがある。そんななかでこの世代の代表として山田百次(劇団ホエイ)「郷愁の丘ロマンピア」、玉田真也「あの日々の話」を選んでみた。
東京ノート 青年団
三月の5日間 チェルフィッチュ
呼吸機械 維新派
S/N ダムタイプ
ダーウィンの見た悪夢 上海太郎舞踏公司
月の岬 青年団プロデュース(松田正隆)
わが星 ままごと
3年2組 ミクニヤナイハラプロジェクト
家には高い木があった 弘前劇場
天守物語 ク・ナウカ
再生 東京デスロック
カラフルメリィでオハヨ ナイロン100℃
ファンキー! 大人計画
阿修羅城の瞳 劇団☆新感線
じゃばら 遊気舎
非常怪談 ジャブジャブサーキット
サマータイムマシン・ブルース ヨーロッパ企画
愛の渦 ポツドール
耳をすませば シベリア少女鉄道
It was written there 山下残
Finks レニ・バッソ(北村明子)
四谷怪談 木ノ下歌舞伎
娘道成寺 きたまり(木ノ下歌舞伎)
フリル(ミニ) 珍しいキノコ舞踊団
夢+夜~ゆめたすよる~ 少年王者舘
あの日々の話 玉田企画
月と牛の耳 渡辺源四郎商店(弘前劇場)
郷愁の丘ロマンピア 劇団ホエイ
夕景殺伐メロウ デス電所
スチュワーデスデス クロムモリブデン(順不同、同一作家は2本選ばず)