下北沢通信

中西理の下北沢通信

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連載)平成の舞台芸術回想録(9) 維新派「呼吸機械」

連載)平成の舞台芸術回想録(9) 維新派「呼吸機械」

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維新派「呼吸機械」
維新派の公演を巨大というしかない野外舞台を追いかけて奈良山奥のグラウンドから瀬戸内海に浮かぶ島まで非日常の空間に出会うために出かけていくことが、年に一度の愉しみだった。それが叶わなくなってどれほどの歳月が流れたことだろうか。好きな劇団はもちろん他にもたくさんあるが、維新派は唯一無二の存在であった。

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 内橋和久の変拍子音楽に合わせ単語の羅列みたいな大阪弁のセリフをラップ調で群唱するのが維新派のヂャンヂャン☆オペラのスタイルだ。しかし、新国立劇場で上演された「noctune」あたりから「動きのオペラ」、すなわち動きだけでセリフがないダンス風のパフォーマンスがもうひとつの柱となってきた。「キートン」「ナツノトビラ」、前作の「nostalgia <彼>と旅をする20世紀三部作 #1 」(2007)と「動きのオペラ」への方向性はしだいに明確なものとなってきた。
 維新派のダンス的な身体表現が極まったのがびわ湖水上舞台での「呼吸機械」(2008年)であった。この作品では表題の「呼吸機械」を思わせる“ダンスシーン”を冒頭とラストのそれぞれ15〜20分ほど、作品の中核に当たる部分に持ってきた。「動きのオペラ」のひとつの到達点といえるかもしれない。びわ湖の湖面に向かって、少しずつ下がっている舞台空間、その上を流れていく水のなかに浸かりながらそれは行われた。パフォーマーの動きだけでなく、野外劇場だからこそ可能な水の中の演技で飛び散る水しぶきさえ、照明の光を乱反射して輝き、50人近い大人数による迫力溢れる群舞は比較するものが簡単にはないほどに美しいシーンであった。巨大なプールを使ったダニエル・ラリューの「ウォーター・プルーフ」、ピナ・バウシュの「フルムーン」などコンテンポラリーダンスにおいて水を効果的に使った作品がいくつかあるが、「呼吸機械」もそれに匹敵する強いインパクトを残した。特にラストは維新派上演史に残る珠玉の10分間だったといってもよいだろう。

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