Co.Ruri Mito『Where we were born』(三東瑠璃振付)@ シアタートラム(配信)
今回は劇場には行くことができず配信のアーカイブでの観劇となった。前回作品「Me Me」のレビューで三東瑠璃の作品を「通常の群舞作品と大きく違うのは個々のダンサーの動きや身体にフォーカスすることなく、ダンサーそれぞれの動きが組み合わせられることで、全体としてのオブジェ的な造形がグネグネと動き回る体を見せていく」と書いたが、この「Where we were born」も引き続きそういう傾向の作品だ。
ただ、作品の違いもあるが、観劇環境による印象の違いもあって、生で観た前回作品では文字通り「全体としてのオブジェ的な造形がグネグネと動き回る」という感じで、個々のダンサーの個別認識が出来なかったのだが、寄りの画像が見られる映像では個々のダンサーそれぞれの実際の動きがより微細に分かり、それが組み合わさってどのように全体の動く造形的なものが出来上がっているのかがよく分かる。ただ、作品鑑賞という立場からいえば、個々の動きに気を取られてしまう分だけ、動き全体の把握が散漫になってしまうきらいもある。普通のダンスを見るのとはまったく違う感覚が必要で、観劇には慣れが必要かもしれない。
複数のパフォーマーの動きにより、オブジェ的な全体造形を見せていくという作品は舞踏の一部であったかもしれないが、コンテンポラリーダンスの領域では珍しい。それだけ、オリジナリティーが高いともいえるが、三東瑠璃自身もダンサーとして参加したダミアン・ジャレ×名和晃平による「VESSEL yokohama」@横浜赤レンガ倉庫*1がそういう傾向の作品であったし、関かおりの作品*2にも似たような傾向のものがあり、もちろんそれぞれにそれぞれの方法論があり、闇雲に同一視することはできないのだが、「動くオブジェ派」とでも名付けたい気持ちになるのも確かなのだ。
コロナ禍で映像配信が増えたせいか、観客を入れての公演が実行された今回も映像のアーカイブ配信が行われたのは歓迎すべきことで特に今回の配信は有料(2000円)ではあったが、その分映像のクオリティーは高く、そうした映像を撮影可能なアーティストの状況もあるが、見に行くことが困難な地方のカンパニーなどは積極的に映像配信を試みてほしいと思った*3。
■振付・構成:三東瑠璃
■出演:青柳万智子、安心院かな、金愛珠、斉藤稚紗冬、境佑梨、松元朋佳、山﨑智美
■テキスタイルモチーフ:亀井佐知子
■衣裳:稲村朋子
■音楽:中島千絵
[スタッフ]
■舞台監督:筒井昭善、川口眞人(レイヨンヴェール)
■照明:櫛田晃代
■音響:牛川紀政
■フライヤーデザイン・WEBサイト:Léna Pont
■絵:亀井佐知子
■制作:後藤かおり、橋本玲奈■提携:公益財団法人せたがや文化財団 世田谷パブリックシアター
■後援:世田谷区
■助成:
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団
芸術文化振興基金
公益財団法人セゾン文化財団
感情は海の中で生まれた
この大きく果てしない場所で
それはまるで母の胎内のようにも思える
ここは深く暗い海の中
私に触れるそれは何?
私に語りかけるそれは何?
全てが骨になり、肉となり、水となって、
目になり、鼻になり、耳になり、口になり、手になったり、足になったり、
そして感覚だけになってみる
■日時:2020年10月30日(金)~11月1日(日)
10月30日(金)19:00
10月31日(土)14:00/18:00
11月1日(日)14:00
■会場:シアタートラム(東京・三軒茶屋)