下北沢通信

中西理の下北沢通信

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果報プロデュース「あゆみ」@すみだパークシアター倉

果報プロデュース「あゆみ」@すみだパークシアター倉


岸田戯曲賞受賞作家の柴幸男(ままごと)の2大傑作である「わが星」と「あゆみ」だが、これまでの上演は対照的だった。「わが星」が初演からほぼ同じキャスト・演出により何度も再演されたのに対し「あゆみ」は再演ごとにまったく新たな演出、配役により上演され、柴自身の演出によるバージョンでも大きな変更が繰り返されてきた。
 そしてそれがこの作品の楽しみのひとつであるが、果報プロデュースでは後半部分が脚本自体を含めて大幅に変更が加えられて、観劇後の印象そのものがそれまでの上演とは違うものとなっていたことに驚かされた。
 「あゆみ」は生まれて死ぬまでの一生を「歩む」として歩くことに準えて、ひとりの女性が生まれてから死ぬまでを複数の俳優が次から次へと演じ継いでいくことで表現していく作品。複数の人間が同じ人間を演じることで、役と俳優の1対1対応をなくし、そのことで観客それぞれの実体験から喚起される想像力を呼び起こすという仕掛けであり、だれがどの役のどの部分を演じるということが決定的な重要性を持たないようにしている。

2022年9月28日(水)~10月2日(日)
東京都 すみだパークシアター倉

作・演出:柴幸男
出演:石森美咲、稲田ひかる、井上みなみ、小口ふみか、田久保柚香、橘花梨、山本沙羅 / 前田綾