下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ももクロで見てみたい! 思わず配役を考えた 梶裕貴・福原遥・佐倉綾音回を配信アーカイブで観た 新海誠×三浦直之(ロロ) 恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』@ヒューリックホール東京(配信)

新海誠×三浦直之(ロロ) 恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』@ヒューリックホール東京(配信)

PARCO劇場プロデュースに「ラヴ・レターズ ~LOVE LETTERS~」という舞台作品がある。A.R.ガーニー原作の「ラヴ・レターズ ~LOVE LETTERS~」は1989年にニューヨークで初演。大きな話題を呼び、その後1990年にパルコ劇場で日本初演。以後、ほぼ毎年現在に至るまで公演が続いている人気演目だ。二人芝居だが毎日キャストが交代し、アンディとメリッサの50年にわたる手紙のやり取りを朗読していくというものだ。この舞台はけっこう好きで、いくつかの組み合わせの上演を複数回観劇したことがある。
秒速5センチメートル」という舞台は新海誠のアニメ作品が原作で「ラヴ・レターズ ~LOVE LETTERS~」を連想したのはこちらは5人の出演者だが、冒頭部分と最後の部分が書簡となっていて、手紙によるやりとりを朗読劇で表現しているからだ。三幕構成だが、同じ俳優によって演じられる役が、各幕の間に何年もの年月が経過していて、その間に登場人物も少年少女から大人に変貌しているのも、演技だけで表現する必要があることなどの共通点がある。
 「秒速5センチメートル」は書簡演劇ではないのだけれど、ほとんどのテキストが手紙(出さなかった手紙も含めて)と登場人物のモノローグからなっている。会話だけで構成されたテキストと比べて朗読劇との親和性はきわめて高い。原作自体の構成もあるが、三浦の作劇もきわめて巧みだ。
 主要キャストの3人は日替わりに近い複数キャストとなっていて、キャストによって異なる味わいが楽しめることも共通している。実際に劇場で観劇した回は入野自由桜井玲香田村芽実の組み合わせであったが、すべての回を有料でアーカイブ公開しているため、別のキャストでの舞台も見たくなり梶裕貴梶裕貴佐倉綾音による回も見てみることにした。
 最初の印象はキャストによってイメージはずいぶん変わるものなんだなということだった。興味深く思ったのは実際に観劇した回はアイドル出身のそれほど舞台経験のないと思われるキャスティングによるもので、今回見たのは梶裕貴福原遥という演技派で知られる声優・俳優が中心の座組み。そうでありながら、原作のアニメ作品に近い印象を受けたのは明らかに前者の舞台なのだった。
 おそらく、他の2・5次元演劇と異なり、三浦直之によるこの舞台の演出はアニメの原作に寄せるための演出はしていないのではないかと思う。それぞれの役柄にどの程度没入して演じるのかというアプローチが違ってみえた。これは演技にロロ的な余白のある舞台作品の観客の観劇の頻度によっても受け取る印象は変わってくるかもしれない。
 それというのはおそらく従来の演技に気持ちが入っていて感情表現が豊かなのが「いい演技」という基準での比較ではほぼ確実に梶裕貴福原遥佐倉綾音組に軍配が上がると思われるからだ。泣くシーンなどが典型的で分かりやすいが、梶裕貴福原遥の演技は感情表現がうまいと感じる。対して入野自由桜井玲香田村芽実はそこまで分かりやすい表現ではない。特に桜井の場合は経験値の問題からそこまで際立ったような感情表現が出来ていなかった可能性も排除できない。ところが、三浦演出の舞台はリアリズムではないと以前に書いたが、そういうはっきりした表現がない余白による観客の想像力への喚起の力はこの舞台に関する限りは効果的であった。
 とはいえ、それには条件があってそれは私がそうした想像力を喚起する類の演劇(現代演劇においてチェルフィッチュ以降の演劇ではそうした傾向が顕著だ)に慣れ親しんでいるとともにアニメ『秒速5センチメートル』を見たことがあったからかもしれない。
 つまり、そうではない観客には梶裕貴福原遥の方が分かりやすいし、普通の意味でイメージを喚起する力は強いのだろうとも思う。つまり、私がこの上演に感じた違和感の正体はこちらの方が映画を離れて、演者自身のイメージを強く打ち出した演技をしているためにこちらが主としてアニメ映画を介してこの作品に持っていたイメージとのズレがそこここに健在したからかもしれないと思った。
 この作品に対する三浦直之のアプローチは余白の部分を残したような演出を演者につけたうえで、そこから演者それぞれがそこにどのようなものを付け加えていくのかについては演者の範疇。つまり、どちらでもいい、ということなんだろうと思う。
 最後に私はももいろクローバーZのファンだからこの舞台を見ていて、恋を読むvol.3特別編として、ぜひ一度ももクロのメンバーが演じたこの舞台が見てみたいと思った。東宝×スターダストプラネットの企画として、ももクロの4人が日替わりで篠原明里役を演じて、スタプラの後輩が澄田花苗役を演じる舞台なら確実に東宝宝塚劇場を1カ月埋める動員が見込めるはずだが、どうでしょう東宝さん。
 ちなみに単なる遊びではあるけれど、私が考える仮想キャストを挙げておこう。キャストは明里、花苗、貴樹の順。

百田夏菜子 愛来(アメフラっシ) 尾上松也北村匠海
玉井詩織 清井咲希(たこやきレインボー) 志尊淳
高城れに 彩木咲良春名真依)(たこやきレインボー) 森崎ウィン 
佐々木彩夏 三田美吹(CROWNPOP) 横浜流星

松也と志尊淳以外は全員スターダストだからキャスティングしようと思ったら不可能ではないだろう。とはいえ、男優は普通にやると特に夏菜子のところなどは忖度が働いて、ムロツヨシとかマギーとかそういう人でお茶を濁すことになりがちなので、ガチの演劇ファンである私には面白くないので、若干の関係性があり、それゆえにモノノフ界隈がざわつきそうな相手をあえて選んだ。忖度なしに選ぶとスタダからなら北村匠海かな。その回はチケット争奪戦メチャクチャなことになりそうだけれど。たこ虹の彩木咲良は舞台経験もあるから、体調のことは分かっているけど、敢えてここに入れた。無理しないで頑張ってほしい*1

梶裕貴
遠野貴樹役

初めて「秒速」と出会った時の感動と衝撃は、ずっと忘れられません。一人の人間として、男として、僕に大切なことを教えてくれた作品です。原作を大切にしつつ…恩返しの気持ちを込めて、遠野貴樹を丁寧に演じさせていただきたいと思っています。

福原遥
篠原明里 役

三浦直之さんとまたご一緒でき、そしてまさか大好きな新海誠さんの作品で、あの舞台に立てるなんて。とお話を聞いた時は、とてもとても嬉しかったのを覚えています!あのお客様と一つになれる温かい空間が私はたまらなく好きで、いつかまたやりたい!とずっと思っていたので今から楽しみでしかたありません!一言一言を大切に、思いを乗せて皆さんに届けられたらと思います。是非、劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです

佐倉綾音
澄田花苗 役

*1:先ほど安本彩花さんの病気のことを知り、かなり愕然としています。