下北沢通信

中西理の下北沢通信

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高城れに主演×三浦直之作演出 パルコ・プロデュース2024『最高の家出』@紀伊国屋ホール

パルコ・プロデュース2024『最高の家出』高城れに主演×三浦直之作演出@紀伊国屋ホール



 私は演劇評論家であり、ももいろクローバーZのファンでもあるけれど、演劇の作り手として評価し続けてきた作家*1ももクロのメンバーと演劇作品でタッグを組むということになればそれは特別な出来事であることは間違いない。今回の高城れに主演×三浦直之作演出はまさにそれにあたるわけだが、こういうことは平田オリザとタッグを組んでの『幕が上がる』プロジェクト以来のことだといってもいい。
 高城れにと三浦直之、そしてももクロとロロ 。それぞれがこれまで紡いできた世界が見事にシンクロした作品となっている。そして演劇と東日本大震災の交点にある作品であるという意味で平田オリザ作の舞台版「幕が上がる」とも通底する世界といえるかもいれない。
 もちろん、三浦と平田では作品の構えは大きく異なる。例えば「幕が上がる」では劇中劇として「銀河鉄道の夜」が登場するという意味でのファンタジー要素はあったが、作品そのものはリアルなタッチの群像会話劇であるのに対し、同じく会話劇ではあるけれど『最高の家出』はそこで劇を演じ続けている劇場で起こる出来事という極めてファンタジー味が強い世界での出来事として演じられている。
 前半部分はこの不思議な劇場世界に偶然迷い込んでしまった高城れに演じる立花箒が舞台上に作られた“模造街”という架空の町で役を演じることになり、演劇という馴れない行為に突然無理やり投げ入れられることで悪戦苦闘するさまが演じられる。ただ、この“模造街”で行われる「演劇」は「幕が上がる」における「銀河鉄道の夜」のようにリアルな「演劇」というわけではない。ここに入ったら最後出ることはできないという閉鎖空間的な設定はこの世界には「ループ」のような現象が存在するという劇中での示唆から押井守による『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』での友引町やアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』における「エンドレスエイト」のような趣向を連想させるし、観客の脳裏に次第に「なぜここにこんな変な空間が存在しているのか」という疑問が生まれてくるのだ。



















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結婚生活に疑問を感じ、家出をした立花箒(高城れに)。道中、無一文になり途方に暮れていたところ、出会った藤沢港(東島京)に「住み込みの働き手を探している劇場がある」と聞き、劇場を訪れる。そこで与えられたのは、舞台上に作られた“模造街”で、ある役を演じる仕事だった。舞台上と舞台裏、それぞれの“家出”が重なり合って生まれる、ファンタスティック迷走ストーリー!

作・演出:三浦直之(ロロ)
出演:高城れにももいろクローバーZ) 祷キララ 東島京 板橋駿谷 亀島一徳 篠崎大悟 島田桃子 重岡漠 尾上寛之
公演日程:2024年2月4日(日)~2024年2月24日(土)

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