下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

沖縄やくざ同士の抗争 沖縄返還交渉と並行して描く 流山児★事務所公演 Okinawa 二部作 1945⇔1972「OKINAWA1972」@ 下北沢 ザ・スズナリ

流山児★事務所公演 Okinawa 二部作 1945⇔1972「OKINAWA1972」@ 下北沢 ザ・スズナリ


流山児★事務所公演 Okinawa 二部作 1945⇔1972「OKINAWA1972」@ 下北沢ザ・スズナリを観劇。1972年の沖縄の本土復帰を前に内地のやくざの沖縄進出を恐れながらも互いに抗争を続ける沖縄やくざ*1の群像と返還交渉に臨む佐藤栄作首相(塩野谷正幸)とその補佐役の大学教授(国際政治学者の若泉敬氏がモデル)による返還交渉の動静が交互に描かれている。
 昨年が沖縄復帰50年という記念の年だったこともあってか、劇団チョコレートケーキによる戦争劇の新作『ガマ』*2や畑澤聖悟が脚本を担当した『hana-1970、コザが燃えた日-』*3など沖縄の歴史をモチーフとした演劇が上演される機会も増えてきているが、流山児★事務所公演 Okinawa 二部作 1945⇔1972もそうした企画の一環と思われる。
 二部作のうちまず「OKINAWA1972」を見ることにした。物語はこうした動きに潜む裏側の詳細を綿密に掘り下げるというよりは沖縄版「仁義なき戦い」とでもいうべき娯楽活劇に徹していて、面白く見られるし、今まであまり知らなかった沖縄のやくざの歴史を知ることができるという意味では興味深かったが、歴史劇という風に考えると事実関係の表層にとどまっているのではないかという印象は否めなかったかもしれない。
 ただ、終演後冷静になって考えてみたら、最近は若手の作家、演出家による社会的な意識の高い作品群も多いため、いくぶん勘違いもしていたが流山児★事務所は劇団チョコレートケーキや渡辺源四郎商店ではない。
 流山児祥ら大の大人が嬉々としてやくざ役を演じていて、そしてそれがとんでもなく楽しそうなのがここの持ち味で、だから先に述べたようなことは「余計なお世話」なのかもしれない。

作・演出 詩森ろば
会場: 下北沢 ザ・スズナリ

出演:塩野谷正幸、流山児祥、伊藤弘子、上田和弘、甲津拓平、里美和彦、山下直哉、 荒木理恵、五島三四郎、竹本優希、本間隆斗、山川美優、 龍昇、流山児祥 / かんのひとみ、杉木隆幸、浅倉洋介、 三上陽永、福井夏、工藤孝生
◆スタッフ◆
作・演出・衣装:詩森ろば(serial number)
音楽:鈴木光介(時々自動)
舞台美術:杉山至(鴉屋)
照明:榊美香(アイズ)
音響:青木タクヘイ(ステージオフィス)
舞台監督:土居歩
演出助手:三上陽永、伊藤弘子、鈴木麻理、荒木理恵、竹本優希 
舞台監督助手:甲津拓平、里美和彦、
山下直哉、五島三四郎、春はるか、
本間隆斗、山川美優
殺陣:上田和弘 
方言指導:新納多朗
宣伝美術:江利山浩二(KINGS ROAD)
舞台写真:横田敦史
制作:岡島哲也(合同会社ヨルノハテ)、
米山恭子
芸術監督:流山児祥