下北沢通信

中西理の下北沢通信

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劇団1980「ある時間」@下高井戸HTSスタジオ

劇団1980「ある時間」@下高井戸HTSスタジオ


死刑囚が刑を執行される直前、唯一面会が許されるのが、教誨師(きょうかいし)。通常、執行が告げられた死刑囚は教誨室へと向かう。ここで死刑囚は教誨師から言葉をかけられ、教誨を受けることができる。
「ある時間」で描かれるのは銀行強盗を企て失敗し人を殺してしまった死刑囚と教誨師との対話。極限状況に置かれた人間の様相をゼロ時間(刑の執行時間)に向けて進んでいく時間の流れにおいて描いていく。
時間刻みで訪れる自らの死を迎えることの恐ろしさが当事者により訴えられることで、この作品には死刑制度批判の側面があるのだろうということは否定できないが、この舞台が不可解なのはそれだけでは説明がつかないような要素がいろいろ含まれていることだ。
 死刑囚だけではなく教誨師にも問題があって、かつての死刑囚の未亡人と不倫関係にあり、それが結果として刃傷沙汰になるような出来事を引き起こすという「未来図」が語られるのだが、死刑制度に切り込むような意図があるのではあればこういう設定がなぜ必要だったかは意味不明なところがあった。演劇公演として考えると妻役の伊藤弘子と未亡人役の辻しのぶの演技には迫力があって見どころがあるのは確かだったのであるが……。

劇作・演出家藤田傳(ふじたでん/1932?2014/劇団1980主宰者)が1965年、俳優小劇場に書き下ろした「ある時間」(同年12月、紀伊國屋ホールで上演)。
日本劇団協議会主催「日本の演劇人を育てるプロジェクト」として、劇団1980神原弘之が演出を担い、若き時代の藤田傳が書いた戯曲を果敢に再構築。各方面で活躍中のキャストが集結し、半世紀の時間を経て現代に挑む「ある時間」。

作■藤田 傳
演出■神原弘之
出演■
 山口馬木也
 佐藤リョースケ
 高木 稟 
 寺中寿之
 山下直哉

 伊藤弘子
 辻しのぶ
装置・衣裳■佐々波雅子
照明■増子顕一
(株式会社ステージ・ライティング・スタッフ)
音響■齋藤美佐男
音楽■諏訪 創
舞台監督■西條義将
写真■宮内 勝
記録撮影■コラボニクス
制作協力■劇団1980
プロデューサー■上野裕子

協力
有限会社劇団イチキュウハチマル
株式会社HTS
有限会社SHIN ENTERTAINMENT
流山児★事務所
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