下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

ルサンチカ「TOKYO PIPE DREAM LAND」@アトリエ春風舎

ルサンチカ「TOKYO PIPE DREAM LAND」@アトリエ春風舎


前作『殺意(ストリップショウ)』のレビューで好舞台としながらも「予想外に普通のストレートプレイだったため面食らったというのが正直なところ」*1と書いたのだけれど、ルサンチカ「TOKYO PIPE DREAM LAND」はこの集団について当初考えていた作風に近く、集団としての表現の幅というのはあるとしても持ち味の本線というのはこちらの方なのであろう。
 出演者それぞれの出してきた東京についてのインタビューの回答をコラージュのように組み合わせて構成している。ひと時代前の作家であれば都市論であったり、フィリップ・K・ディックが描き出すようなディストピアとかにつながっていきそうなところが、冒頭で流れるエレクトリカルパレードのテーマやジャクソン5の楽曲のようにまるでテーマパークのように軽やかに提示されていくのが、面白い。
 ルサンチカのやっていることは原作(原戯曲)ありの舞台とドキュメントの要素を強く含んだ構成舞台の2本立てという意味では東京デスロックなどに近しいと言えなくもないし、そういう系譜の集団と言っていいと思うのだが、この「TOKYO PIPE DREAM LAND」などを見てみると提供される作品のテイストはかなり異なり、この舞台は内容といい、音楽使用のやり方といいテーマパーク的なエンタメ性を強く感じた。その分、表層的、あるいは場合によっては軽薄に感じられる部分がないではないが、そういうことも含めて集団の持ち味なのだろうと思った。

構成・演出:河井朗
多くの人々が国内外から「東京」へと夢を追いかけてきている。生活してみると見えてくる「TOKYO」の現実。日々をこなせるようになってしまった私が、初心に立ち帰るために夢を聞かせてもらおうと考えました。東京に抱いていた夢、夢のための東京、東京で叶えた夢、東京で失った夢、様々な夢を舞台上に配置することにより、私たちによる私たちのための「TOKYO」を作る。何者になれたかもしれないし、なれなかったかもしれない私たちが、ここにいたことを残すために上演を行います。


ルサンチカ
河井朗が主宰、演出する実演芸術を制作するカンパニー。
ここ近年は年齢職業問わずインタヴューを継続的に行い、それをコラージュしたものをテキストとして扱い上演を行う。
そのほかにも既成戯曲、小説などのテキストを使用して現代と過去に存在するモラルと、取材した当事者たちの真実と事実を織り交ぜ、実際にある現実を再構築することを目指す。




出演
井浦サヨナラ、沢栁優大、中條玲、御厨亮

スタッフ
ドラマトゥルク:蒼乃まを
照明:黒太剛亮
制作:黒澤たける
制作協力:半澤裕彦
記録:manami tanaka