下北沢通信

中西理の下北沢通信

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アメフラっシ「MICHI」「BAD GIRL」の楽曲分析記事

アメフラっシ「MICHI」「BAD GIRL」の楽曲分析記事


アメフラっシ ’MICHI’ Music Video

アメフラっシ ’BAD GIRL’ Music Video

アメフラっシ MICHI&BAD GIRL Music Video Making
 「偶像音楽 斯斯然然」というサイト*1の最新記事にアメフラっシ「MICHI」「BAD GIRL」の詳しい楽曲分析の記事が掲載された。実はこの2つの楽曲、とりわけ「BAD GIRL」についてはコメント欄に「韓流っぽい」「そうじゃない。洋楽的だ」などという論評が相次いで書かれた。私もこの時のコメントで特に「韓国アイドルの二番煎じ的で嫌だ」などの意見について納得ができず、どこが韓国アイドル風なのかについて意見を求めた。何人かの意見がツイッターなどで届いて私なりの評価はなんとなく定まったものの、音楽の専門家による分析が知りたかったところで、この記事が現れたのだった。
 この「偶像音楽 斯斯然然」というサイト実はアメフラっシの前曲「メタモルフォーズ」についても好意的な評価で詳細な分析を掲載しており、アメフラっシの楽曲を考察していくうえで非常に参考になる部分が多かった。その時の記事についてはこのブログの過去の記事でも紹介した*2。その時の筆者の評価では「メタモルフォーズ」を「見事なまでにEDMのお手本中のお手本のような楽曲」としており、それが脳裏にあったのでコメント欄などでこの新曲に寄せられていた韓流とかEDMという説明に飽き足らなかったのだ。その時考えたことはこちらに書いた*3のだが、その後、ツイッターなどでの情報交換で分かってきたのはK-POPは洋楽のフォーマットで楽曲を作っているから音楽的にはK-POPと洋楽には区別がないこと。だから、日本人にそれがK-POPと聞こえるのは英語のフォーマットで日本語の歌詞をつけていったものがK-POPなのだから、洋楽は通常英語で歌っているから違って聞こえるが両社に違いはないのではないこと。だから、K-POPか洋楽かという問い自体が意味がないものだということだ。
 そのあたりを「偶像音楽」はこのように説明している。

オリエンタルな旋律、語尾がキュッとしまるメロディ処理、フックのように入るラップ、ドロップ混じりのサビ……。楽曲の構成要素1つひとつから感じるものは、韓国からアメリカで昇華された世界的トレンドのポップミュージックの王道感である。日本でこの手のダンスチューンをやっているグループは珍しくはないが、多くもない。しかしながらこの「BAD GIRL」の特筆すべきところは、アイドルポップスとしての常套手段である“歌い上げ”要素をあえて入れないことで、より洋楽的な風格を放っている点である。
こうした海外トレンドを意識したアイドルソングをこれまで何曲も紹介してきたが、大抵の場合、落ちサビ、Cメロ、Dメロが存在している。サビらしいサビがない楽曲であるために、“J-POPらしいわかりやすさ=盛り上がり(歌い上げ)”を作るのである。だが、「BAD GIRL」にはそれが存在していない。

 つまり、「メタモルフォーズ」ではEDMを援用したアイドル楽曲ではなく、本格的なEDM楽曲としたように他のアイドルグループにも取り入れられた海外トレンドよりも「韓国からアメリカで昇華された世界的トレンドのポップミュージックの王道感」という評価がここではなされているのだ。
 一方でもう1曲の「MICHI」はこんな風に解説されている。

 どこかアメリカングラフティなオールディーズの雰囲気を嗅ぐわす良質ポップ。パッと聴いた時の耳馴染みのよさがあるのに、よく耳をすましてみればわかりやすいメロディとは言いがたい不思議な旋律。音の起伏が大きいわけではないし、淡々としていてサビでガツっといく構成というわけではないのも、今どきのポップスのトレンドを感じさせるところ。
小気味よいリズムにクールなようで精確かつ堅実的なボーカルが乗る。クラビネット風のサウンドになんだか古き良きアメリカを感じる一方で、ふと風が差し込んでくるようなストリングスにものすごくJ-POP、いや、なんだか懐かしいような歌謡ショー的な匂いを感じるのである。メロディもリズムも展開的には大きく変わっていないのに、この不思議な感覚はなんぞ? MVによる視覚効果も相まって、日米のレトロとモダンが共存するなんとも中毒性の高い楽曲である。

 つまり、両者はかなり音楽性の違う楽曲であり、「メタモルフォーズ」もまた違うジャンルの楽曲なのではないかということが分かってくるわけだ。ここまで来ると「MICHI」も「BAD GIRL」もどちらも確かにダンスミュージックではあるからEDMだと言っていた人もいたし、どちらも洋楽的な構成で歌唱にオートチューンが入るようなアレンジからK-POPの亜流だと断じている人もいたが、そんな単純なものではないのではないかということが分かってくるわけだ。
 実はこの2曲を紹介したうえで、その後に著者は最近の世界的なポップミュージックの顕著なトレンドのひとつとして曲の短さを挙げる。そして、アメフラっシのこの2曲は曲の長さが3分20秒前後とその特徴を見事に踏襲している*4

・メロディが弱く、リズムも単調で印象に残りづらい
・物足りなさを感じる楽曲の長さ

→結果的に、何度もくり返し聴いてしまう

といった、一見マイナスに思えることを逆手に取ったプロダクトが流行っている。一聴めからインパクトを与えて音源を買ってもらう時代から、何度もくり返し聴きたくなるようなストリーミング特化の時代への表れ、ともいえるだろう。

 実はこの部分が一番盲点であった部分でもあった。というのはこういう特徴はそれこそももクロが流通させたといっても過言ではない1曲の中に何曲もの曲想が含まれるような複雑な構成、それゆえに非常に長い楽曲の尺。
 ももクロの妹分と呼ばれているが、最近のアメフラっシの戦略はももクロとは大きく違うということが浮かび上がってくるからである。

*1:「偶像音楽 斯斯然然」 popnroll.tv

*2:simokitazawa.hatenablog.com

*3:simokitazawa.hatenablog.com

*4:「メタモルフォーズ」は当てはまらず4分台。