下北沢通信

中西理の下北沢通信

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「パワハラ」問題 谷賢一と劇作家協会の瀬戸山美咲が全面的に対立

パワハラ」問題 谷賢一と劇作家協会の瀬戸山美咲が全面的に対立

劇作家協会における「パワハラ」問題について谷賢一が出した声明を劇作家協会の瀬戸山美咲が「被害者の方へのさらなる加害となるこの声明を出すことを止められなかったことを後悔しています」などと全面的に批判。これに対して、谷賢一が「『声や意見を無視した』という書き方は悪意のある誤謬」と反論、全面的に対立状態に入ったようだ。谷、瀬戸山の両氏とも実際に起こった事件などの取材を基に演劇にする手腕に定評があり、私自身も劇作家としての高い評価をしている劇作家同士の対立であるため、今後の展開も注視したい。


この問題について前回書いた文章で「演劇の稽古の場でのパワハラ行為があったと誤解させた日本劇作家協会の謝罪文は明らかにおかしい。谷賢一氏の名前を伏せることで二重に谷氏の名誉を棄損していたとも感じる。なんらかの釈明があってしかるべきではないかと思う」と書いたが、瀬戸山はそのことをいっさい問題と思っていないどころか、「ハラスメント被害者に全面的に寄り添う」「(谷氏は)認知に歪みがある」*1などとして、谷の主張を完全に否定しているだけではなく、谷の声明の内容を受けてこの問題の問題点を探ろうとしている人間(私もその中のひとりに入るのだろう)も「被害者への二次被害を助長する行為」と決めつけているようだ。

私自身はWSも公開したアーカイブ映像も見ていないので何とも判断がつかないが、上記ツイートに続く一連のツイートを見てみると問題はハラスメントとされた当該のやりとりに対してかなり根本的な認識の違いがあると思う。


いずれにせよ上記のやりとりの最大の問題は瀬戸山がどういう立場で発言しているのかがあいまいであることだ。彼女の発言も劇作家協会の総意に基づくものなのかどうか。どうも、私には彼女は被害者に寄り添うあまりにこの問題への見方が被害者と一体化して客観性を欠いているようにも見えてしまう*2
唯一双方が認める着地点はそれがハラスメントの客観的な条件に該当するのかどうかを第三者の機関を交えて判断してもらうということになるようだ。ただ、そうなると谷はこれまで一定の配慮をしていたと思われるハラスメント被害者とされている人に対して全面的な糾弾をせざるをえないということになってしまい、どちらにとってもよくない結果になるとも思うのだが……。

これまでの経緯
simokitazawa.hatenablog.com
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*1:認知の歪みなどという言葉をここで使うのは谷の劇作家としての資質そのものに疑問を投げかけるものだ。むしろ、これは瀬戸山の劇作家としての資質に疑念を抱かせることにならないか。谷が反発するのは当然だ。

*2:これは完全に誤解で後から入手した情報によれば福島の放射能問題については被害者の意見に賛同している人は劇作家協会内部にはいないようだ。