下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

ももクロ あーりん(佐々木彩夏)主催 =LOVE、カミングフレーバー 、STU48らが出演の「AYAKARNIVAL 2020」ニコニコで独占生中継

「AYAKARNIVAL 2020」@ニコニコ生放送(TACHIKAWA STAGE GARDEN)

「AYAKARNIVAL 2019」は現地参戦ができたが、当時無名だったSKE48の若手ユニット「カミングフレーバー」の大健闘もあり、予期した以上に良質なアイドルイベントとなった。司会とコラボに徹するかと思われたあーりん(佐々木彩夏)も他のグループと同じ時間(50分)のソロライブをがっつりと行い若いアイドルたちにトップアイドルの到達点をはっきりと見せつけた感もあり、参加アイドルのファンにとってもももクロファンにとっても評判のイベントになったのである。
今年はどこが参加するのかと考えていたのだが、=LOVE、カミングフレーバー、EMPiREに加えて、新たに2グループ(アップアップガールズ(2)、STU)が参加。しかもコロナ禍で換気性のよさを勘案して会場にフルキャパでも2500人のTACHIKAWA STAGE GARDENを選び、感染対策から人数を絞り込んでの開催となった。
以下それぞれのグループの熱心なファンというわけではないのでいささか大雑把なものにあるが、全体を通しての感想を少し書きたい。
昨年と引き続き参加のグループが3組あったのだが、わずか1年という短いスパンであっても格段の進歩を感じさせたのが、アイドルの醍醐味だろうか。中でも著しい成長に驚かされたのが、カミングフレーバーだった。昨年は発足して間もなくのSKEの若手新生ユニットで持ち曲もオリジナルは1曲しかないというのが前情報としてあったので、本番で見たパフォーマンスが特にダンスのスキルが高く、群舞もそろっていて、たくさん練習したんだろうなという思いも含めて、思わず胸をざわつかせるものがあった。ただ、仕方ないことでは歌は生歌で頑張っていて、前年は被せだったことからするとその進歩の具合に感心させられはしたものの、他のほとんどのグループがそれぞれのソロ歌唱部分がかなりあるのに対し、カミングフレーバーはユニゾンでの歌唱。SKEの楽曲がもともとそういう風に作られているということはあっても、歌の面では他のグループと比較してしまうと少し物足りなく感じられることは否定できなかった。
一方で=LOVE(イコラブ)は大御所感と言ったら言い過ぎかも知れないがこの1年で明らかにアイドルとしての存在感が大幅にアップしたように感じた。

佐々木彩夏(あーりん)
OP.サボテンとリボン
1.ハッピースイートバースデー
2.あーりんはあーりん
3.キューティーハニー
4.だってあーりんなんだもん
5.空でも虹でも星でもない

カミングフレーバー
M01 制服を脱ぎたくなって来た / ☆大谷悠妃
M02 君のいない世界 / ☆野村実代
M03 恋の根拠 / ☆平田詩奈
M04 ホライズン / ☆青海ひな乃、野村実代

MC

M05 せ〜ので言おうぜ! / ☆野村実代
M06 恋を語る詩人になれなくて / ☆野村実代

MC / 佐々木彩夏登場
M07 未来とは? / 佐々木彩夏とコラボ

アップアップガール(2 )

どのみちハッピー!
https://youtu.be/0WnHm6gdecw

世界で一番かわいいアイドル
https://youtu.be/5f83jdCCsYQ

ワッチャウ!!
https://youtu.be/-yFdUiY25u4

【新曲】強がりライライライ

雨に唄えば
https://youtu.be/7Tb24ANx7OU

Be Lonely together

=LOVE
f:id:simokitazawa:20201217234608j:plain

出演:
佐々木彩夏 / アップアップガールズ(2) / =LOVE / STU48 / EMPiRE / カミングフレーバー (五十音順)
STU48出演メンバー:岩田陽菜、大谷満理奈、門脇実優菜、中村舞、福田朱里、薮下楓
カミングフレーバー :青海ひな乃、赤堀君江、大谷悠妃、鈴木愛菜、田辺美月、中野愛理、西満里奈、野村実代、平田詩奈

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20201212 門脇実優菜 showroom【本日「AYAKARNIVAL 2020」】

シベリア少女鉄道 vol.33『メモリー×メモリー』(2回目) @草月ホール

シベリア少女鉄道 vol.33『メモリー×メモリー』(2回目) @草月ホール

2回目の観劇。私の観劇レビューは基本的にはネタバレ上等なのだが、シベリア少女鉄道については配慮せざるを得ない。ということになると書けることは「りったんかわいかった、小関えりこキュートだった」ということに限られてしまうのだ。何年も前からこのシベリア少女鉄道は美人女優やアイドル風の容姿を持つ可愛い系女優が歴代出演していることでも知られているが、観客も感想でネタバレできないとついつい「〇〇ちゃん可愛い」などと書いてしまいがちなので、実は女優にとってもおいしい劇団なのかもしれない。
もっともそれは今回出演した中山莉子をはじめ、実際に可愛かったという事実が前提なので、論は証拠に浅見紘至(デス電所)らレギュラー陣となっている男優たちのことで「かっこよかった」「男前だった」などと容姿を評する感想を一度も目にしたことがないのである。

作・演出
 土屋亮一


出演
 中山莉子私立恵比寿中学
 小関えりか
 川井檸檬
 加藤雅人(ラブリーヨーヨー)
 浅見紘至(デス電所
 土田有未(ナカゴー)
 風間さなえ

 濱野ゆき子

 中山裕康


 ほか




声の出演

 小野賢章


日程2020年12月9日(水)〜13日(日) 全8ステージ+配信

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かまどキッチン マグカルシアター2020における上演「人人人人人←根を張って聳える杉っぽい」@配信

かまどキッチン マグカルシアター2020における上演「人人人人人←根を張って聳える杉っぽい」@配信

かまどキッチンの舞台を見るのはこれが2回目となるはずだったが、コロナ禍により上演予定だった公演が中止に。無観客での上演配信を見た。前回見た公演*1では町のいろんな要素を擬人化して演じたが、今回は杉を擬人化して演じてみせる。ただ、いろいろな舞台美術を劇場いっぱいに展開し箱庭的な空間を演出した前作から一転して、白い線で区切られた長方形がアクティングエリアで、開幕ベルのような音響が鳴ると同時に三人の女優がスローモーションで歩いて登場するダンス的なシーンから舞台ははじまる。
とはいえ、定位置に着いてからは普通に会話を交わし始め、会社の同僚の会話のような場面となるのだが、その内容は少しおかしくて、花粉の発生量にノルマがあるが、ノルマ達成は難しいとか変な会話を聞いていくうちに杉のことを擬人化した物語であることが分かってくる。
 当初予定されていた「人人人人人←波打って流れる川っぽい/人人人人人←根を張って聳える杉っぽい」からするともともとは川の話と杉の話の2本立てだったのを杉の話だけを取り出して上演することにしたようだ。
 人間以外の存在の擬人化というのはちょっとこれまでに見たことがないようなスタイルであり、へんてこで面白くはあるのだが、今回の「杉の話」に関して言えばなぜこれを主題にしたのかというのがピンとはこないというのが正直なところだ。身体所作にはダンスと考えても面白いところがあり、前作よりもパフォーマンス寄りの表現に見えたが、今後どのような地点に着地していくかが楽しみだ。

公開期限は12月11日。
かまどキッチンはこの度の新型コロナウイルス感染拡大を受け、マグカルシアター2020における公演「人人人人人←波打って流れる川っぽい/人人人人人←根を張って聳える杉っぽい」の公演中止、そして上演予定だった二作中の一作「人人人人人←根を張って聳える杉っぽい」の内容を変更しインターネット上で公開することを決定しました。

この度の判断に関して、主宰二名によるコメントをこちらにて公開しています。今回の決定に至った経緯や判断理由について詳しく記しています。
かまどキッチンnote – マグカルシアター2020における公演中止と映像配信実施のおしらせ

以下、今後の作品公開スケジュールと概要になります。

また実施予定であった黒澤たける氏と能祖將夫氏を招いてのトーク企画ですが、どなたでもご覧いらだけるよう形態を変更し実施する方向で調整しています。後日の情報公開をお待ちください。

#かまどキッチン マグカルシアター2020における上演「人人人人人←根を張って聳える杉っぽい」

12/4(金)より一週間限定でYouTube上にて公開します。

とき:12/4(金)21:00から12/11(金)24:00まで
場所:かまどキッチンYouTube channel(一般公開動画として公開)
チケット料金:カンパ制
※ 公開にあたりお客様向けにカンパを募っております。作品は公開動画として期間中何度もご視聴いただくことができます。カンパの支払先は下記よりご確認ください。
カンパのお支払い先について

作演出:児玉健吾
出演:
石原朋香
浦田すみれ
波多野伶奈
音楽:坂田機械(かまどキッチン)
ドラマトゥルク:佃直哉(かまどキッチン)
演出助手:大野創(浮遊のカンキ船)
舞台監督:河井朗(ルサンチカ)
照明:松田桂一
音響:おにぎり海人(かまどキッチン)
記録映像:オカザキマコト
宣伝協力:こばやし帝国
イラスト:坂田機械(かまどキッチン)
制作:かまどキッチン
制作協力:黒澤たける(ゆうめい)
プロデュース:佃直哉(かまどキッチン)
かまどキッチン | official web – 劇団かまどキッチンのoffcial web サイトです。

青年団リンク キュイ「まだなにもはなしていないのに」Aキャスト(1回目)@こまばアゴラ劇場=公演中止

青年団リンク キュイ「まだなにもはなしていないのに」Aキャスト(1回目)@こまばアゴラ劇場=公演中止

予約募集を中断という告知からすでに予測されたことではあったが、 青年団リンク キュイが公演中止を発表した。今後ほかの演劇公演やライブ公演はどのような判断となっていくのだろうか。いまのところ、政府が非常事態宣言を意地でも出さないっぽいので、判断は分かれそうだが、この問題についてセンシティブな反応を続けてきた綾門優季がまず先陣をきってこういう判断を発表したのはかなり必然的なことだと思うが、青年団全体の判断はどうなるのだろうか。

12月10日より公演を予定しておりました青年団リンク キュイ『まだなにもはなしていないのに』につきまして、東京都での新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況を受け、カンパニー側の意向から、公演中止が決定いたしました。

以下、カンパニーからの告知です。

* * * * * *

2020年12月10日から初日を迎える予定としていた『まだなにもはなしていないのに』について、新型コロナウィルスの急速な感染拡大、東京都からの外出自粛要請を受け、座組内で協議の結果、公演中止を決断することとなりました。
すでにチケットを購入・予約いただいていた皆様には、公演直前に、突然このような形でご連絡することとなってしまい、誠に申し訳ありません。
映像配信や延期公演など、予定とは異なる形ではありますが、どうにかしてこの作品を届けるため、引き続き尽力する所存ですので、今はどうかお待ちください。

青年団リンク キュイ 綾門優季
https://cui99iuc.com/madananimo2020/
* * * * * *

今後の公演についても各団体毎に日程も状況も違いますので、新型コロナウイルス感染症対策分科会や政府からの情報等を元に、劇場とカンパニーでひとつひとつ判断していければと考えております。

また、こまばアゴラ劇場では、主催公演はもとより、提携公演、一般貸出公演についても上演団体からの劇場費・キャンセル料は一切取らず、政府・東京都などから出る自粛についての協力費・助成金などを、この損失補填に充てる方針です。
また、中止となった演目の延期による公演の受け入れや、支援会員の皆様に向けた映像配信等も検討しております。
一刻も早く事態が収束し、皆様を劇場に迎えられる日が来ることを願っております。

作:綾門優季青年団リンク キュイ) 演出:得地弘基(お布団/東京デスロック)


このたび、青年団リンク キュイ『ダイレクト/ネグレクト』を来年度8月に延期することになりました。苦渋の決断でした。感染リスクの問題や経済的な問題など、様々な理由が挙げられますが、「旗揚げ10周年記念に向けて、気合いが入りまくっていた去年の私が、過去最大級の長編を発表しようと目論んでいた」のがいちばんの大問題でした。タイムスリップして、去年の私を羽交い締めにしたいです。この状況で、目論みどおりの公演を行えるとはとても思えませんでした。演出の橋本さん、山内さんにまず相談し、その後にキャストのみなさま、スタッフのみなさまと慎重に話し合いを重ねましたが、最終的に延期の方向で一致しました。来年度8月までにコロナ禍が完全に収まっているとは捉えていませんが、戯曲を考え直し、座組を再編する充分な時間は残されています。首を長くして待ったかいがあった、と言ってもらえる公演になるよう、全力を尽くします。あと少しだけ、お待ちください。

さて、私にはもうひとつ、情報公開前に、ひっそりと延期にしていた新作公演がありました。それが今回発表する『まだなにもはなしていないのに』です。演出の得地さんに戯曲をみせ、使いたい劇場を決め、スタッフにオファーを始めた段階で、コロナ禍が私たちを襲いました。2020年3月のことでした。緊急事態宣言が発出される直前、私のほうから、企画を進めるのはもうやめようと提案し、得地さんも同意し、手元にはだれも声に出して読んでいない戯曲だけが残されました。このような形ではありますが、意外と早いタイミングで、危うく永久の眠りにつくところだった新作が世に出せることになって、感謝の気持ちでいっぱいです。この判断を受け入れてくださった平田オリザさま、こまばアゴラ劇場のみなさま、本当にありがとうございます。

なにがあっても部屋から出ないひきこもりの話なのですが、家にひきこもることがある意味で当たり前となった今、この作品の意味はすっかり変わってしまいました。去年から何故か、こんな内容の戯曲を書いていたというシュールな事実と共に、お楽しみください。

綾門優季

出演

【Aキャスト】和田華子(青年団)、森谷ふみ(ニッポンの河川)
【Bキャスト】緖沢麻友(お布団)、油井文寧

スタッフ

作:綾門優季青年団リンク キュイ)
演出・映像・宣伝美術:得地弘基(お布団/東京デスロック)
音響:梅原徹
照明:黒太剛亮(黒猿)
舞台監督:黒澤多生(青年団
舞台写真:三浦雨林(隣屋/青年団)、福本剛士
記録映像:三浦翔
WEB:犬飼勝哉
制作:黒澤たける(ゆうめい)
芸術総監督:平田オリザ
技術協力:蜂巣もも(アゴラ企画)
制作協力:曽根千智(アゴラ企画)<<

しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村!「ももクロ勢ぞろい フNs歌謡祭」第115夜@フジNEXT

しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村!「ももクロ勢ぞろい フNs歌謡祭」第115夜@フジNEXT

今回はゲストとしてももクロスターダストプラネットスタプラ)の後輩である秋本帆華(TEAM SHACHI)、堀くるみ(たこやきレインボー)、あいらもえか(愛来鈴木萌花=アメフラっシ)の4人が参加。その歌い手としての歌唱力の高さ、パフォーマーとしてのポテンシャルの高さを見せつけたのではないかと思う。
堀くるみについては司会などバラエティー能力の高さはももクロファンにも知られるようになってきたが、私は実はスタプラメンバーの中でもよく歌がうまいと取り上げられる柏木ひなたなどと並んでもっとも歌がうまいと考えている。たこ虹のパフォーマンスでもそれは感じられはする*1が、彼女がアンサンブルを重視して個性的なほかのメンバーのバランサーに徹しているためにそのポテンシャルは全開になることはあまりない*2
「セクシャルバイオレットNo.1 」は高城れに、「Romanticが止まらない」は鈴木萌花とのそれぞれデュエットであったが、抜群の安定力で相手の歌唱を引き立てるとともに原曲がパワフルな男性の歌唱であることも苦ともせずに対応し、ファンキーな持ち味も発揮して存在感を見せた。玉井詩織と共演した「東京ららばい」もよかったのではないか。
特に高城れにとのコンビはまったく質感の異なるボーカルのコンビネーションという意味で有安、高城の組み合わせの再来を思わせたもので、今後にも可能性を感じた。
とはいえ、この日もっとも印象に残ったのはあいらもえか。特に愛来のアイドルとしてのポテンシャルの高さである。
最近のあいらもえかの歌のうまさはいまさら指摘するほどのことでもなく、当然のこととなりつつあるが、改めて驚かされたのはポニーテール姿であーりんと歌った斎藤由貴の「卒業」。大昔のことだが、当時の斎藤由貴のアイドル力の凄さはいまでも鮮明に覚えている。

斉藤由貴 卒業
この歌では愛来はポニーテール姿にして斎藤由貴に寄せてきているが、注目すべきなのはこの時の斎藤由貴と現在の愛来がほぼ同じ年か、愛来の方が少しだけ若いということ。方向性はもちろん違うけれど、人を惹きつける魅力という意味では肉薄するものを感じた。アメフラっシがまだメジャーデビューしてないというので、運営を責める声がファンの一部にはあるが、息の長いタレントに育てるためには愛来を本格的に売り出すのは来年でも全然間に合うのではないかと思った。
あいらもえかによる「Temptation(誘惑)」(本田美奈子*3もよかった。これも本田が18歳の時の歌であり、松本隆筒美京平縛りとはいえ、松田聖子とかではないのはキャラ的に合う歌を意識してはいるとは思うけれど同年代の歌唱力のある昭和アイドルの曲をぶつけてきたことにはスタダ上層部にもPRしたいとのきくちPの狙いが感じられた。
 以前にももクロ以外の妹グループが大挙して出演した時にモノノフの一部が反発したのは「ももクロしか興味がない」という人たちが一定数以上いたことに加えて、ももクロの出番がその分減ってしまうというのがあったのだと思う。例年ならクリスマスシーズンのフォーク村はもうひとつの「ももいろクリスマス」の様相を呈して大物ゲストが集まるところだが今回はももクロ自身がゲスト扱いなのに加え、準レギュラー格のコアラモードを除けば完全な外部からのゲストは公開中の映画で夏菜子とつながりのある宍戸留美だけに絞りこんで、その分ももクロ側がゲストアーティストとして後輩たちに胸を貸すことになった。
 それでも音楽番組としてのクオリティーが一時期のフォーク村と大違いなのはももクロの歌唱力が向上、きわめて安定しているのに加えて、ここまで紹介してきたように以前のももクロと比べると後輩たちの歌唱力の水準が段違いに高いということにもあるかもしれない。
 特にあいらもえかなどは最近は道場でもある「ガチンコスターダストプラネット」では愛来が「ワダツミの木」や「あなたのキスを数えましょう -You were mine-」、萌花が中森明菜の「DESIRE -情熱-」と簡単には歌いこなせない難曲に挑戦させられており、相対的なものでもあろうが、フォーク村でこの日歌った歌などでは緊張はあるとしても余裕も感じられた。
 この日のハイライトは少年隊の衣装を着て、あーりんとあいらもえかが歌った「stripe blue」だろうか。衣装は「どうなのか」と思うところもないではないのだけれど歌とダンスはさすがのものがあり、特にダンスは振り写しが当日トタだったらしいから、凄いとしか言いようがない。ジャニーズ曲はももたまいの二人でというのがこれまでの定番だったが、浪江女子発組合のメンバーでもあるこの三人には「仮面舞踏会」など少年隊のほかのレパートリーも披露するチャンスが出てきそうだ(さすがにあーりんにバク天の連続技を期待するのは酷だが)。

1987 少年隊 stripe blue
この日の演目で唯一不満を言うとすれば一番最後に歌ったジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス 」のアカペラカバーだろうか。ジョン・レノンのファンで何度も聞いたり、歌ったりしてきた歌だけにメインボーカルがすっきりとしないバランスの悪さが気になった。直前まで練習してたというので単純に練習不足なのかもしれないが……。

セットリスト
M01:サンタさん (村長/ももクロ)
M02:聖夜 -二人のSilent Night- (しおりん/THE ALFEE )
M03:アンダンテ (コアラモード.コアラモード.)
M04:木綿のハンカチーフ (ももクロ秋本帆華&堀くるみ&あいらもえか&コアラモード.太田裕美)
M05:夏しぐれ (村長&しおりん&あんにゅ/THE ALFEE)
M06:雨だれ (れに&あいら/太田裕美)
M07:赤いハイヒール (夏菜子&秋本帆華太田裕美)
M08:セクシャルバイオレットNo.1 (れに&堀くるみ/桑名 正博)
M09:卒業 (あーりん&あいら/斉藤由貴)
M10:Romanticが止まらない (もえか&堀/CCB)
M11:あなたを・もっと・知りたくて (れに&秋本帆華薬師丸ひろ子)
M12:Temptation(誘惑)(あいらもえか/本田美奈子)
M13:魔女 (夏菜子&宍戸留美小泉今日子)
M14:stripe blue (あーりん&あいらもえか/少年隊)
M15:東京ららばい (しおりん&堀/中原理恵)
M16:水いらずの午後 (村長&いづみ/オフコース)
M17:綺麗ア・ラ・モード (あんにゅ&秋本帆華中川翔子)
M18:煉瓦荘 (オールキャスト/太田裕美)
M19:いちご畑でFUN×4 (村長&あーりん/大滝詠一松田聖子)
M20:泣いちゃいそう冬 (ももクロももクロ)
M21:ゴリラパンチ (ももクロももクロ)
M22:マホロバケーション (ももクロももクロ)
M23:イマジン (しおこうじ/ジョン・レノン)
M24:ハッピー・クリスマス (オールキャスト/ジョン・レノン)

概要
しおこうじ=ももクロ玉井詩織×アルフィー坂崎幸之助ももいろクローバーZ!秋本帆華!堀くるみ!あいらもえか!コアラモード!松本隆×筒美京平縛りフNs歌謡祭!

内容
玉井詩織×THE ALFEE坂崎幸之助ダウンタウンしおこうじバンド宗本康兵音楽監督加藤いづみ佐藤大剛・竹上良成・やまもとひかる・小幡康裕+ダウンタウンしおこうじサキソフォンズ=竹神様・後藤天太・才恵加・石井裕太・井出慎二!ゲストももいろクローバー百田夏菜子佐々木彩夏高城れに!TEAM SHACHI秋本帆華たこやきレインボー堀くるみ!あいらもえか愛来鈴木萌花=アメフラっシ!松本隆ほか

*1:たこ虹の実力の高さを示すのがこの音源。ラジオ出演向けに用意したものだが、コロナ禍のため、おそらくたこ虹ハウスか近くのスタジオでLIVE一発録りしている。
たこやきレインボー リモートMEGA MIX LIVE

*2:たこ虹の楽曲もエビ中などと比べると個々が歌い上げるというような曲は少ない。

*3:
本田美奈子/Temptation(誘惑)連続

私立恵比寿中学中山莉子が客演。シベリア少女鉄道 vol.33『メモリー×メモリー』 @草月ホール

シベリア少女鉄道 vol.33『メモリー×メモリー』 @草月ホール

ある地方の田舎町に同僚と一緒に刑事(浅見紘至)がやってくる。十数年前に起きた未解決の殺人事件の捜査のためだ。
一方、ひさしぶりに故郷に帰ってきた女(小関えりか)は廃墟となった建物の外にたたずむ少女(中山莉子)と出会う。少女はかつていじめを受けていたのを助けられなかった同級生のことが忘れられず、彼女の死を知って心を痛めていたのだ。さらに少女は同級生のいじめを認めずに見捨てた女性教師のことを許すことができなかったが、その女性教師はやはり教師であった帰ってきた女の母親のかつての教え子であり、女が尊敬する教師でもあった。このように前半部分では互いに矛盾し合うそれぞれの登場人物の記憶の齟齬が明らかにされる。
実際には過去に何があったのか?せめぎ合う錯綜した過去の記憶の中にどんな真相が隠されているのか。黒沢明監督の「羅生門」を思わせる謎解きを予感させる前半だが、もちろん後半部分では土屋亮一ならではの「仕掛け」が爆発。仰天動地の展開が待っている。息苦しいマスクでの観劇でも苦にならないシベリア少女鉄道ならではのエンターテインメントであった。
中山莉子は大事にされていた。土屋亮一のエビ中愛を感じさせる舞台だった。土屋亮一×私立恵比寿中学の演劇プロジェクト「シアターシュリンプ」*1 *2松野莉奈の急逝で中断したたままだが、なんらかの形で復活してほしいとの思いが募った舞台でもあった。

作・演出
 土屋亮一


出演
 中山莉子私立恵比寿中学
 小関えりか
 川井檸檬
 加藤雅人(ラブリーヨーヨー)
 浅見紘至(デス電所
 土田有未(ナカゴー)
 風間さなえ

 濱野ゆき子

 中山裕康


 ほか




声の出演

 小野賢章


日程2020年12月9日(水)〜13日(日) 全8ステージ+配信

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空宙空地「その鱗 夜にこぼれて」@こまばアゴラ劇場

空宙空地「その鱗 夜にこぼれて」@こまばアゴラ劇場

「ずいぶんステレオタイプな家族のとらえ方をするんだな」としか思えず、共感することができなかった。こういうのを「現実をシビアに描いたいい芝居」と思う人もいるんだろう。演劇表現の手法、演技も悪くはないとは思うが、残念ながら描かれる人間観についていけない。私との相性の問題かもしれないが、こういう内容を長々と描写されることにリアルもアクチャルも感じられず、ただただつらいのだった。

作・演出:関戸哲也(空宙空地)

〜私の人生は、儚くとも輝いていたのだろうか〜
愛想の悪いスーパーマーケットの従業員、常連客とその家族。
とある小さな町で、変わりばえのない毎日が 繰り返される。
彼らの人生はいつの間にか綻びが生じ、「輝くような未来」はこぼれ落ち 「こんなはずじゃなかった」が流れ 込んでくる。
平気な顔をして暮らす彼らの、人に言えない「秘密」や「葛藤」が明らかになっていく・・・
2019年初演作品をさらに練り上げてお届けする、ジェットコースターヒューマンドラマ。

出演

おぐりまさこ(空宙空地)
八代将弥(room16/16号室)
斉藤やよい
棚瀬みつぐ
暁月セリナ(オレンヂスタ)
原みなほ
山形龍平(タツノオトシドコロ)

スタッフ

舞台監督:柴田頼克(電光石火一発座/かすがい創造庫)
照明:高山皐月(高山一族)
音楽:瀬乃一郎
宣伝美術・舞台美術:studiomaco

Baobab PRESENTS『DANCE×Scrum!!! 2020』(3日目)@池袋あうるすぽっと

Baobab PRESENTS『DANCE×Scrum!!! 2020』(3日目)@池袋あうるすぽっと

吉沢楓「歯みがき」に破壊力があった。こういうのを見るたびにガーディアンガーデン演劇祭があればなあと思い、残念でならない。「白鳥の湖」の音楽を使用し、「四羽の白鳥の踊り」の振り付けをなぞって、歯たちが踊るパロディ的なシーンから始まるが、単なるコントのネタではなくて、バレエ経験とかがある程度以上あって、ちゃんと「四羽の白鳥」を踊ろうと思えば踊れるんだろうなという人たちが、そのダンステクニックの無駄遣いで、こういうことをしているというのが何ともいえずバカバカしい。とんでもなく面白いが、コンテンポラリーダンスコンペティションで勝つのは難しいかもなあと思う。
 作りとしては子供向けの教育番組にもありそうな「歯を磨こう」という啓発的な内容ともいえなくもないのだが、先述したバレエ場面といい突然始まるへたうま風ミュージカルといい盛り込まれた内容の過剰性の度が過ぎすぎていて、まったく内容が残らない(笑)。おおいに笑わせてもらった。
 『DANCE×Scrum!!! 2020』には劇場のステージを使用するステージプログラムとロビーの空間を回遊的に用いるホワイエプログラムの二種類のプログラムが交互に上演されるのが特徴。ホワイエプログラムは以前は出入りや見方を観客の自由裁量にゆだねるなどもう少し開放的なものであったが、今年はコロナ禍での感染対策を意識したものとならざるをえなかったので、観客も残念ながら座り位置や立ち位置を厳密に管理したものとならざるえず客いじりなどの演出もできなくなったが、それでもこの両者がどちらもあることでダンスという表現のすそ野の広さを感じさせる役割は果たしたのではないか。
 「歯みがき」はホワイエ向きの作品であったが、もうひとつこうした空間での観客を巻き込んでいくような訴求力の強さを見せつけたのが和太鼓+ダンスユニット<まだこばやし>「かくかくしかじか」であった。和太鼓のパフォーマンスとダンスパフォーマンスを組み合わせたものだが、和太鼓という芸能に軸足を置きながらも、太鼓にリズム合わせての激しいダンスはどちらかというと動き自体は芸能的なものというよりはコンテンポラリーダンスやジャズダンス的なテクニックを感じさせるものとなっている。さらにはこれにどう考えても伝統的なものではない奇妙な群唱が加わり、独特なパフォーマンスが成立していた。アーティスティックスなものというよりは娯楽性の高いものであり、その意味では伝統芸能そのものではないが、現代において芸能を行うとこういう風になるということもできるかもしれない。

Baobab PRESENTS『DANCE×Scrum!!! 2020』(2日目DAY)@池袋あうるすぽっと

Baobab PRESENTS『DANCE×Scrum!!! 2020』(2日目DAY)@池袋あうるすぽっと

昼の部はチケットがステージプログラムの分だけが手に入った。この回のハイライトは何と言っても森瑶子「ERROR」。最初にソロで両手を激しく動かす動かすのだが、この動きがかなり衝撃的。おそらくもともとの動きはストリート系のロックダンスからきているのではないかと推察されるのだけど繋がりがかなりバラバラに分断されていて、目で追うのが困難なほどハイスピード、いままでに見たことがないものだ。
とはいえ、ソロでこうした動きをすると云うだけならなくもないだろう。彼女が素晴らしいのはこの複雑に見える動きを単に手癖として自分が踊るだけではなく、客体化して他のダンサーにも振りつけて群舞に仕立て上げていることだ。この作品で彼女の振付家としてのレベルは格段に上がったと思う。
岡本優×熊谷拓明「WAX and wane」は岡本、熊谷によるデュオダンスだが、舞台背後のDJブースに悪い芝居所属の音楽家である岡田太郎が参加し、生オペレーションを担当した。今回の企画では岡田太郎(悪い芝居)がオリジナル楽曲製作というクレジットでこの作品だけではなく、中屋敷南、北尾亘の作品にも参加。悪い芝居の音楽劇としての側面を生演奏や楽曲制作で支えている岡田だが、私が知る限りこれまであまりコンテンポラリーダンスのアーティストと共同作業を試みたことはなかった。一方、悪い芝居の舞台にはこれまで大人計画における康本雅子ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品における井手茂太のように振付家が共同制作者として参加したことはなかったのではないか。その意味では今回の岡田の参加は興味深いと思う。
ダンス作品としてはダンサーとしての魅力はうかがえるものとはなっているが、それ以上のものを感じ取ることは難しかった。背景の幕には3つの数字が映し出されて、現在の日時に向けてカウントダウンがされているのは何となく分かったが、それにどんな意味合いが込められているのかを汲み取ることは難しかった。中央には満ち欠けする月の映像も映し出されていたが、これがどんな意味なのかは結局よく分からない。どういうことだったんだろうか。

ステージプログラム
岡本優×熊谷拓明「WAX and wane」
宇山あゆみ×西村大樹「BUTAI」
五十嵐結也「I saw her」
森瑶子「ERROR」

キャスト/スタッフ
【ディレクター】北尾亘(Baobab) 【舞台監督】熊木進・久保田智也
【照明】中山奈美・久津美太地(Baobab) 【音響】相川貴・中村光彩 
【映像撮影・製作】中瀬俊介(Baobab) 【宣伝美術】阿部太一(TAICHI ABE DESIGN INC.) 
【オリジナル楽曲製作】岡田太郎(悪い芝居) 【チケット販売協力】株式会社レキップ・トロワ
【企画運営】米田沙織(Baobab)・傳川光留(Baobab) 【製作助手】染宮久樹 
【制作】白井美優(Baobab) 【プロデューサー】目澤芙裕子(Baobab) 

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Baobab PRESENTS『DANCE×Scrum!!! 2020』(2日目NIGHT)@池袋あうるすぽっと

Baobab PRESENTS『DANCE×Scrum!!! 2020』(2日目NIGHT)@池袋あうるすぽっと

この数年コンテンポラリーダンスでソロやデュオなどの小規模な作品が増えてきている中で、田村興一郎「窪地」北尾亘「UMU~うむ~」と見ごたえのある群舞が見られたのが一番の収穫だった。
UMU~うむ~」は今年春の横浜でのダンスショーケース*1で50分のソロ作品として踊られたものを30分のグループ作品に仕立て直した。これも映像、オリジナルの音楽を多用してコラボレーション的に展開するのが特徴だが、映像、音楽ともにブラッシュアップしてより完成度の高いものに作り直している。それ以上に4人の女性ダンサーが新たに参加して、群舞を担当しているが、衣装や振付をはじめとするビジュアルイメージが春の時よりも一気に華やかになっていて、ショーアップされたものとなった。
 田村興一郎「窪地」もこのところソロやデュオといった小規模な作品が多かった田村としては珍しい大人数が参加しての本格的なグループダンス作品であった。

ステージプログラム
藤村港平「HUTOMANI」
田村興一郎「窪地」
岡本優×熊谷拓明「WAX and wane」
北尾亘「UMU~うむ~」

ホワイエプログラム
中屋敷南Future Fighters!「恋の贅沢病」
中村理「カミング・スーーーン」
和太鼓+ダンスユニット<まだこばやし>「かくかくしかじか」

キャスト/スタッフ
【ディレクター】北尾亘(Baobab) 【舞台監督】熊木進・久保田智也
【照明】中山奈美・久津美太地(Baobab) 【音響】相川貴・中村光彩 
【映像撮影・製作】中瀬俊介(Baobab) 【宣伝美術】阿部太一(TAICHI ABE DESIGN INC.) 
【オリジナル楽曲製作】岡田太郎(悪い芝居) 【チケット販売協力】株式会社レキップ・トロワ
【企画運営】米田沙織(Baobab)・傳川光留(Baobab) 【製作助手】染宮久樹 
【制作】白井美優(Baobab) 【プロデューサー】目澤芙裕子(Baobab) 

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