下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

2月のお薦め芝居(2020年)by中西理

2月のお薦め芝居(2020年)by中西理

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(復刻版、えんげきのぺーじでおなじみの「お薦め芝居」を復刻)


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ロロの新作はSFか? ファンタジーか?

 ロロ『四角い2つの窓』★★★★(1月30日~2月16日、こまばアゴラ劇場)にも注目したい。

海岸沿いに透明な壁が建てられた。その壁を通して眺める海は、いくつもの過去が折り重なってみえるらしい。たくさんの人たちが壁のもとに集まってくる。目の見えない綱渡り師、透明人間の恋人を探す女性、窓ガラス清掃をする元役者、スノードームをつくる観光客、ミノタウロスとくだんのあいだに生まれた未来のみえないこども。「私、フチになりたいんだ。麦わら帽子のフチとか、ルパンが盗む絵画の額縁とか、コップのフチ子とか、あと、絶望のフチとか」今夜、透明な壁で物語が上演される。(こまばアゴラ劇場公式サイトより引用)

 ロロ版ファンタジーなのか、ロロ版SFなのか。あらすじからはボブ・ショウのSF作品 「去りにし日々、今ひとたびの幻」に出てくる、「光がそこを通過するの時間がかかるガラス」スローガラスのような設定を想起したが、ジャック・フィニー「ゲイルズバーグの春を愛す」のようなファンタジーなのかもしれない。いずれにせよSF]・ファンタジー好きの三浦直之の面目躍如といった舞台になっていそうで、楽しみな新作だ。
simokitazawa.hatenablog.com

去りにし日々、今ひとたびの幻 (1981年) (サンリオSF文庫)

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ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26)

ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26)


 2月は横浜ダンスコレクション コンペティションI★★★★(2月8・9日、横浜赤レンガ倉庫)に注目したい。以前あったトヨタコレオグラフィーアワードがなくなった後は横浜のダンスコンペはコンテンポラリーダンスを志すものたちにとってほとんど唯一といっていい新人登竜門となっている*1。今年の個人的な注目は昨年のダンスベストアクトにも選んだ横山彰乃がノミネートされていることだ。彼女はここ数年充実した舞台成果を残してきたからぜひ賞に入ってほしい。
 若手を対象にした 横浜ダンスコレクション コンペティションII★★★★(2月6・7日、横浜のげシャーレ)にどんな作品が登場するかも毎年楽しみだ。審査員による審査結果とは無関係に自分なりの評価をあげていくのもここ最近の楽しみ。今年もできるだけ感想をアップしていきたい。

横浜ダンスコレクション コンペティションII
2.6 [thu] 19:00 ※上演順未定

甲斐 ひろな『Dogs Have No Hell』
黒田 勇 『狼狽』
小林 萌『machi』
髙橋 灯『4’33″』
橋本 ロマンス『サイクロン・クロニクル』
ヤマグチ リオ『Little love』

2.7 [fri] 19:00 ※上演順未定
NISHIMURA KAIYA『NO ONE KNOWS ME』
木村素子『MATE』
佐伯 春樺『Persona』
山田 暁『幽の域』
山下 恵実『互いに交わることのない、いくつかの』

2.8 [sat] 15:00 ※上演順未定

ブルー・カウィング『Experimental Relationships』
リン・ティンシュイ『Deluge』
イム・ソンウン、アン・ヒョンミン『Nuisance』
下島礼紗『オムツを脱いだサル』
Von・noズ『不在をうめる』

2.9 [sun] 15:00 ※上演順未定

リン・チュンウユ『A Pillow Song』
ラウル・エル・ラキティコ・ジュニア『Transacting Comfort』
敷地 理『happy ice-cream』
ソン・ユンジュ『Pillar of Mind』
横山彰乃『水溶媒音』

yokohama-dance-collection.jp


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http://p.yafjp.org/storage/documents/0/370/1550189353.pdf



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東京ノート
 平田オリザ作演出による青年団東京ノート』★★★★が国際的な配役による青年団東京ノート インターナショナルバージョン』★★★★とともに吉祥寺シアターで連続上演されることになった。『東京ノート』は1995年に岸田國士戯曲賞を受賞した平田の代表作で、チェルフィッチュ『三月の5日間』などともにもはや日本現代演劇の古典といっても過言ではない。現代口語による演劇、同時多発の会話、群像会話劇の手法などはその後の現代演劇の規範となっていることもあり、いま見た時に当時あった手法的な驚きを感じることは難しいかもしれないが、それでも非常に巧みに構築された作品であることは間違いないし、見たことがない演劇ファンには必見だと思う。



 AFF戯曲賞を受賞した額田大志の代表作ヌトミック『それからの街』★★★★(横浜STSPOT)にも注目したい。2016年に第16回AAF戯曲賞を受賞した額田大志の「それからの街」を、大幅にリクリエーションするもの。劇中では、日本の団地に住む4人の男女の日常が描かれる。出演者は、串尾一輝、坂藤加菜、原田つむぎ、深澤しほ。初演では音楽的な構造で構築された戯曲を音楽のように上演するという色合いが強かったようだが、複数回の共同作業をへた手練れの俳優とのリクレーションで今回はどのような作品ができあげるのかが興味津々。






 劇団あはひは早稲田大学の演劇プロデュース集団。ということは劇団あはひ『どさくさ』★★★はまだ大学に在学中の集団が本多劇場で公演をするということになる。第三舞台でさえ実現してない快挙で、相当な話題になってもおかしくないことではないだろうか。劇団あはひはすでに「CoRich舞台芸術まつり!2019春」グランプリを学生団体として初めて獲得するなどの評価も受けており、本多劇場の公演をへて一気にスターダムに躍り出る可能性もあるかもしれない。今回上演するのは落語「粗忽長屋」を下敷きにした作品。どんなものになるのか楽しみだ。
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 関かおりPUNCTUMUN 『むくめくむ』★★★(シアタートラム)にも注目したい。昨年の公演は2019年ダンスベストアクトに値する優れた公演成果であった。今年はどのような作品を見せてくれるのか?




 先月取り上げた東京都現代美術館で開催中の展覧会ダムタイプ|アクション+リフレクション』★★★★は1月も継続中。1990年代に世界を席巻したマルチメディアパフォーマンスグループ、ダムタイプの大規模な回顧展で必見の展覧会である。
 ポンピドゥー・センター・メッス分館での個展(2018年)の作品群に新作を加えてバージョンアップ。古橋悌二生前のパフォーマンス《Pleasure Life》に基づく《Playback》、初演時の舞台装置の再現《pH》、「人間の条件」展(1994)と同年の舞台《S/N》による作品《LOVE/SEX/DEATH/MONEY/LIFE》や、古橋没後の3つのパフォーマンスを再構成した《MEMORANDUM OR VOYAGE》(2014) に加え、古橋悌二《LOVERS》(1994/2001、second edition、国立国際美術館所蔵)を展示し(2020 年1 月19 日まで)、卓越したサウンドデザインによる空間体験を提供する。
 2月ではないが3月28・29日には京都ロームシアターでダムタイプは20年ぶりの新作 ダムタイプ『2020』★★★★を上演。私も観劇する予定。
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www.mot-art-museum.jp




 
 お薦め芝居。とりあえずブログで展開中であるが、もし掲載可能なメディアがあればぜひ連絡をお願いしたい。
 演劇・ダンスについても書いてほしいという媒体(雑誌、ネットマガジンなど)も鋭意募集中。相談はメール(simokita123@gmail.com)でお願い。ブログに書いたレビューなどを情報宣伝につかいたいという劇団があればそれも大歓迎。メール下さい。パンフの文章の依頼などもスケジュールが合えば引き受けます。新規劇団発掘にも力を入れています。招待メールなどいただければ積極的に観劇検討します。







中西


*1:他にも新設の賞などはあるが、旧バニョレ横浜プラットフォーム以来の歴史を持ち、過去に錚々たる受賞者の歴々を持つことでの権威はほかのものとは比較できない。