下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

鈴木萌花出演弾き語りライブ「222 mph」@Shibuya duo MUSIC EXCHANGE

鈴木萌花出演弾き語りライブ「222 mph」@Shibuya duo MUSIC EXCHANGE

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AMEFURASSHIの鈴木萌花がソロで弾き語りライブを行なった。バンド「703号室」との対バンイベントであったが、2組ともよくて充実した内容のライブだったのではないだろうか。栗もえかやあいらもえかとしては何度もステージに立っているし、それを見てもいるので慣れているかと思っていたが、一人は初めてということで最初の「明日の幸せ」とMCを挟んでの「顔晴ろう」「なんだったんだろう」はけっこう緊張の色が強かったみたいだった。
ただ、その後のカバー曲ゾーンでCreepy Nutsの「のびしろ」、BTS「Dynamite 」を披露し辺りでは緊張もほぐれて声の出もよく出てきて、萌花の魅力が発揮されたパフォーマンスとなってきた。ギターの演奏も堂に入っていて、アイドルが余芸でやってますの域を完全に越えているのだが、そうなると逆に現時点での課題というか物足りなさも浮かび上がってくる。
 それが何なのかを萌花のパフォーマンスを見ながらもやもやしていたのだが、その一端が氷解したのが、萌花の後に703号室のライブを見た時のことだ。703号室のボーカル、岡谷柚奈のステージングを見ていて重要なのは歌唱技術よりも歌にどのように自分の感情を込めて、観客に伝えるかということで、この一点に置いては萌花はまだまだ真価が発揮できてないんじゃないかと感じたのだ。
 念の為に言っておくと萌花のこの日のパフォーマンスは20歳のアイドルがやるライブとしては群を抜いてレベルが高い。アイドルなどということを持ち出さなくても同年代のギター弾き語りアーティストと比べても遜色のないものだ。ただ、彼女の資質からしてもっと上が目指せるはずだという思いもあり、何がたりないかを考えてしまったのだ。 
 

2022.4.7 #鈴木萌花 弾き語りライブ 222mph
20 eill
明日の幸せ 鈴木萌花
顔晴ろう 鈴木萌花
なんだったんだろう 鈴木萌花
MC
のびしろ Creepy Nuts
Dynamite BTS
MC
Shape of You エド・シーラン
なんでもないよ、 マカロニえんぴつ
世界の秘密 Vaundy
ハピネス AI

「222 mph」
場所:Shibuya duo MUSIC EXCHANGE

出演:鈴木萌花(AMEFURASSHI)/703号室

青年団第92回公演「S高原から」(2回目)@こまばアゴラ劇場

青年団第92回公演「S高原から」(2回目)@こまばアゴラ劇場


平田オリザの作品は特定の文学作品を下敷きにしていることが多いが、「S高原から」トーマス・マンの長編小説「魔の山」を下敷きにしている。やはり、平田の代表作である「ソウル市民」はトーマス・マンの「ブッテンブローク家の人々」*1を参照項としていた。「魔の山*2は私の好きな小説のひとつだったが、おそらく、トーマス・マンといっても若い観客はピンとこない人が多いのではないか。しかし、それは別に教養を誇ってマウント取りをしようというのではなく、以前はマンは昨今よりもずっとよく知られた作家だったのだ。大きいのは短編小説「ベニスに死す」*3ルキノ・ビスコンティが映画化し、映画に登場したがビョルン・アンドレセンが絶世の美少年として一世を風靡したこと。
 あるいは昔ベストセラー作家だった北杜夫の代表作「楡家の人びと」*4が「ブッテンブローク家の人々」に強い影響を受けていたことなどもあった*5
 「魔の山」は大長編といえる小説で、ハンス・カストルプという青年が結核にかかり療養中の友人がいる山の上にあるサナトリウムで、自らも同じ病に罹患していることが判明、入院療養することになり、その過程で人生におけるいろいろな事柄を学び、成長していく物語。ドイツ文学の伝統であるビルドゥングスロマーン(教養小説)の系譜に入るが、物語には人文主義者、ニヒリストなど様々な思想的を持った人物が登場し、ハンスに対しさまざまなことを論じること影響を与えていくという思想小説の側面もある。ただ「S高原から」に取り入れられたのはそういう側面ではなく、山の上と下では時間の主観的な流れ方が異なるというモチーフで、この作品でも患者とそれを訪ねてきた外部の人物の間での時間意識の違いが、変奏されながら繰り返されるという構造が受け継がれている。
 木村巴秋と吉田庸が演じる二人の患者と彼らを訪ねてくる女性との間には両者で微妙な差異がある。そして、それは相手との関係性の違いとともに入院期間の違いによって異なってくる事情が提示される。演出的、演技的には木村巴秋が面白い。noteのレビューで佐々木敦氏が指摘していたのだが、かつての恋人が結婚することを恋人の友人の女性から一方的に告げられる場面があるのだが、その間中、木村は客席に背中を向けており、その顔を表情は観客にはいっさい見えないからだ。見せないことで自ずから観客側に想像させるというアイデアは「東京ノート」でも見られるが、ここでも同種の技巧が使われている。それでもその間の木村演じる男の感情の変遷を私たちが感じ取ることができたのは友人役を演じた田崎小春が何ともいえないような微妙な表情での演技をしていて、型にはまらないこうした繊細な演技をこなせる俳優が何人も存在することが現在の青年団の俳優陣の層の厚さを痛感させた。それまでおちゃらけたような演技体だった木村がここで突如変容するのが素晴らしい。
 とはいえ「S高原から」はもうひとつの文学作品からも影響を受けている。「魔の山」は直接登場人物の話題に出てくることはないが、こちらは頻繁に登場する。「風立ちぬ、いざいきめやも」で知られる堀辰雄の「風立ちぬ」だが、こちらの方は宮崎駿のそれを原作とする同名アニメ「風立ちぬ」により、より若い世代にも知られるようになったが、平田は「『S高原から』の方が映画『風立ちぬ』より古いので、劇中には映画の話は一切出てこない」としている。

作・演出:平田オリザ
高原のサナトリウムで静養する人、働く人、面会に訪れる人…。
静かな日常のさりげない会話の中にも、死は確実に存在する。
平田オリザが新たに見つめ直す「生と死」。

1991年初演の名作を8年ぶりに再演。


チラシに関する誤植のお詫び・訂正(2021.12.12)
『S高原から』公演チラシにおいて、記載内容に一部誤りがございました。
深くお詫び申し上げますとともに、次のとおり訂正させていただきます。

<訂正内容>
【誤】 1992年初演の名作を8年ぶりに再演。
【正】 1991年初演の名作を8年ぶりに再演。

出演
島田曜蔵 大竹 直 村田牧子 井上みなみ 串尾一輝 中藤 奨 南波 圭 吉田 庸 木村巴秋 南風盛もえ 和田華子 瀬戸ゆりか 田崎小春 倉島 聡 松井壮大 山田遥野

スタッフ
舞台美術:杉山 至
舞台監督:中西隆雄 
舞台監督補:三津田なつみ
照明:西本 彩
衣裳:正金 彩 中原明子
宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子 太田裕子
宣伝写真:佐藤孝仁
宣伝美術スタイリスト:山口友里
制作:金澤 昭 赤刎千久子

「有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」(2回目)@東京・大手町三井ホール(ネタバレあり)

有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」(2回目)@東京・大手町三井ホール


有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」@東京・大手町三井ホール2日目を見た。以前のサクライブの時は2日間のセットリストをかなり大きく変更してきたが、さすがに今回はほぼ同じ曲順の進行。ご当地カバー曲のみは前日のback number「高嶺の花子さん」からこの日はバンプオブチキン「花の名」*1となったが、杏果は男性ボーカルのバンド曲をカバーすることもけっこう多くて、やはりこういう音楽が好きなんだろうなと思った。
この日のハイライトはアレンジで空気感を大きく変えた「Feel the Heartbeat」を終えた後、感極まって涙ぐみ、曲中で客席を見て、横浜アリーナでの初めてのソロライブのことやその後起きたいろいろなことを思い出してしまったからだと涙をこらえながら述懐した場面かもしれない。
有安杏果といえば昔からパフォーマンス中によく泣くことで有名で、ももクロ初の西武ドームライブの『ももクロ夏のバカ騒ぎSummer Dive 2012 Tour』の『ワニとシャンプー』では泣きながら出てきたために歌詞がぐだぐだになって活舌の問題もあるから全く何を歌っているのか分からないほどだったが、もちろんこの日はそういうことはなく、プロとしてちゃんと歌い終わった後でMCに入って溢れ出る感情が抑えきれなくなった感じであったが、クールなパフォーマンスを見せてもこういう感性が健在なのを嬉しく思った。
実は独立してソロになってからもピアノ演奏がうまくいかなかった時に涙してしまい感情が不安定なんじゃないかと心配させたこともあったのだが、この日の涙はどちらかというと「あの日があって、そして満席の観客を見て、私はここまでやっと来られた」という感極まった涙で、ネガティブなものではなく、会場の観客も共感したのじゃないか。
ももクロ時代のことにはあまり触れないけれど、逆にももクロ時代のソロコンのことには饒舌なほど触れていて、ソロアーティスト有安杏果の原点はあの横浜アリーナでのソロコンスタートにあったということがよく分かるMCで、あの時にその場に立ち会ったものとしても感慨深いものがあった。
新曲は「夢の途中」「オレンジ」の2曲で、「夢の途中」は自分自身の心情をダイレクトに歌っていて、杏果の歌の典型といえそうだが、「オレンジ」はこれまでのJ-POPの「泣き歌」のメインストリームといっていい楽曲であった。この日の発言を見ていると実は作りためた楽曲がかなりストックされているのではないかと思う。ファンとしてはアルバムが欲しいところだが、杏果の性格からすれぱバンドセットのツアーのために用意した歌をバンドによるツアーで発表するまではないのだろうなとも確信した。以前やったようにライブ音楽のサブスク配信を期待しているのだが。

遠吠え
Drive Drive
MC
ハムスター
指先の夢
愛されたくて
MC
花の名  /  BUMP OF CHICKEN
Calling You  / Holly Cole
虹む涙
TRAVEL FANTASISTA
Runaway
feel a heartbeat
ペダル
ヒカリの声
夢の途中
Another story
サクラトーン
アンコール
LAST  SCENE
Catch  Up
オレンジ

Member
有安杏果(Vocal/Guitar)
宮崎裕介(Piano)

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「有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」(1回目)@東京・大手町三井ホール(改訂版)

有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」(1回目)@東京・大手町三井ホール

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有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」@東京・大手町三井ホールの1日目に出掛けた。
有安杏果のライブの面白さの一丁目一番地は様々なアレンジにより楽曲のボテンシャルを最大限に引き出すことにある。「遠吠え」「Drive Drive」「TRAVEL FANTASISTA」のようなおなじみの楽曲がアレンジをまったく変えることでほとんど新しい曲のように再構築されるのは魅惑的な体験だった。Official髭男dism提供曲で軽快なロック調な「TRAVEL FANTASISTA」は今回はピアノとアコギだけの伴奏ということで、ボサノバ調に生まれ変わり、より大人な雰囲気となった。アレンジへの拘りはおそらくももクロ時代に一緒にやった武部聡志の薫陶を受けたもので、現在は武部やきくちPらももクロ周辺の人とは意図的に距離を置いているようだが、現在一緒にやっている福原将宜も「何年もこれからできるように若い人とやるべきだ」と武部から紹介されたミュージシャンのひとりだったと記憶しているし、その他のバンドメンバーもこの日一緒の宮崎裕介をはじめ全員アレンジも手掛けてられるバンマス級の実力の持ち主で、こうした人選にはももクロソロコン時代の経験が存分に生かされていると思う。
 とはいえ、いつものライブよりもよりアレンジが目立ったのはアコースティックギターとピアノという楽器構成ではバンドの場合のアレンジをそのままやることはできないという事情もあった。逆にギター1本での弾き語りではアレンジをするといってもとりあえずギターだけ、あるいはピアノ演奏だけで成立させるという限界があったが、ギターに加え、ピアノも入るとなるとなればできることのバラエティーは大幅に増えるわけで、そこに1曲ずつどういうアレンジでやろうかを綿密に相談したうえでライブ全体を構築していく面白さがあったと思う。
そして、自ら演奏する楽器も魅力だが、最大の武器は楽器としての歌声の魅力だ。ももクロ時代から「歌がうまい」とはいわれていたが、当時は楽譜の指定通りに音を置きに行くようなところもあった。いまはフェイクや遊びも随所に入れて、セッションを本当に楽しんでいるようなところがあった。実は応援していたももクロの後輩グループであるたこやきレインボーの解散が正式に発表されてつらい気持ちになっていたこともあり、別々に分かれてはいるが、こういう姿でももクロの4人のライブも杏果のライブも両方楽しむことができる幸福はけっして当たり前のことじゃないんだとの思いがますます込み上げてきたのである。
 ひとつひとつの曲にも少し長めのイントロが入って時折そこでフェイクやギターでの掛け合いも入るのだが、すぐにはどの曲をやるのかが分からない時が多く、いくつかの曲は意外な曲想から「え、この歌にこういう入り?」みたいな驚きがあり、これは観客の愉しみのために意図的に仕掛けた仕掛けではないかと思う。特に最初の曲となった「遠吠え」には驚いた。イントロ部分がジャズピアノ的な奏法の宮崎裕介に対して、杏果がスキャットで呼応し、セッションを展開した後「遠吠え」に入るのだが、歌い方もこれまでのアレンジとはだいぶ違っていて、よりジャジーな感覚。他の曲でも感じたがこういう大人の空気感が出せるようになった杏果にはぜひジャズのスタンダードナンバーもカバーしてほしいと思った。
 演出上もうひとつ気がついたのは曲中でクラップしてほしい個所としないでじっくり聞いてほしい個所があるはずなのだが、今回の杏果のサクライブでは照明家と杏果が綿密に相談して、いつもにも増して細かい変化をつけている。途中で気が付いたのだが、この照明がクラップして欲しい時には客電が明転したうえで黄色のLED照明が点滅、じっくり聞いてほしいところは暗めのムーディーな照明となるようになっていて、最初はそうでもないが次第にサインの意味に気が付いた観客がちゃんとそれに対応していた。こういうやり方は照明テクニックとかでこれまでもあったのかもしれないけれども、私が見たのは初めてで、感心するとともにこれは当然音楽家との相談が必要なことだから杏果とスタッフとの信頼関係も伺えて好ましく思った。
 カバー曲はこの日歌ったのはback numberの「高嶺の花子さん」*1と映画「バグダッド・カフェ」の主題歌「Calling You」*2の2曲。MCでBack Numberの曲を「大学時代(ということはももクロ時代でもある)に毎日のように通学時も仕事の合間にも聞いていた」というのだが、杏果がミスチルや秦基弘の曲が好きなことはよく聞いたし、Official髭男dismや[Alexandros]には実際に楽曲提供も受けているので分かるのだけれどもこれは初耳で少し驚いた。

遠吠え
Drive Drive
MC
ハムスター
指先の夢
愛されたくて
MC
高嶺の花子さん /  back number
Calling You  / Holly Cole
虹む涙
TRAVEL FANTASISTA
Runaway
feel a heartbeat
ペダル
ヒカリの声
夢の途中
Another story
サクラトーン
アンコール
LAST  SCENE
Catch  Up
オレンジ

Member
有安杏果(Vocal/Guitar)
宮崎裕介(Piano)

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悔しい!本当に悔しい。原稿書きながら悔しさが込み上げてきた。たこやきレインボーが正式解散、5人での新プロジェクト断念

たこやきレインボーが正式解散、5人での新プロジェクト断念


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メンバーの彩木咲良が作詞を担当した「Super Spark」を聴き直した。分かっていたけれど「かなわない思いはあるんだ」と思い涙が止まらなかった。一瞬であろうとその輝きをありがとうと声に出したいが、今はまだそれもままならない。
たこやきレインボー(たこ虹)が正式解散、5人で立ち上げるとしていた新プロジェクトを断念すると発表した。ももクロ有安杏果卒業以来の衝撃で、いまだに受け入れることができず、このブログを書いている。
私にとってたこ虹は偶然TEAMSHACHI(当時はチームしゃちほこ)のヤマダ電機LABI1なんば店でのイベントの様子を見に行った時に偶然初披露のパフォーマンスがあり、発足の瞬間に立ち会っていたことなどから思い入れの強いグループだっただけにショックが大きい*1
私がたこ虹をいいと思うのは配信など平場での面白さとライブパフォーマンスの質の高さが両立していたことだ。パフォーマンスでは特にダンスの技術が高く、スタプラにはAMEFURASSHIやCROWN POPなどダンスを売り物とするグループは多いけれどその中でも群を抜いた実力を持っていた。AVEXのサイトにあるライブ映像はいつ削除されてしまうか分からないが、下記のは配信映像だがCLUB RAINBOWツアーとDJを入れてのクラブミュージックを取り入れたライブツアーでのパフォーマンスを再現したものだ。ファンがこうした新たな動きに戸惑っているうちにコロナ禍になってしまいこうした実力がライブ活動で十分に発揮できる場を与えられなかったのが今でも残念でならない。

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その一方で吉本新喜劇とタイアップしての興業も何度もあり、バラエティー対応能力の高さもももクロを度外視すればスタダトップと言ってよかった。

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そして、平場の面白さといえばコロナ禍で配信していた晩御飯配信「家にいるTV」。中でも彩木咲良により新キャラ「さくぴょん」が降臨した「さくぴょんのメイドカフェ」の回はほとんど即興なのに当意即妙の対応がそのままシチュエーションコメディーになっているという伝説的傑作だ。見てない人はぜひ一度見てこの素晴らしいグループがもう見られないことを惜しんでほしい。
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冷静になって考えればスタダのアイドル部門「スターダストプラネット」が立ち上げた新プラットフォームのスタコミュにたこ虹メンバーの名前がなかったこと(入っていればトップ級の活躍ができただろう)など、よくない予兆はあった。
 ただ、先日元メンバーの5人で彩木咲良の20歳の誕生日配信を行ったばかりで、「いよいよ、ここから再スタート」と思っていただけに現在のところ呆然としているという以外の表現が出来かねる状況である。こういう言い方はなんだけれどもグループとしてはスタダに切り捨てられたのかなという暗澹たる気分になってしまう*2。いろんな思い出やたこ虹論なども書くべきなのだろうが。グループ解散の発表はメンバー5人の連名で行われたが、そこに東野真子マネージャー(番長)の名前がなかったことも気にかかる*3。これ以上いろいろ考えると眠れなくなるので、きょうはこのぐらいにするが正直言ってつらい。曲とパフォーマンスがあまりにいいためにばってん少女隊に揺らぎそうになっていたが。こうなったらたこ虹の分もAMEFURASSHIを応援することで、この精神的危機を乗り越えるしかないかもしれない。
 今後はそれぞれが個人の活動を続けていくということだが、すでに今年だけでも複数の舞台に登場している女優中心の活動となりそうだ。そうなると音楽的才能に溢れた彩木咲良が音楽から遠ざかってしまうのが惜しまれる。
 スタダが5人一緒での活動を許さなかったのなら、懇意にしていた吉本新喜劇石田座長にお願いして吉本興業に引き取ってもらう道はなかったのかとか(そんなの例がないから無理筋だと分かっているが)考えてしまうのである。

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AMEFURASSHIの鈴木萌花が弾き語りライブに出演するが、これはおそらくきくちPがサポートしての企画と思う。女優が中心となるとしてもスタダには残るのだから、きくちPが気遣いなしに動ける範囲内にはいると思う*4彩木咲良の個人的な音楽活動をサポートするということはできないだろうか。

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*1:スターダストプラネットの数多くのグループの中で、たこ虹とAMEFURASSHIのみ旗揚げの瞬間に立ち会った。ももクロは別にして、この両グループがその後イチ押しグループとなったのは偶然以上のものがあるかもしれない。

*2:5人が事務所でタレント活動を続けていくことで突き付けられた条件がグループの解散だったということもありえなくはないだろうと思う。

*3:東野マネージャーがすでにスタダを退社しているとの情報もあるが正式には未確認。

*4:解散後も清井咲希のほのさきちぃとして出演することは決まっている。

「関係性の演劇」とは? 平田オリザ入門に最適の舞台。青年団第92回公演「S高原から」@こまばアゴラ劇場

青年団第92回公演「S高原から」@こまばアゴラ劇場

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青年団「S高原から」こまばアゴラ劇場)を観劇。1992年初演の作品だが、これまで再演が繰り返されてきた回数は「東京ノート」などと並び上位に入ってくると思われ、平田オリザの代表作と言ってもいい作品である。最大の特徴は平田特有の方法論をもっとも分かりやすい形で活用していることだ。
平田の演劇をかつて「関係性の演劇」と名付け、それは90年代以降現代演劇にひとつの流れを作った群像会話劇系の作品のキー概念となっていったが、それを論じるのに一番やりやすい作品が「S高原から」であった。これは平田演劇の入門編のような色彩が強い。以下は2005年伊丹アイホールで上演された際の観劇レビューであるが、今回の舞台についてもほぼそのまま成立するはずだ(キー概念に関わる部分は太字で示した)。

 青年団の場合、代表作は繰り返し上演され、しかも若手公演などでも上演されてきたこともあって、初演こそ見てはいないが、この芝居を見るのが何度目かと思い出そうとしても思い出すのに苦慮するほど見ている芝居。それゆえこの芝居自体についてなにかレビューとして新しいことを書こうとしても難しいのだが、この戯曲には平田の方法論がよくも悪くも典型的な形で具現されていて、今見てもそれは面白い。
 平田の芝居と最初に出合ったのは「ソウル市民」だったのだが、当時、「静かな演劇」ないし「静かな劇」と呼ばれていた平田の舞台について、その呼称には違和感があったもののそれがなにであるのかは分からず、その本質から平田オリザによる群像会話劇を「関係性の演劇」と呼ぶべきではないかとはっきりと確信したのもこの「S高原から」によってであった。
 「関係性の演劇」とは登場人物の関性をそれぞれの会話を通じて提示することで、その設定の背後に隠蔽された構造を浮かび上がらせるという仕掛けを持った演劇のこと。平田の作品をこう呼ぶことにしたのは「静かな演劇」と呼ばれていながら、一部では新劇(リアリズム演劇)への回帰とも当時、解釈されていた平田の演劇は西洋近代劇の理論的支柱と目されていたスタニスラフスキー(そしてその後継であるメソッド演劇論)が前提としてなるような内面を持つ個人としての全人的存在である人間というような前提を否定して、人間というものはいわば複数の関係性を束ねる結節点のようなものとして存在しているにすぎないというまったく前提の異なる人間観をもとに構想されているという違いがあり、だから、一見見掛けとして似ているところがあったとしても、「関係性の演劇」とリアリズム演劇は別物であるということ。こういう演劇観は後に平田自身が著作のなかで明らかにしていることでもあるから、現在の時点でことさら強調するのも間抜けな感じが否めないのだが、要するにそういうことを最初にはっきり感じさせた作品がこの「S高原から」だったわけだ。
 冒頭で「平田の方法論がよくも悪くも典型的な形で具現されていて」と書いたのにはちょっとしたアイロニーも実は含まれた物言いであって、「関係性」ないし「関係的」というのは「記号的」と言い換えることも可能で、この戯曲には例えば「ソウル市民」ややはり平田の代表作と目されている「東京ノート」と比較してみたときに関係性の提示のありかたがあまりにも露わであり、それゆえ舞台を見終わった後の印象として個別の事象よりも全体として設計図のように描かれた骨組みがより前面にはっきり出てきて、図式的に感じられてしまうという欠点もあるということは指摘しておかなければならない。つまり、あまりにも平田の理論通りに作られていて余剰がないというか、教科書的な作品でもあるのだ。
 トーマス・マンの「魔の山」を下敷きに構想された「S高原から」は高原にあるサナトリウムの中庭にある休憩場所が舞台となる。ここには感染はしないけれど、治療の方法がなく完治することもないという病気に罹った患者が入院している。この芝居には大きく分類すると入院患者、病院のスタッフ、外部からこの病院への訪問者(患者の面会者)という3種類にグループ分けできる人物が登場し、それが相次ぎこの場所に現れ、さまざまなフェーズの会話を交わすことで物語は進行していく。
魔の山」から平田が引用してこの舞台のなかで何度も変奏されながら繰り返されるのがこの閉ざされた空間であるサナトリウムと下界との間に流れる主観的な時間の違いである。これは付き合っていた恋人との別れを経験することになる患者、「もうこんなに長くいるのだからここから降りてほしい」という婚約者と降りない患者などいくつかのエピソードによって繰り返し基調低音のように繰り返される。
 そしてそこに隠されているのはもちろん「死」ということだ。「死」は一般に私たちが暮らしている下界においては隠蔽された存在だ。だが、この患者たちにとってはいつか自分にもやってくる日常そのものでもある。ここに平田が描き出した会話を克明に観察していくと
患者のグループは冗談などに見せかけて頻繁に「死」のことを話題にするに対して、訪問者たちはその話題を回避する、あるいは見て見ないふりをする。そして、患者の友人たちは患者本人がいない時だけ、直接それに触れることを避けるようにして「あいつ相当悪いんじゃないか」などとそれを話題にするが、本人の前ではそれを本人が話題にしても笑ってそれを回避するような態度をとる。
 「死」とは「関係性の不在」であり、「関係性の演劇」においてそれを直接提示することはできない。繰り返される別れのエピソードは外部との関係性がしだいに希薄になってきていること、つまり、患者らが生きながら、ここで死んでいる状況を平田は象徴的に提示しているわけだ。

コロナ禍以降日本の現代演劇に「死と生」をモチーフとした作品が目立ち、平田がこの作品の再演を選んだことにはそういう流れを踏まえた部分があると思われるが、「関係性の演劇」の場合、「死」は多くの場合、「関係の不在」として立ち現われ、つまり平田の方法論では「死そのもの」を描くことは困難なのだ。それで描かないことやメタファー(隠喩)を多用するなどの技法が駆使されるわけだが、観劇する人はそのアクロバティックな妙技を堪能すべきだろう。

作・演出:平田オリザ
高原のサナトリウムで静養する人、働く人、面会に訪れる人…。
静かな日常のさりげない会話の中にも、死は確実に存在する。
平田オリザが新たに見つめ直す「生と死」。

1991年初演の名作を8年ぶりに再演。

チラシに関する誤植のお詫び・訂正(2021.12.12)
『S高原から』公演チラシにおいて、記載内容に一部誤りがございました。
深くお詫び申し上げますとともに、次のとおり訂正させていただきます。

<訂正内容>
【誤】 1992年初演の名作を8年ぶりに再演。
【正】 1991年初演の名作を8年ぶりに再演。

出演
島田曜蔵 大竹 直 村田牧子 井上みなみ 串尾一輝 中藤 奨 南波 圭 吉田 庸
木村巴秋 南風盛もえ 和田華子 瀬戸ゆりか 田崎小春 倉島 聡 松井壮大 山田遥野

スタッフ
舞台美術:杉山 至
舞台監督:中西隆雄 
舞台監督補:三津田なつみ
照明:西本 彩
衣裳:正金 彩 中原明子
宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子 太田裕子
宣伝写真:佐藤孝仁
宣伝美術スタイリスト:山口友里
制作:金澤 昭 赤刎千久子

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4月のお薦め芝居(2022年)by中西理(改稿掲載)

4月のお薦め芝居(2022年)by中西理(改稿掲載)


(復刻版、えんげきのぺーじでおなじみの「お薦め芝居」を復刻)*1

 「お薦め芝居」はコロナ禍で公演中止が相次いだ2020年3月以来、中断していたが4月から再開することにした。毎月月末ごろまでに次の月のものを掲載する予定*2






 私が個人的にもっとも注目しているのは劇団あはひ「流れる」「Letters」★★★★(4月3~10日、東京芸術劇場)の2本立て。芸劇eyesの企画による過去上演された秀作の再演なのであるが、特に「Letters」*3エドガー・アラン・ポーの探偵小説を原作に換骨奪胎し「生と死のあわひ」を描いた好舞台で私の2021年ベストアクト*4上位に選んだ作品。KAATでの初演は観た人も限られていたと思うので、今度こそぜひ貴重な機会を生かしてほしいと思う。劇団あはひは早稲田大学出身の若手劇団だが、在学中に本多劇場での公演を行い、続いてKAATでも公演、今回は東京芸術劇場の企画公演にも選ばれた。早稲田にひさびさに現れた次世代のスター劇団候補だと思う。
 追伸 「Letters」は大幅改定に伴い表題も「光環(コロナ)」と改め、事実上の新作として上演されることになった。表題からしてコロナ禍と関係のある作品になるのだと思われ注目したい。





 次に選ぶのは一転して大家の作品。青年団「S高原から」★★★★(4月1~24日、こまばアゴラ劇場)は平田オリザの代表作のひさびさの再演である。昨年のベストアクトの中で生と死のあはひを描いた作品が目立つとの傾向を指摘したが、この作品も死を直接は描かない「関係性の演劇」の手法の中で高原にあるサナトリウムの入院患者とそこへの訪問者、病院職員を群像劇として描き出すことで、死に迫った作品であり、いまの状況を再考するのに最適の作品ということができるかもしれない。





五反田団『愛に関するいくつかの断片 』★★★★(4月25日~5月5日、アトリエヘリコプター)も前田司郎作・演出の2年前にコロナ禍で中止になり、そのままになっていた作品を2年越しで上演するということで見逃せない。「よく分からないけれど、みんながあると思っているような愛について書かれています」と作品のフライヤーで前田司郎が語っているが、これまで前田作品に慣れ親しんできた観客にとっては「何か眉唾だな」としか思えないのだった。その直前に演劇に対する愛のことが語られているので愛っていうのは男女の愛情ではなくて、演劇への愛ということだろうか。それだったら少しは分かるような気もするけど(笑)。いずれにせよ見逃せない舞台である。




ロロ新作本公演『ロマンティックコメディ』★★★★(4月15日~24日、東京芸術劇場)も見逃すことができない。現在もっとも乗りに乗った演劇作家といえばロロの三浦直之の名前をはずすわけにいかないからだ。失恋の大家として知られる三浦だが今回は粗筋によれば「愛とか恋とは違う形でロマンティックを見つけたい」ということらしい。キャストをみると「いつ高」シリーズに出演していた俳優が勢ぞろいしているようだが、これでどんな新たな物語を見せてくれるのだろうか?楽しみでならない。

劇団ロロ新作本公演
数年に一度やってくる移動図書館で開かれる読書会。「ブレックファストブッククラブ」のメンバーたちは、そのときにだけ集まって、長い時間をかけながらゆっくりと一冊の本を読んでいく…。

愛とか恋とは違う形でロマンティックを見つけたい。たとえばなんだろう。たとえば、読みかけの本を閉じて顔を上げたときとか。本を読む前の冬の日差しと、本の中の夏の景色と、本を閉じたあとに見上げた夜空が、混ざり合うほんの一瞬。そういう瞬間をたくさん集めて、物語を満たしたい。
■日程:2022年4月15日(金)~4月24日(日)
■会場:東京芸術劇場シアターイース

■脚本・演出:三浦直之

■出演:
亀島一徳 篠崎大悟 望月綾乃 森本華(以上、ロロ)
大石将弘(ままごと/ナイロン100℃)
大場みな
新名基浩
堀春菜






シベリア少女鉄道『どうやらこれ、恋が始まっている 』★★★★(4月8~17日、俳優座劇場)は最近テレビのコントやドラマにも脚本を提供している鬼才、土屋亮一による新作。この劇団については「とにかく騙されたと思って一度見てみてほしい。驚くから」としか言いようがないのがもどかしいが、公演があるなら必見であることは間違いない。
 土屋亮一は私立恵比寿中学の演劇プロジェクト「シアターシュリンプ」でも作演出を手掛けていたが、最後に予定されて台本も脱稿していた新作がメンバーの急逝で中止になったままになっている。この作品現在のメンバーでぜひ上演をしてほしいのだが……。

シベリア少女鉄道 vol.34
『どうやらこれ、恋が始まっている 』

【日程】2022年4月8日(金)~17日(日)
【会場】俳優座劇場

【作・演出】土屋亮一
【出演】
小関えりか
川井檸檬
浅見紘至(デス電所
イトウハルヒ
仁科かりん
兼行凜
大見祥太郎
曽根大雅(東のボルゾイ) ほか

【一般前売開始】 2022年3月19日(土)10:00~
【料金】 前売5,000円(税込)/当日5,500円(税込) ※全席指定・座席選択制

<来場購入特典>
①劇場に来場した方全員に特典として、漫画家・米代恭氏書き下ろしの本公演イメージビジュアルを使用した<特製クリアファイル(公演おたのしみコンテンツも封入)>をプレゼント
②さらに、配信では観られない<生おたのしみコンテンツ>を開演10分前に上演
【プレイガイド先行】
2022年3月12日(土) 12:00 ~ 3月18日(金)18:00(先着)
お申込みURL: https://eplus.jp/siberia-e/

<配信> ( 『Streaming+』視聴券)
【販売開始】 2022年4月2日(土)10:00~(配信期間終了日の4月26日(火)17:00まで購入可)
【料金】 3,000円(税込)
【配信スケジュール】 2022年4月19日(火)~26日(火)19:29まで
※内容は4月13日(水)の昼夜回を収録・編集したものになります。

【お問合せ】 シベリア少女鉄道 info@sibera.jp 090-4417-3803(10:00-20:00)
【劇団公式HP】 http://www.siberia.jp/





4月はコロナ禍で中止になった公演の復活上演も目立つかHANA'S MELANCHOLY 『風-the Wind-』★★★(4月16~25日、シアター風姿花伝)もそういう1本。HANA'S MELANCHOLY は劇作・一川華、演出・大舘実佐子という2人の女性コンビニよる演劇ユニット。これまでその作品を年間ベストアクトに取り上げるなど注目してきた集団である。
性を含む社会性の高い問題に切り込むが、その作品自体はリアリズムというよりは2・5次元演劇的なエンタメ性も感じさせる作りとなっているのが特徴。一方で物語性を重視した骨太な作りなど最近の小劇場演劇の流れとは一線を画した動きを注目している。 『風-the Wind-』はすでに日米でのリーディング公演を経て、周到に本公演を準備してきたものだけに優れた成果への期待が高まっている。

【概要】
シアター風姿花伝劇作家支援公演 HANA'S MELANCHOLY 『風-the Wind-』を2022年4月に上演いたします。日米でのリーディングを経て、初のプロダクション上演となります。是非、ご期待ください。

【梗概】
現代東京。性風俗店で働く奈菜子は、自分の心を奮い立たせるために龍の刺青を彫る。すると、身体の値段が他の風俗嬢よりも安くなってしまう。自身の価値に疑問を問い続けていたある日、一冊のパンフレットが届く。そこには「世界の恵まれない女の子へ、支援を」と書いてあった。

東京とアフリカのどこかの小さな村。一本の電話を通じた、二人の少女の交流を描き出す。

【プロダクションヒストリー】
2019 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」フリンジ オープンエントリー作品 
2020 米国 ノートルダム大学 オンラインリーディング
2022 モントリオール女性劇作家国際会議 公式プログラム
   ※新型コロナウイルスの影響を受け上演中止
その他注意事項 【ダブルキャストにつきまして】
当公演では2班によるダブルキャストで上演致します。
公演により出演チームが異なりますので、事前にご確認下さい。

Ⓐ班…奈菜子:いしがめあすか/ルーシー:増田野々花
Ⓑ班…奈菜子:白濱貴子/ルーシー:簑手美沙絵
※急な変更が発生する場合もございます。予めご了承下さい。

【作品に関する注意】
本作品は下記の描写、表現を含みます。観劇前に必ずご確認下さい。対象年齢は定めておりませんが、中学生以上の観劇を推奨しております。

1. 女性性器切除
2. 男女による性描写
3. 自殺を仄めかす表現(リストカット・駅ホームへの飛び込み)
4. その他:肉体破損を示唆するワード、性器の名称などを含むワード

※2022年2月1日(火)更新

【上演台本の無料貸出につきまして】
当団体では上演前に希望者の方に上演台本の無料貸出を行います。
ご予約方法などの詳細につきましては3月上旬に公開いたします。

スタッフ
作:一川華
演出:大舘実佐子
音楽:高根流斗
音響:竹下好幸
照明デザイン:松田桂一
舞台監督:みさわだいち(Team連)
演出助手:桜田実和(東のボルゾイ)、千一、大貫友瑞
広報デザイン:松島遥奈
メインビジュアルイラスト:蔡云逸
制作:栗間夏美、川崎歩(歩夢企画)
協力:歩夢企画、柿喰う客、株式会社エッグスター、株式会社ミズキプロ、北区AKT STAGE、劇団青年座、Team連、東のボルゾイ(五十音順)
主催:合同会社風姿花伝プロデュース

 





ピュアマリー「新★名探偵ポワロ」★★★アガサ・クリスティー戯曲の上演。クリスティーは演劇史で取り上げられることはあまりないが、実は現在まで空前絶後のロングランを続けている「ねずみとり(マウス・トラップ)」をはじめ英国演劇を代表する興行成績を連発した人気劇作家でもあった。日本でも「そして誰もいなくなった」や「検察側の証人」など繰り返し上演されている人気演目も多いが「新★名探偵ポワロ」という表題で今回上演される戯曲「ブラック・コーヒー」は初期の作品でもあり、あまり上演されたことがないのではないかと思う。

2022年4月
8日(金) 14:00/19:00
9日(土) 12:30/16:30
10日(日) 12:30/16:30

※開場は開演の30分前を予定

公演内容
ロンドン郊外に居を構える 著名な科学者エイモリ―卿の邸の平穏な晩餐
食後のコーヒータイム、卿が意外な事実を明かし 居合わせた者たちに異様な緊張感がはしる
「邸内にいる誰かが、夕食前に金庫から極秘書類を盗み出した 今から部屋の灯りを消している間に、書類を返せば罪には問わない」
しかし再び灯りがついたとき、事件は起った
混乱のさ中、卿が書類の調査を緊急依頼していた名探偵ポワロが到着
エイモリ―卿の息子夫婦、お喋りな妹、若い姪、秘書、執事、謎の訪問者、
ポワロの指南で次第に露呈していく家族の秘密
追い詰められていく犯人とポワロの頂上決戦!

出 演
辻本 祐樹/髙橋 由美子/瀬下 尚人/横山結衣/由地 慶伍/五東由衣/大至/岩田 翼/坂元 亮介/真京 孝行/山沖 勇輝/丹羽 洸大




 

ひとごと。こどもとつくる舞台vol.2「はなれながら、そだってく。」★★青年団の山下恵実が主宰する「ひとごと。」が、子供たちの発想により作られた物語や絵を、ダンスや歌や芝居にして上演する企画“こどもとつくる舞台”の第2弾だ。演出を山下が担当し、出演者には小野彩加、川隅奈保子、中條玲、藤瀬のりこ、古屋隆太、松田弘子が名を連ねている。この枠組みの作品を見るのは初めてだが単なる子供向けの舞台ではない。キャストにはスペースノットブランクの小野彩加や松田弘子、川隅奈保子、古屋隆太ら通常ならば青年団の本公演でメインキャストを演じるような俳優陣が揃っており内容にもかなりの期待ができそうだ。

2022年4月28日(木)~5月8日(日)
東京都 こまばアゴラ劇場

演出:山下恵実
テキスト:こどもたち
出演:小野彩加、川隅奈保子、中條玲、藤瀬のりこ、古屋隆太、松田弘




 
 お薦め芝居。とりあえずブログ「下北沢通信」で展開中だが、もし掲載可能なメディアがあればぜひ載せてほしいので、連絡をお願いしたい。
 演劇・ダンスについても書いてほしいという媒体(雑誌、ネットマガジンなど)も鋭意募集中。相談はメール(simokita123@gmail.com)でお願い。ブログに書いたレビューなどを情報宣伝につかいたいという劇団があればそれも大歓迎。メール下さい。パンフの文章の依頼などもスケジュールが合えば引き受けます。新規劇団発掘にも力を入れています。招待メールなどいただければ積極的に観劇検討します。

 大劇場中心のお薦め芝居紹介サイト*5発見したが、全然重ならない。見落としがないようにチェックしたいのだが、どこか適当なサイトがないかしら。関田育子の公演見逃してしまった。





中西


*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:最近チケット代にかけられるお金があまりなくて、妻からの締め付けも強いので、招待状をいただける劇団があると本当に嬉しい。

*3:simokitazawa.hatenablog.com

*4:simokitazawa.hatenablog.com

*5:www.fashion-press.net

いぎなり東北産「TOKYO INVADER II」@東京ドームシティホール

いぎなり東北産「TOKYO INVADER II」@東京ドームシティホール

いぎなり東北産「TOKYO INVADER II 」を見た。スタプラの妹グループの最近の躍進ぶりには驚かされるばかりだが、勢いの良さならここが一番かもしれない。

開催日 2022/03/26(土) 18:00(開演)
会場 place 東京ドームシティホール

simokitazawa.hatenablog.com

www.youtube.com
live.nicovideo.jp

「ONE TIME」AMEFURASSHI@YMCA スペースYホール

「ONE TIME」AMEFURASSHI@YMCA スペースYホール

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AMEFURASSHIの楽曲は「メタモルフォーズ」を境に音楽性がかなり変容しているが、今回のライブ「ONE TIME」は二部構成で一部が「PAST」と題し、「メタモルフォーズ」より前の過去曲で構成。第二部は「NOW」と題し「メタモルフォーズ」以降の最近の楽曲中心のセットリストとなった。今回のライブは有料とはいえ、新アルバム「DROP*1のリリースイベントの一環として開催されたようなところがあり、特に「SENSITIVE」以降の最近ファンになった人たちにとっては一部のセトリは衝撃的だったかもしれない。既存楽曲全曲ではないにしても「轟音」など最近はあまり披露されない楽曲も選択されており、MCで市川優月が「きょう来た人は即古参だと自慢できる」などと言っていたのは思わず笑ってしまったが、一部は衣装もメンバーの間ではクジャク衣装と呼ばれているらしい昔の衣装も見られて「お得感」が強かったかもしれない。
 私は一部、二部を続けて見たのだが、こういう風に見ると楽曲だけでなく、ダンスと歌の関係性とかパフォーマンス自体の方向性がまったく違ってしまっているのがはっきりと分かる。新アルバムにはさらに5曲新たな方向性の新曲が入るらしいので、そうなると今度はワンマンライブでも第一部で披露されたような昔の楽曲が披露される頻度は減ってしまいそうで、それもあっての今回の内容だったかもしれない。
 それにしても上着を脱ぐ、衣装の着替えなどを含め、第二部のライブの一連の流れるような展開はちょっと他のアイドルでは見られないほどのもので、ライブやフェス、リリイベは数多くこなしてきたことによる経験値が着実に蓄積されていることに感心させられた。もうどこの場所でも通用すると思うので、せっかくメジャーのコロンビアが絡んだのだから、夏以降小規模なアイドルフェスにとどまらず、野外のロックフェスなどにも参戦してほしいと思った。さらに言えば愛来が「ブルーノ・マーズみたい」と評した曲やハイパーポップ曲など今後発表されていく新曲がますます楽しみだ。

「PAST」
M1.Rain Makers!!
M2.轟音
M3.グロウアップ・マイ・ハート
M4.Dark Face
M5.ハイ・カラー・ラッシュ
M6.フロムレター
M7.Over the rainbow
M8.STATEMENT

「NOW」
M1.DROP DROP
M2.BAD GIRL
M3.MICHI
M4.Lucky Number
M5.SENSITIVE
M6.メタモルフォーズ
M7.Staring at You
M8.DISCO-TRAIN

■公演情報【1部】
・出演:AMEFURASSHI
・日時:2022年3月26日(土)
・開場12:05 開演12:20
・物販13:05~

■公演情報【2部】
・出演:AMEFURASSHI
・日時:2022年3月26日(土)
・開場16:05 開演16:20
・物販17:05~

■会場:YMCA スペースYホール
最寄り駅:御茶ノ水、水道橋、神保町

プロセスアートとしてのソロダンス ワーク・イン・プログレス。福留麻里ソロダンス ワーク・イン・プログレス「まとまらない身体と」

福留麻里ソロダンス ワーク・イン・プログレス「まとまらない身体と」

ダンサー・振付家 福留麻里*1の約5年ぶりのソロダンスプロジェクトが ワーク・イン・プログレス「まとまらない身体と」である。面白いのは実際に見に行くまではしかるべき未来に「まとまらない身体」というダンス作品を上演するための準備過程(プロセス)としてのワーク・イン・プログレスと思いこんでいたが、そうではないことだ。これは永遠に変化し続けることはあっても最終的なアウトプットとしてのダンス作品上演には向かわない、一連のプロセス自体が作品なのだ。
福留麻里はダンスデュオ「ほうほう堂」*2のひとりとして毎年のようにコンテンポラリーダンスコンペティションにノミネートされたり、ダンスショーケースに選ばれていたコンテンポラリーダンス界のトップランナーのひとりといっていいが、最近はより実験的な他のアーティストらとの共同制作などに軸足を置いていた。コロナ禍のこともあり今回初めて知ったが子供の出産などもあり、現在は山口県に拠点を移しているようで、そこからどんな新しい作品が登場してくるかは大いに注目である。
過程自体が作品と言うのは現代美術には実例はある(クリストのラッピングプロジェクト、中ハシ克シゲの"ZERO Project"などが有名)けれども、パフォーミングアーツではあまり聞いたことがなくて、コンセプトとしてはこれとはだいぶ違うけれど京都のダンスカンパニー「Monochrome Circus」が以前行ってきた「収穫祭」プロジェクト*3が思い浮かぶ程度。試みとしては非常に野心的だと思う。
作品自体はどういうものかというと福留真理が日常の中で収集してきた短い動き(音楽でいうフレーズのようなもの)が現在までに90個少しあって、まずは福留はそのうちのいくつかの動きをその場で選択して、15~20分程度動いてみせる。動きには身体だけを使うもの以外にも現場にいろいろ置かれている小道具(オブジェ)を使って行うものもあり、それをダンスと呼ぶことが適当かどうかは分からないけれども、動きをつないで一連の動きにしたものを観客(というかその場に居合わせた参加者)に見せていく。
それが一段落したところで一度質問タイムがあって、今度はそれぞれの動きがどうやって生まれたものなのかを「この動きについて教えて」のようなやりとりで紹介する。実はこのやりとりがただ解説するというようではなくて、ところどころで「どんな風に見えたか」というような問いをして、そういう見え方みたいなものを今度は動きというか、振付の解釈にフィードバックしていく。
そういう仕掛けで動きないし振付がどんどん進化していく。ここにこの作品のプロセスの面白さがあると感じた。この質問コーナーの面白さは時折観客が一連の動きの中に踊り手が意識しているわけではない「こういう動き」みたいなものを読み取ることがあり、そういうものが出てくると今度はそれはどこでどんな動きを読み取ったのかなどを聞き出して、新たな「動き」として収集し、日常生活の中での動きの収集にとどまらず、そういうことでも動きを増やしていくのである。
それが終わった後、今度は最初の動きの中で動いた動きをつないでもう一度踊るのだが、これは最初から最後まで同じ動きをトレースするというのではなく、前にやった動きをその場その場で選びながら踊るのだ。これを見ていて非常に興味深く思ったのはそれを対象としてみる場合にこちらは踊る人ではないので最初は大雑把に感覚的に把握しているに過ぎなかった作品の動きが知っている動きがそこここで登場することで、ひとかたまりのダンス作品のようなものとして把握しやすくなったことに気が付いたからだ。作品自体にほとんど言葉は登場しないけれど、動きに張り付けた言葉のレッテル(動きに名前をつけて、それを把握する作業)が間に介在することで、ただのいろんな動きという以上の意味合いが生じてくるのだ。


ダンスは色々なことからはじまって、その一つひとつの゙行き交う場所が 踊る身体です。 それぞれにバラバラなダンスのはじまりが、なるべくまとまりのないまま 集合できるような時間について、つながりのないものがつながっていくことについて、それを見るということについて考えながら進んでいます。

2021年2月から1年かけて、様々な変化をからだで辿りながら、
50以上の小さな振付を作ってきました。
振付は増えていき、繰り返される上演を終えても完成することなく続いていきます。
むすびつき ほどけて 消えていく 小さなはじまりの残像集。

ダンス:福留麻里
セノグラフィー:佐々木文美
宣伝美術:伊東友子
制作:萩谷早枝子
協力:時里充
主催:ローディング・エレファント