ももいろ歌合戦のもうひとつのセールスポイントは本編に挟まれていくつか展開された特別企画であろう。冒頭に挙げた「アイドルメドレー2020」もそのひとつだが、それに負けないほど充実していたのが「今年の顔2020」と「機動戦士ガンダム〜はじまりのはじまり〜」だ。 紅白歌合戦には今年の若者人気の顔としてYOASOBIが登場したが、こちらも負けず劣らずの顔ぶれ。中でも話題の主として紅白に出ていてもおかしくないのにこちらに出ている目玉として「ポケットからきゅんです!」のひらめとプロ野球日本一のソフトバンクホークスから石川柊太投手の登場。今回は本編でも新アルバム「田中将大」発売に合わせたように田中将も出演。ファンキー加藤と一緒の「On Your Mark」が初披露したが、この日米野球界のスターをあえて絡ますことをしていないのもももクロらしいといえるかも言えない。それにしてもAKBイベントへの参加をももクロにアイドルDDと糾弾された田中将を継承するかのようにこの歌合戦でたこやきレインボー(たこ虹)と出会って一緒に写真を撮っていた石川が年明けのたこ虹の配信番組のコメント欄に降臨していたのには笑ってしまった*6*7。
▼今年の顔2020
・ファーストサマーウイカ with ハラミちゃん/「紅蓮華」
・えなこ/「名探偵キミに次ぐ」
・川崎鷹也/「魔法の絨毯」
・石川柊太 with 佐々木彩夏/「仕事した」
・KANAKOO/「香水」
・703号室/「偽物勇者」
・ひらめ/「ポケットからきゅんです!」
ご本人が紅白に出演している「紅蓮華」と「香水」ではバラエティー番組の活躍などで知られるファーストサマーウイカ with ハラミちゃんで対抗。出演が予告されながら歌合戦の紅白のセトリにはなかったKANAKOOが歌うことで対抗した。BiSの元メンバーだというのは知ってはいたが、ファーストサマーウイカ の歌唱力の高さには驚かされた。紅白では覆面グループのGReeeeNがCG映像で歌ったが、こちらはやはり覆面歌手のひらめがチープなお面を着けて歌い、インタビューコーナーにも出演。意図したわけではないだろうが図らずもアングルになっていて、それも笑えるポイントだった。
現在私がもっとも注目している女性ボーカル&ダンスグループがアメフラっシである。ということがSpotifyの私個人の2020年の視聴アクセスランキングから分かった。私自身はあくまでももいろクローバーZのファンであり、他のグループはあくまでそれとの関係から聞いていたという認識だったのだが、こういう数字的な結果から見ると認識を改めざるをえないかもしれない*1
そういうわけで、コロナ感染者が急増している現状で、(ニコニコ生放送での配信もあるようなので)ずいぶん迷ったのだけれど、今年最後のライブに出かけてみることを決めた。結論からまずいうと今回のライブは本当に素晴らしくて、会場でそれを体験できたのは至福の経験だったが、ニコニコ生放送はしばらくアーカイブを残している*2ようなので、妹グループをあまり知らないというももクロファンもぜひ見てほしいと思う。イメージが一変するはずだ。
「新曲試演会」が第1部。冒頭で「 BAD GIRL」を初披露。少し洋楽っぽいというか、K-POPに寄せたような香りのする楽曲でパフォーマンスを含めてスタイリッシュそのもの。
こういう楽曲をこともなげにこなしてしまえるのが、アメフラっシの強みであり、ネット上では「最近アメフラっシってこんな風なの?私はどうも」との声もあったようだが、第三部のライブを見てもらえばもっとはっきり分かるように楽曲内容の広がりにおいて新たな武器をまたひとつ手に入れたということじゃないかと思う。
第一部ではゲストで「明後日の方向へ走れ」「雑踏の中で」「STATEMENT」の作曲者である藤田卓也氏が登場。彼のピアノ独奏でのアコースティックバージョンのパフォーマンスが披露されたが、通常のアレンジとはまったく異なる趣きで、こうしたことをこなすには相当以上の歌唱力が必要だが、このグループにはそれがあるということをはっきり見せつけた。改めて感じたのだが、小島はなの歌が素晴らしい。アメフラっシを引っ張ってきた愛来、鈴木萌花の歌のうまさはもちろん健在だが、小島はなのこの日の歌は年長組2人に何のひけもとらないと感じさせるもので、安定度ではむしろ上回っているのではないかとも感じた。市川優月の一層の進歩も併せて、4人のアンサンブルのバランスはより高い次元に進化したことを感じた。バラード調でピアノだけで歌い上げた「STATEMENT」はももクロの「灰とダイヤモンド」を思い起こさせるようなところもあった。
続けてもうひとつの新曲「starring at you」も披露された。これはまだ楽曲アレンジなどはこれから行うという段階で歌割りもユニゾンが多く、仕上がった時にどんな風になるかは不明なところもあるが、こちらもキラーチューンになりそうな予感のする楽曲だった。
アメフラっシ感謝祭第2部はバラエティのノリに油断していると突然のあーりんが降臨。そして、最後は4人で「勇気のシルエット」。恵比寿ガーデンホールは3Bjuniorが最後にこの歌を歌った会場であり、アメフラっシが生まれた場所でもあった。
とはいえ、この日の白眉というか、圧巻だったのが第三部の『がっつりライブ2020』である。ももクロに例えて言えば会場規模は異なるが、最初の横浜アリーナ2日目といったところだろうか。映画館でおなじみの「20th Century Fox Fanfare」をOverture代わりに登場した後はMCを一切挟まず13曲をノンストップでパフォーマンスしてみせた。私はアメフラっシをアイドル界屈指の戦闘集団だと思っているのだが、集中した時に見せる気迫は鬼気迫るものがある。この日のパフォーマンスを見る限り、アメフラっシにはライブを俯瞰してみるような視点はまだ乏しく、ももクロやたこ虹のような緩急はないけれど、一発勝負短期決戦ならスタプラ最強の位置にいるのではないかと感じた。今年は対バンも難しく、フェスもほとんどがオンラインフェスであったが、来年以降コロナ感染の状況が改善し、外に撃って出ることが可能になったら、他流試合で相手ファンを黙らせるだけの実力を身に着けたのではないかと思う。
この日感心させられたのは「メタモルフォーズ」「MICHI」や新曲など最近の楽曲のよさはもちろんなのだが、歌やダンスの進化によって過去曲が確実にアップデートされていることだ。どの曲も素晴らしかったが「Dark Face」「BAD GIRL」「STATEMENT」「グロウアップ・マイ・ハート」の終盤4曲の怒涛の畳み掛けは圧倒的な勢いを感じさせた。
アメフラっシ大感謝祭2020
恵比寿ザ・ガーデンルーム
[1部]『新曲試演会』
M1 BAD GIRL(新曲)
M2 MICHI
MC 自己紹介
シークレットゲスト
藤田卓也さん ピアノ伴奏
M3 明後日の方向へ走れ
M4 雑踏の中で
M5 STATEMENT
MC
M6 starring at you(新曲)
SE 20th Century Fox Fanfare
M1 Rain Makers!!
M2 メタモルフォーズ
M3 MICHI
M4 フロムレター
M5 ハイ・カラー・ラッシュ
M6 轟音
M7 Over the rainbow
M8 雑踏の中で
M9 ミクロコスモス・マクロコスモス
M10 Dark Face
M11 BAD GIRL
M12 STATEMENT
M13 グロウアップ・マイ・ハート