下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

「東京ノート」から「もしイタ」まで  連載)平成の舞台芸術回想録 第一部・第二部

連載)平成の舞台芸術回想録 第一部・第二部

 自粛期間中に演劇公演の予定がほぼなくなったことで新たな観劇レビューなどを書く機会がなくなった。空き時間も増えたことからこの機会に「平成の舞台芸術回想録」と題して、ここ30年間に観劇した舞台のうち私が日本の現代演劇史において重要であると考えている作品20本について書き記すことにした。過去雑誌やブログに書いたレビューを引用しているのは手を抜いているわけではなくて、観劇当時に受けた印象がどういうものであったかを少しでも伝えたいと考えているからだ。そうした空気感も含め現代の演劇ファンが少しでも感じ取っていただければと思う。全体の膨大な文章量に敬遠する読者も多いと思うが、暇な時に少しづつ拾い読みしていただければ日本演劇の概観がつかめるように考えたつもりである。
「平成の舞台芸術回想録」(1)~(10)
平成の舞台芸術回想録 青年団東京ノート」(1)
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平成の舞台芸術回想録 ダムタイプ「S/N」(2)
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平成の舞台芸術回想録 チェルフィッチュ「三月の5日間」(3)
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平成の舞台芸術回想録 ままごと「わが星」(4)
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平成の舞台芸術回想録 上海太郎舞踏公司ダーウィンのみた悪夢」(5)
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平成の舞台芸術回想録 木ノ下歌舞伎「東海道四谷怪談」(6)
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平成の舞台芸術回想録 玉田企画「あの日々の話」(7)
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平成の舞台芸術回想録 劇団ホエイ「郷愁の丘 ロマントピア」(8)
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平成の舞台芸術回想録 維新派「呼吸機械」(9)
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平成の舞台芸術回想録 松田正隆青年団プロデュース)「月の岬」(10)
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「平成の舞台芸術回想録第二部」(1)~(10)

平成の舞台芸術回想録第二部(1) 弘前劇場「家には高い木があった」
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平成の舞台芸術回想録第二部(2) ク・ナウカ(SPAC)「天守物語」
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平成の舞台芸術回想録第二部(3) 大人計画「ファンキー!」
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平成の舞台芸術回想録第二部(4) 劇団☆新感線阿修羅城の瞳
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平成の舞台芸術回想録第二部(5) ナイロン100℃「カラフルメリィでオハヨ」
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平成の舞台芸術回想録第二部(6) 東京デスロック「再生」
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平成の舞台芸術回想録第二部(7) 青森中央高校「もしイタ」(渡辺源四郎商店「月と牛の耳」)
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平成の舞台芸術回想録第二部(8) ミクニヤナイハラプロジェクト「3年2組」
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平成の舞台芸術回想録第二部(9) ヨーロッパ企画サマータイムマシン・ブルース
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平成の舞台芸術回想録第二部(10) シベリア少女鉄道耳をすませば

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ガールズ・グループの祭典 RAGAZZE!~少女たちよ!~@NHK総合 

ガールズ・グループの祭典 RAGAZZE!~少女たちよ!~@NHK総合


20/04/11 ガールズグループ総勢68名参加 グループの垣根を超えたトークコーナー & BACKSTAGEをちょこっと見せ
 ももいろクローバーZモーニング娘。'20、AKB48を含むガールズグループ7団体が参集し、2月28日にNHKホールで開催された無観客アイドルライブを収録した放送の地上波再放送を見た。3月にまず1時間版の短縮版が地上波で放送され、4月に2時間の完全版をNHKBSで放送。今回は地上波でBS版を再放送した。コロナ禍でアイドル業界は観客を入れてのライブが開催できず、無観客でのライブ配信は一部でははじまったものの握手会などの接触はできない状況で、将来が見えない苦境にある。モーニング娘。の所属するハロープロジェクトなども「密」になるフォーメーションダンスなどの集団パフォーマンスは披露できず複数のグループのメンバーを集めて、それぞれがソロで歌を披露するような形式のライブを行っているようだ。
 ももクロも8月1日、2日にコロナ後初めての大規模ライブを西武ドームで予定し準備を進めていたが、昨今の東京を中心にした首都圏での感染者急増を踏まえて、ライブを中止し、無観客ライブで代替えすることを余儀なくされている。
 その意味ではコロナのせいで、無観客には追い込まれたが、各グループが自分たちのやりたいパフォーマンスができているこの番組は舞台裏でのグループの垣根を越えた自由な交流も垣間見られるという意味でも、ほとんどの活動がネットを通してを余儀なくされたアイドルファンにとってもいつ取り戻せるか分からない遥かなる桃源郷のように映ったのではないか。前回放送された4月時点ではこれほど長引いて、現時点でも観客を入れてのライブができず、今後の見通しも不明だという予想も完全には出来なかったから、今回の再放送で見え方もかなり違ってきたかもしれない。
 それにしても今回この番組を見直して改めて気が付いたのはアイドルをやっている子は他事務所も含めて推しがいたりするような本当のアイドル好きが多いのだなということだ。考えてみれば自らアイドルを目指してなろうとするような子たちにアイドル好きな子が多いのは当たり前のことだが、そういう意味で同じアイドルをやっていても大人の事情で互いの交流がほとんど行われていないような状況はどうなんだろうと思うし、ライバルとしての競争心はあってもいいけれどファン同士が争って互いに相手のことを「下手だ」「ブスだ」などとディスり合うことが往々にしてあるようなアイドルファンの現状も考え直した方がいいと思う。
 今回選ばれたグループの選び方については選ばれなかったグループのファンからは当然のように不満も出ているが企画趣旨としてやはり十年前にNHKホールに集結した3グループが再びそこに集まるというのがあったのだろう。それで、おそらく、それを前提にハロプロスタプラに若手グループを推してもらい、それに48グループではないけれど、指原莉乃プロデュースでその系譜に入ると思われる=LOVEが選ばれたということではないか。その意味ではすでに内定はしていたとは思うが、この時点ではメジャーデビュー前であったフィロソフィーのダンスが選ばれたのは大抜擢といってもいい。
 坂道シリーズは既存の音楽番組との差別化をはかるためにあえてはずしたと思うが、普通に人気だけを考えるなら、BiSHとかが選ばれていても全然おかしくないからだ。もともと歌唱力などの実力があり、それで選ばれたわけだが、フィロソフィーのダンスは貴重なチャンスを生かし見事に爪痕を残したと思う。
 =LOVEもそれは同じで、指原莉乃プロデュースということもあって、知らない人はAKBグループの亜流と思い込んでいた人も多いと思うが、生歌歌うんだということをはっきりと印象づけられたのはよかったのではないか。そして、そうさせていることはある意味モーニング娘。の熱狂的なファンでもある指原が自分が経験したAKBのよいところは生かしながらある意味飽き足らなさも感じていたんだろうなというのを想像させる意味で興味深い。
 ももクロモー娘。については前回の放映の時にかなり長い感想を書いたので、今回は書かないが、たこやきレインボーも短い時間の中でもしっかりとアピールに成功したのではないか。「どっとjpジャパーン!」 が入っていたのは今回の完全版には参加してなかったが地上波にDJKOOが出演していたのに合わせたのかなと思ったけれども、もちかしたらあれはハロプロファンシフトの選曲だったのかもと今回の番組を見て考え直している*1は特筆すべきものがあると思う。
AKB48の最初の曲は「少女たちよ」 で、この曲はあまり知らなかったのだが、「ガールズ・グループの祭典 RAGAZZE!~少女たちよ!」という番組の表題はここから取られている。興味深いのはAKB48のあゆみを詰め込んだ11曲スペシャルメドレー(会いたかった、大声ダイヤモンド言い訳Maybe、RIVER、ポニーテールとシュシュヘビーローテーションフライングゲット恋するフォーチュンクッキー、前しか向かねえ、365日の紙飛行機、ジワるDAYS) と過去のヒット曲のメドレーを入れてきたことで、モーニング娘。ももクロが「恋愛レボリューション21」や「行くぜっ!怪盗少女」など誰でも知っている過去のヒット曲をあえて外してきたのと対照的なセットリストであった。
 握手会だけの人気だと批判する人がいても、このグループがいかにヒット曲を連発して、誰でも聞いたことがある曲をたくさん持っている1時代を代表するグループであったかが、はっきり分かるけれども、逆に言えば私でも知っているメンバーが数人に減ってしまっているように同じミリオンセールスであっても人口に膾炙するような曲は 2015年の「365日の紙飛行機」が最後で、往時の勢いを失っている現状が浮き彫りになってしまったかもしれない。大人数による「密」を避けがたい、握手会など接触イベントを開くのが困難などポストコロナの壁に一番ぶち当たっているのがAKBで、そういう中でどういう新たなビジネスモデルの模索が可能なのかが注目される*2

BSプレミアム
4月11日(土)後10・30~深0・30
日時
2020年2月28日(金)
開場:午後5時
開演:午後6時30分
終演予定:午後10時

会場
NHKホール(東京都渋谷区神南2-2-1)
放送 午後10時〜
出演
=LOVE、AKB48、たこやきレインボー、BEYOOOOONDS、フィロソフィーのダンスモーニング娘。'20、ももいろクローバーZ (五十音順)
セットリスト(グループ別)

ももいろクローバーZ
「ロードショー」
Chai Maxx
「天国のでたらめ」
「走れ!-ZZ ver.-」

=LOVE
「ズルいよ ズルいね」
「手遅れcaution」
=LOVE

AKB48
「少女たちよ」
「彼女になれますか?」
「失恋、ありがとう」
AKB48のあゆみを詰め込んだ11曲スペシャルメドレー(会いたかった、大声ダイヤモンド言い訳Maybe、RIVER、ポニーテールとシュシュヘビーローテーションフライングゲット恋するフォーチュンクッキー、前しか向かねえ、365日の紙飛行機、ジワるDAYS)

たこやきレインボー
絶唱!なにわで生まれた少女たち」
「どっとjpジャパーン!」
「もっともっともっと話そうよ-Digital Native Generation-」

BEYOOOOONDS:
「眼鏡の男の子」
「ニッポンノD・N・A!」

フィロソフィーのダンス
「ダンス・ファウンダー」
「シスター」

モーニング娘。’20:
わがまま 気のまま 愛のジョーク
「泡沫サタデーナイト!」
「ジェラシージェラシー」
One・Two・Three(updated) 」
「愛の軍団」
「LOVEペディア」

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*1:))。  分かりやすい形で堀くるみを中心にしたファンキーな楽曲での歌唱技術の高さを短時間で示すには絶好の曲だからだ。そして、知名度を除けばやはりたこ虹のすべての面での総合的な要素の水準の高さ((グループの中で一番自分が可愛いにメンバー全員が手を挙げているのは、これを全員がふりだと解釈しているからで、もちろんたこ虹独特の団体芸である。時間の関係もあったけど、だれか突っ込んでほしかった。

*2:AKB本体ではないが、avexの無観客アイドルフェスにSKEではなく、傘下のユニットのカミングフレーバーが参加したのも、そういう戦略のひとつかもしれない。

アメフラっシ配信限定ライブ「Dancing in Ur Roooom!!!!」

アメフラっシ配信限定ライブ「Dancing in Ur Roooom!!!!」

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【Digest Movie】アメフラっシ初の無観客ライブ「Dancing in Ur Roooom!!!!」

 高城れにももクロの無観客ライブの幕間でサプライズ登場して3曲のみパフォーマンスを披露したが、単独としてはひさびさのアメフラっシライブであった。アメフラっシは最年長の鈴木萌花でも18歳で、スターダストプラネットの中でもまだ若いグループといえばそう言えるのだが、メンバーそれぞれは育成グループであった3bjunior時代から勘定に入れれば、アイドル歴自体はかなり長い。しかも、アメフラ結成後を見てみても歌もフジテレビNEXTの「ガチンコスターダストプラネット」などを通じて鍛えられており、その急成長ぶりをはっきりと見せることができたライブであった。
 今回のライブはセットリスト通りの楽曲が収録された初めてのアルバムの発売が決まっており、その意味ではアルバムライブともいえるのだが、ライブ中に発表されたのは今回のライブをそのまま収録した映像コンテンツがブルーレイとしても販売されることになっており、その意味では無観客ライブであるとともに映像コンテンツの公開収録の性格もある企画だったということだ。
 配信されるということだけでもミスはできないというプレッシャーによる緊張感は普段より大きかったと思うが、そんなことよりもやっとライブができるという解き放たれたような高揚感は大きかったようで、それが出来のよいパフォーマンスにつながったのではないかと思った。
 少し気になったのは新衣装のこと。個人個人を取り上げればその人の個性にあって似合っているといえなくもないが、あまりにバラバラで前回衣装にあったような統一性が感じられず、そのことの違和感は若干あったのである。真相は分からないが、勘繰ればこの衣装は愛来ありきだったんじゃないかと考えてしまったのだ。愛来の衣装はお腹の部分に露出もあり、K-POPの女性グループが着るようなボディーラインがはっきり出るタイプのもので似合うというだけでなく、彼女の踊るダンスの切れ味などをアピールするにも最適な衣装なのだが、おそらく、現状のメンバーの中ではこれを着こなせるのは愛来しかいない。ここでこの衣装を無理やり全員に着せると下手をするとかなりまずいことになりかねないから、こういうことになったのかもしれない。勘違いかもしれないが*1、私にはそう見えたのだ。
 アメフラっシの楽曲は佐藤守道が手掛けているが、最近は現場マネージャー的な役割も果たすなど、よりコミットの度合いが強くなったこともあってか、楽曲の充実にもより力を入れてきているのが分かるセットリストになっている。
 スタプラの若手グループではukkaの定評が高いが、曲調の多様性によってはアメフラっシが勝るともいえ、かなり楽曲の水準は高いのではないかと思う。特に今回ライブでは初披露となった「メタモルフォーズ」はこれまでのアメフラっシにはなかったような洗練さを感じさせる楽曲*2で、振付も良くできていた。
 他ではひさしぶりに聞いた「STATEMENT」がよくて、これはライブダンジョンで桜エビ~ズを打ち破った楽曲なのだが、こういう自分たちの思いをストレートに打ち出せるエモーショナルな楽曲こそが今の彼女たちには合っていると再確認させられた。
 アメフラっシは歌唱の面では鈴木萌花、ダンスでは愛来が抜きんでていて、この二人がグループを引っ張っていた。今もそれは変わらないが愛来が歌の面でも急成長していて、センターとしてよくも悪くも全体をけん引している感が強くなったかもしれない。
 ただ、この日見て一方で気が付いたのは小島はな愛来に劣らぬ急成長であり、パフォーマーとしても以前は子供感が強く、子供としての可愛らしさが前面に出ていたのが、ここに来て様子が変わってきている。そうなると市川優月がパフォーマンスにおいてのメンバーの中での立ち位置をどう確保していくのかの問題は今後のアメフラっシの方向性にとって大きな課題となってくるのではないかと感じた。市川ももちろん進歩はしているし、特に歌でピッチをはずすようなミスをすることはなくなったのだが、アメフラっシの場合は楽曲的にはアイドル曲というよりはガールズ・ポップやロック的な色彩の曲が多いので完成度が高くなってくればくるほど見劣りする部分があることは否定できないからだ。
 ただ、一方でコロナ自粛期間中の生配信を見ても分かるように切り込み隊長的なトーク力などにおいてはグループの中で抜きんでた安定感があり頼りになるのも確か*3。アイドルグループにおいてはこれは非常に重要な要素であることはももクロやたこ虹を見ていれば歴然と分かる。とはいえ、実は市川優月は口が悪い荒くれものキャラで売ってはいるけれど、今回は披露しなかった「バカップルになりたい!」などのキャラクター色が強い歌では飛び道具的爆発力を発揮できる。そうした個性をどのように拾っていけるかが、今後の課題かもしれない。
 ライブ終了後には日テレらんらんホールでの有観客ライブ(8月15日)の発表もあり、目標のメジャーデビューに向けて大きく動き出したのではないだろうか。以前は3bjunior時代からの経緯もあってtmmnが運営をひとりで回していた感があって、本当にメジャーデビューを目指すということなら、もう少し体制を強化する必要があるのではないかと考えていたが、無観客ライブ、アルバム発売、観客を入れてのライブと最近の足早な動きはいよいよ本腰が入ってきた感があり、スタダ内のほかのグループとの比較においてもことパフォーマンスの内容に関してはなんら遜色がないどころか、すでにメジャーデビューしているグループを凌駕している点もあるから、今後がますます楽しみなのである。
 メジャーデビューのタイミングとしては相手があるかどうか次第の部分はあるけれど、グループとしてはいい形での爆発的なスタートを切りたいから、観客がいないところでの発表はまずないはず。そうであるならば、タイミングとしては次の有人ライブ、あるいはそこでさらに次なる会場を発表したうえで、そこでのサプライズぐらいがありうるのではないかと思う。このところ、スタプラではメンバーの脱退やグループの解散・改組が相次いだから、将来展望を考えていくうえで、アメフラっシのメジャーデビューは大きな契機となるはず。メンバーでは愛来のメジャー感が増してきているだけにこの勢いをなんとか生かしたいところだが。

M1 メタモルフォーズ
M2 Rain Makers!!
M3 ハイ・カラー・ラッシュ
M4 轟音
M5 グロウアップ・マイ・ハート
MC 自己紹介
M6 月並みファンタジー
M7 Dark Face
M8 ミクロコスモス・マクロコスモス
M9 雑踏の中で
M10 Over the rainbow
MC
M11 STATEMENT
ムービー
EN1 グロウアップ・マイ・ハート
MC グッズ、アルバム、Blu-ray販売紹介
EN2 明後日の方向へ走れ
MC
8/15 アメフラっシ有観客ライブ発表
「RUN!RUN!LIVE!2020」@日テレらんらんホール

*1:ネットなどを探ってみても不評な意見はあまりないようなので単に私の個人的趣味の問題でこれでいいのかもしれない。

*2:これまでは荒々しさ、勢いを感じるような楽曲が主流だった。

*3:逆にあれだけパフォーマンスにおいて抜きんでている鈴木萌花だが、バラエティーなどではほぼ戦力外状態である(笑)。

ポストコロナにフィクションは可能か? 谷賢一によるひとり芝居 DULL-COLORED POP「アンチフィクション」@シアター風姿花伝

谷賢一によるひとり芝居 DULL-COLORED POP「アンチフィクション」@シアター風姿花伝

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DULL-COLORED POP 第22回本公演「アンチフィクション」
2020年7月16日(木)~26日(木)
東京都 シアター風姿花伝

作・演出・出演:谷賢一

コロナ禍による自粛後、初の劇場での演劇公演観劇となった。最近、東京でのコロナ感染者が再び増加に転じている現在の状況もあり、「やった、はじまったぜ」という気分には到底なれずに行くかどうかにも躊躇したが、すでに予約して料金も払い込んでいたこともあり、出かけてみた。
 私は最前列だったこともあり、演者の飛沫除けというフェイスシールドを会場入り口で渡され、自前のマスクに加えてフェイスシールドも装着しての観劇となった。実際にはマスク越しの自分の息でフェイスシールドが白く曇る結果ともなり、見にくいといえば見にくい。ただ、今回は特にアトラクション的な臨場感があり、刺激的な体験でもあった。
 入場できる観客の数は通常の半分程度に設定されており、入り口では検温、手の消毒、足(靴)の消毒などのコロナ対策の基本的な手順がなされていた。今回の「アンチフィクション」は作者の谷賢一の自作、自演によるひとり芝居であり、体感からすれば感染リスクはそれほど高くはないのではないかと感じた。とはいえ、表題の「アンチフィクション」の通りにコロナ禍の現況におかれ、演劇における虚構(フィクション)の有効性に疑問を感じざるをえなくなった劇作家が書けないことに苦悩するという筋立て。それを劇作家本人が演じるわけだから一種の「私演劇」といってもいいのかもしれない。
 このひとり芝居では冒頭「この話には、フィクションはありません。起こること、起こったことはすべて、本当です。主人公は、私。三十八歳、男。職業、劇作家・演出家。私が語ることはすべて本当であり、私が語ったことはすべて本当になる」といわば表題通りのアンチフィクション宣言を行う。
 そして、ここから戯曲の執筆が進まずに毎晩自宅で飲んだくれている劇作家(谷賢一)の話が始まる。興味深いのこの舞台では「私が語ることはすべて本当」と言いながら、例えば平田オリザの現代口語演劇の手法のように日常がリアルに描かれるのではなく、照明効果や劇伴音楽、ダンスや身体表現の要素などこれまで演劇がつちかってきた様々ないわゆる「演劇的手法」を作品の中に盛り込んでいく。すなわち、平田はいかにリアルに見える虚構を描くかということを試みたのに対し、この作品での谷は語る対象の事実性を担保にそこに様々な演劇的虚構性を放り込んでいく*1。ここまでは作品中で谷(あるいは谷の演じる人物)が自ら説明しているこの作品の枠組みだ。
 さて、実はこの後がこの舞台を見ている間中、私がずっと考え続けていたことなのだが、「劇中で作中人物が語ることは本当に本当なのだろうか」というのがここで問い直したいことなのだった。かなり以前遅筆で有名な劇作家、北村想は書けなくなった作家は本当に書けなくて困った時に自分を作品に登場させ、書けなくて悩む様子を書くというような内容のことを語っていたという記憶がある。事実、彼の作品には北村を思わせる作家がよく登場して、書けないで悩む様子が描かれたりもする。
 今回の舞台の最初の方を見た時にこの作品もまさに「私演劇」として書けない自分を描いたものなのかなと思ったが、すぐにそんな単純なものではないことは分かってきた。例えば、それはまだ最初のほうの部分で芥川賞受賞作家の西村賢太の名前をやや唐突に出している。一見単に作者が好きで出したというような風を装いながらも、西村が日本文学の伝統的な流れである「私小説」の末裔に属するように、自分もそうした日本の伝統を受け継ぐものだと主張することで、形式としての「私演劇」を展開しているとの表明の一部であるようにも感じさせられたからだ。しかも、それはいささか小粒ではあるが、太宰治織田作之助、そして現代における無頼派の後継である西村賢太という文学的潮流の中に自分を意識的に位置づけているように描いているのではないかと気が付いたからだ。
 そうであるとすれば日本文学の伝統である私小説のスタイルを意図的に模倣しながら、そうすることで「虚偽ないまぜのこの話」をいかにも「本当のことらしく」語るという意味では平田と方法論は異なっても同じベクトルの思考が谷にもあるのだ。
 もっとも「私演劇」としての装いを谷は舞台の後半部分では完全にかなぐり捨てる。大人用のおむつをはいたままで「私を月に連れていって」を歌い踊るところなどから、そのことはかなり明白なのだが、その後のシェアハウスで起こった出来事の描写などはリアリズムのかけらもなく、むしろシュール・レアリスムやナンセンスを感じさせるような「アンチリアル」なことばかりだからである。ここで作者はなぜかユニコーンに出合うが、ユニコーンが語るのが同じ日本文学者でもダダイズムに影響された詩作を行った中原中也の「春の日の夕暮」であることは冒頭の西村賢太との対比において興味深い。
 舞台はさらに謎めいたイメージを提示して終わる。それは人生についての隠喩(メタファー)だという「木の根元のかじる白いネズミと黒いネズミ。足元に近づく4匹の蛇。穴の底で口を開けて待っている巨大な竜」というものだ。
 作者によればこれらのイメージは中世の欧州でよく使われていたもので、それぞれに意味があるということらしいが、作品への登場の仕方はあまりにも唐突すぎて、観客がその場で意味として作者の意図を汲み取ることは困難で、私の中にも「春の日の夕暮」と同様にフィクションの象徴として残った。ここまでくればもう明らかすぎるほど明らかだだろうが、これは谷賢一による「いまこそフィクションは復権されねばならない」という宣言にほかならないのだが、それがここまで迂回に迂回を重ねて語られないとならないことにコロナ禍の現代の病理はあるのかもしれない。
www.youtube.com
 

*1:それこそが平田オリザが周到に排除してきたものだ。

『しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村!第110夜』篠原ともえ・百田夏菜子登場@フジテレビNEXT

『しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村!第110夜』篠原ともえ百田夏菜子登場@フジテレビNEXT

概要
しおこうじ=ももいろクローバー玉井詩織×THE ALFEE坂崎幸之助ダウンタウンしおこうじバンド加藤いづみ生誕祭!オトナゲスト篠原ともえ!ほかシークレットも

内容
しおこうじ=ももクロ玉井詩織×アルフィー坂崎幸之助加藤いづみ百田夏菜子生誕祭名演集!夏菜子は何らか参加するのか?ダウンタウンしおこうじバンド宗本康兵音楽監督佐藤大剛・竹上良成・やまもとひかる・朝倉真司!オトナゲスト篠原ともえ!たぶんもう2度と放送されない超貴重な過去映像も!シークレットゲストミュージシャン複数出演?4月5月6月に続く完全保存版とソーシャルディスタンスなスタジオに全員集合で生演奏

セットリスト
M01:Link Link (坂崎幸之助ももクロ)
M02:Rockdom ~風に吹かれて~ (玉井詩織THE ALFEE)
M03:風のファンタジア (加藤いづみ加藤いづみ)
M04:あの日、私の歌が生まれた (加藤いづみ玉井詩織加藤いづみ)
M05:リンダリンダ (加藤いづみ山本ひかるTHE BLUE HEARTS)
M06:オットーの動物園 (加藤いづみ加藤いづみ)
M07:クルクルミラクル (播磨かな&篠原ともえ篠原ともえ)
M08:地下鉄にのって (篠原ともえ吉田拓郎)
M09:帰れない二人 (篠原ともえ玉井詩織井上陽水忌野清志郎)
M10:LOVE LOVE GIRL POP (オールキャスト/ねずみがえし)
M11:好きになって、よかった (加藤いづみ夏菜子/加藤いづみ)
(はみ出し配信)
M12:パフ(しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助PPM

 佐々木彩夏のソロコン配信を見て、どう思ったかというのを一番聞きたいのが、フジテレビ地上波時代から何十年にもわたって音楽番組の制作で陣頭指揮をしてきたきくちP。おそらく、それなりの衝撃を感じなかったら嘘だと思うけれどどうだろうか。ライブの時は毎回発信していたのでコメントしない*1のは他社からの配信であることへの配慮があるんだろうと思う。
 とはいえ、フジテレビNEXTで「しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村!」を作っている今の立場としては「うちはそんなにお金もないし、やれることをやるしかないよ」という気分かもしれない*2
 そういうことで、ここ数回ポストコロナのフォーク村のあり方を模索する回が続いてきたが、新たなスタイルの原型がかたまりつつあるのではないかと感じた今回の放送だった。
 今回興味深かったのはここまで何回かももクロメンバーの過去の出演回の特別編集総集編を流すという構成をやってきた。今回も最後の最後に百田夏菜子がシークレットゲストで登場。メンバの中でただひとり残されていた総集編が放送されて、それは18分にもわたるスタッフの力作であり、彼女の最初のフォーク村登場で歌った「初恋」から始まり、歌の歌い手としての成長の軌跡が伝わるファンにとっては秘蔵版ともいえる内容だったのだが、それ以上に興味深かったのはレギュラーの加藤いづみの映像総集編とゲストの篠原ともえの過去出演の総集編も流したことだ。
 番組の過去映像というのはテレビ局にとっての大きな財産であって、もちろん、どこかの局のように本人にライブもさせずに映像を流すだけの編集なら手抜きと言われてもしかたない部分はあるだろうが、メンバーの過去映像の編集に携わりながら、こうしたアーカイブが大きな武器であることを再認識したのではないかと思う。
 というのは、今回の番組の白眉がゲストの篠原ともえのフォーク村への出演回総集編とさらに遡って、きくちPが過去にかかわった篠原出演番組も合わせての総集編だったからだ。テレビ局の番組アーカイブシステムがどのようになっているのかはよく分からないが、「篠原ともえ」で検索すれば一覧が出てくるというものではないはずで、ここには他のプロデューサーには追随できない経験値が入っている。こうした映像のなかで氷解してきたこともあって途中何度か「ともえちゃんフォークジャンボリー*3という映像が何度か出てきて、篠原ともえ坂崎幸之助とともにMCをつとめたフジテレビの特番のようなのだが、これはかなり明確に後の「ももいろフォーク村」への源流となっているものだというのが分かった。
 ポストコロナにおける番組進行のフォーマットが固まってきたのではないかと書いたが、冒頭の坂崎幸之助による「Link Link 」から、玉井詩織によるTHE ALFEEという流れはもはや鉄板である。実は「Link Link」では今回の前回の「あんとば」同様に小さな歌いそこないのミスがあったが、「ひょっとしたら、これは実は意図的なもので演出かも」との疑いを持ち始めているほどだ。意図的なものではなかったとしても同じ生番組でも例えばFNS歌謡祭でこういうミスは絶対にしないはずで、演出家の意図としては生放送での生歌唱という「フォーク村」の最大の特徴を分かりやすく伝えるにはそういうのはある意味歓迎という番組の姿勢もあるのだと思う。玉井詩織が送風機の風を浴び続けるという演出も笑わせてもらったが、あれもももクロがリハの時に送風機で数曲おきに空気を入れ替えていると言っていたので、ポストコロナ演出の側面もあったかもしれない。
www.youtube.com
 この回は加藤いづみの誕生日回でもあって、ダウンタウンしおこうじバンドのメンバーとしてレギュラーでありながら、ゲスト扱いで登場したが、加藤いづみとしてのデビュー前に別名義で別プロジェクトとして歌ったというアニメ「ロードス島戦記」の主題歌「風のファンタジア」*4を歌ったことだ。この歌でのデビューからは今年で30周年ということで歌ったということだが、「ロードス島戦記」は原作の小説のほかアニメ、ゲームと展開し知名度も高いので、これまでほとんど歌ったことがなかったというのは逆に不思議なことでもあって、別名義ということもあり何か大人の事情があり、歌うことが出来なかったのかもしれない*5。調べてみるとこの時「Adèsso e Fortuna〜炎と永遠〜」という曲も一緒に歌っているらしいから、これもいつか披露してほしい。
加藤いづみ誕生日企画では玉井詩織とのデュオ「あの日、私の歌が生まれた」もよかった。玉井はほかの3人のメンバーに比べると音圧が低いので、いわゆる「歌うま」の人の歌い方ではないが、素直な歌い方でピッチが正確で乱れることがないので、加藤いづみのようなパワフルに歌うタイプではない巧い人とふたりで歌うと相手のよさをつぶすことなく 、相乗効果を見せることがあり、この曲もそういうよさが引き出された選曲だった。
 逆に山本ひかると一緒にカバーした「リンダリンダ」は冒頭思わず、この歌をそんな風に歌うの?と思わず腰を抜かしそうになった。このアレンジだと加藤いづみはともかく山本ひかるは苦しかった(笑い)。途中でアレンジが変わって、原曲に少し近づいたら、途端に生き生きとしてきたから、アレンジに対して「うーん」と思ってしまった。とはいえ、自分でYoutubeに入れているヨルシカとか似たような傾向の歌唱法になる曲以外のいろんな曲に歌でも挑戦させてもらっているのはいいと思う。まだ、残念ながらこの歌ははまったという曲には出会えていない気がするが。

19960826 クルクルミラクル
この日のオトナゲストは何と篠原ともえ。本人登場の前にいつもなら本人が歌いながら登場するはずの「くるくるみらくる」を播磨かな(改名)が歌いながら登場。本来ならサプライズになるはずだが、直前のスタプラ番組「ガチンコ☆スターダスト」で播磨がこの歌を聴いていたので「やっぱり」の第一印象になってしまった(笑)。とはいえ、この日の起用で播磨はこれまで篠原ともえが「お台場フォーク村」で務めていたサプライズの飛び道具要員の後継者の座に名乗りを上げたようだ。
 「地下鉄にのって」もよかった。動画サイトで坂崎幸之助と一緒に歌っているものを見つけた*6のだけれどそれを見ても篠原が本当は歌もうまいんだということがよく分かる映像。今回もよかった。
  フォーク村で「帰れない二人」というと夏菜子、杏果の珍しい組み合わせで二度ほど歌われたことがあり、いずれも名演だと思っているのだが、残念ながら、このところのフォーク村の過去映像の使用法を見る限り、それはもう総集編でも放送されることはないだろう。残念ながら仕方がない。
 どうしても夏菜子のなんともいえないせつない声色にこの歌が合っていたとの思いは隠せないが、今回の篠原ともえ玉井詩織もまったく違う持ち味でいいパフォーマンスであった。いつか夏菜子・詩織の組み合わせで聴きたい気もするが、この歌の色合いからすれば高城れにも向いているかもしれない。
 この日は一番最後に百田夏菜子がスプライズでやってきて、総集編が放送されるととも自粛期間中に加藤いづみの映像に夏菜子が歌を合わせたものをYoutubeにアップした「好きになって、よかった 」を今回は生で披露した。この日最高の名演だったと思う。

ももクロ百田夏菜子×加藤いづみ「好きになってよかった」
 はみだし配信になってしまったがしおこうじによるピーター・ポール&マリーの「パフ」も良かった。ソロ歌唱では少し弱いところのある玉井の歌唱だが、何度も書いているがこういう曲のようにコーラスやハモリが加わると相手の声を生かすよさがあり、この曲もなかなかよかった。英語歌唱のため若干不安定なところがあったが、これはレパートリーとして場数を踏めばさらに大化けするんじゃないかとの予感も感じた。また、情緒を歌い上げるような日本の歌では感情が声に入るタイプの夏菜子やれにに一日の長があるが、さらりと歌えるタイプの洋楽は詩織に向いているのではないかと思う。希望としてはビートルズ曲を歌ってほしい。

【歌えるオールディーズ 15】 パフ (ピーター・ポール&マリー)

*1:後から気が付いたのだが、twitter夏菜子の誕生日を祝うコメントの前に「あーりん!今年も構成演出リスペクト!」と一言だけはコメントしていた。

*2:もちろん、この部分は単なる想像です

*3:www.fujitv.co.jp

*4:
ロードス島戦記 - 風のファンタジア

*5:同曲は“Sherry”名義で歌唱。同曲は1990年7月21日にビクター音楽産業よりシングルリリース。加藤いづみはデビュー以来ポニーキャニオン所属というところまでは分かった。

*6:
地下鉄にのって(作曲:吉田拓郎) 篠原ともえ

ニコ生で『「ももいろクリスマス2019」をメンバーといっしょにみよう ~ニコS特別編~』@ニコニコ生放送

ニコ生で『「ももいろクリスマス2019」をメンバーといっしょにみよう ~ニコS特別編~』@ニコニコ生放送

 これまでの「ニコS」ラインナップではたこ虹の回が圧倒的に面白かった*1のだが、やはり貫禄というかももクロ特別編もそれに匹敵する面白さであった。少し残念だったのは今回はこの日発売日であった「ももいろクリスマス2019」の宣伝番組として、後半に表題にもあるように「『ももいろクリスマス2019』をメンバーといっしょにみよう 」の企画が後半に控えていたこともあり、「ニコS」でこれまでやってきた前半部の流れが大きくカットされていたことだ。特にクイズ企画がなかったのが本当に残念で似たようなクイズを出すNHK番組でレギュラーを務めるれにちゃんがどのような回答を出すのかを楽しみにしていたので、何か別の機会にニコニコ生放送でぜひやってほしいと思う。
 それでもたこ虹からのバトンを受けた前半も面白かった。たこ虹、ももクロはZOOMでメンバーが参加していたグループと比べるとレスポンスの無駄のなさに一日の長があったのは間違いないものの、この2つのグループのバラエティーにおける集団戦の戦い方には後輩グループが大いに参考にすべき点があったと思う*2
 後半のメンバーのライブ鑑賞はももクロでは時折やられる企画なのだが、相変わらずメンバーの誰一人としてまともにはライブ自体を見ていない*3し、自分たちで話をし始めるとそれに夢中になってライブのことなどそっちのけになってしまうのが現在のももクロである*4。ただ、見ていないようでいて、メンバーが無意識にやっていたような笑える「おかしなやらかしポイント」は的確に見つけ出すのもこの人たちの慧眼(?)である。
 ただ、そうした企画でメンバーが真似をして、有名になった夏菜子が鼻の穴を膨らませて歌うところとか、発見ポイントに破壊力がありすぎてその歌の印象を変えてしまいかねない危険もあるのだが(笑い)。
 自分たちのライブを一緒に見る時に本当にうるさいのはももクロ、たこ虹に共通するところなのだが、違いもあることに気が付いた。たこ虹が自分あるいは自分たちのここが可愛かったよかったと常に自画自賛しがちなのに対して、ももクロはそういうことをするのはさすがに羞恥心が勝つためかあまりない。むしろ主に夏菜子やれにちゃんを対象にディスりがちである。これはどちらがいいというものではなくて、似た部分が目立つがそれぞれの個性の違いがあるという指摘。ただ、これで気が付いたのはももクロのディスりをアメフラっシが取り入れて、真似ている部分があるのだが、こういうのは本当に匙加減が難しくて、やりすぎてしまうと内輪の事情が分かったファンはある程度楽しんでくれるのだけれど、外部に対してマイナスプロモーションになる場合もあるのだ。説明するのは難しいが結局はメンバー間の阿吽の呼吸での役割分担の問題かもしれない*5
 実はたこ虹の自画自賛というのも、もろ刃の剣のようなもので、下手をするといやらしくなってもおかしくないのをそうはならないのが味なのだろう。これは本当に心からそう思っているからで、そこにはいっさい邪気や計算はなく、それが見ているひとがそれを許容できる理由でもある。自画自賛と書いたが、この子たちは本当にそのライブが好きなのだということが伝わってくるから、そういう行為が受け入れられるのだ。
 さらに言えば彼女たちはおそらくそれがももクロのライブなら同じように「ここがいい」「ここが可愛い」などと言い続けると思う。ももクロのライブ放映があると5人でいっしょに見ているらしいので、スタプラはぜひ一度たこ虹がももクロライブを見るという番組もやってほしい。ももクロファンもたこ虹ファンも楽しめるものになるはずだ。さらに言うならたこ虹がももクロライブをみている映像をももクロが見てコメントする番組も見てみたい。

『本日発売TV「ももいろクリスマス2019」をメンバーといっしょにみよう~ニコS特別編~』
放送日時:2020年7月15日(水)開場 後6・50/開演 後7・00
視聴URL:https://live.nicovideo.jp/watch/lv326897765

出演者:ももいろクローバーZ百田夏菜子玉井詩織佐々木彩夏高城れに
タイムシフト視聴は7月15日(水)後11・59まで
※配信の一部はニコニコプレミアム会員のみ視聴可能

simokitazawa.hatenablog.com

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:まったく違う空気感を醸し出す私立恵比寿中学はまた別の話である。

*3:杏果がいた時には彼女だけは食い入るように画面を見ていることが多くて、アクセントになっていた。

*4:それを駄目だとは一言も言っていないから勘違いしないように。

*5:ももクロはそのあたりの勘所が鋭くてスタプラメンバーの中ではたこ虹の堀くるみだけがメンバーから自由にいじってもいい存在として認識されていると思う。

KERA・古田新太 CUBE produce『PRE AFTER CORONA SHOW』リーディング『プラン変更 〜名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険〜』@本多劇場

KERA古田新太 CUBE produce『PRE AFTER CORONA SHOW』リーディング『プラン変更 〜名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険〜』@本多劇場

リーディングアクト『プラン変更 ~名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険~』
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:古田新太大倉孝二入江雅人・八十田勇一・犬山イヌコ・山西惇 / 奥菜恵

 出演:
 古田新太 :名探偵アラータ、村人、ネギッ子姐さん
 大倉孝二 :教師、司祭、村人、ネルソン、神様
 入江雅人 :教師、偽ジャーノン、村人、山田、博士
 八十田勇一:桜田家の執事、ロバート、村人
 犬山イヌコ:アルジャーノン、村人、ジェニファー
 山西惇  :姫華の父、村人、マクガイヤー、役人
 奥菜恵  :桜田姫華

当日は都合がつかず後日、配信で観劇。7人の出演者がアクリル板で分けられたエリアでリーディングを行う形式、、、と思いきや、キャストは次々に役を変え、衣装を着替え、立ち上がり、時には台本を手にせずに演じている。リーディングの枠を超えた舞台となった。
 表題に名探偵アラータとあるが、思い出せなくて、???となっていたが、2016年に同じ本多劇場で上演された「ヒトラー、最後の20000年〜ほとんど、何もない〜」*1古田新太がこの役を演じていたらしい。もっとも、その舞台はナンセンスの極致とでもいうべき内容だったので、筋立てもまったく思い出せず、ブログ内検索でそのことを確認したのだが、それについての何の記憶もないのであった(笑)。
 今回の舞台もそれがどんな筋立てなのかを説明するのは難しい。物語は政治家の娘である桜田姫華(奥菜恵)がそのせいでクラスメートにほどいいじめを受け、助けを求めて探偵助手のアルジャーノンくんのもとに行くのを不信に思った父親が探偵、アラータを雇い調査を依頼するというところから、始まるがすぐに姫華が人々から魔女狩りに合い、それに対して姫華も魔術を駆使して応酬する……。舞台を見ていれば面白いのだが、物語自体を説明してもその面白さは全く伝わらず、もどかしいことこの上ないのである。

ケラは1985年に劇団健康を旗揚げし、演劇活動を開始するが、彼らが規範としたのは英国のコメディ集団、モンティ・パイソンの過激な笑いであった。劇団健康は緻密に構築された脚本と精密な演出により、それまでの既存の笑いのパターンをある時はずらし、ある時は解体していき、それをエスカレーション(増殖)させていくことで、純度の高い笑いを生み出すところに大きな特徴があった*2。その後92年に劇団健康を解散、ナイロン100℃を発足。それ以降は、笑いは大きな要素ではあるのだが、それだけに特化するということはなく、群像会話劇の手法などを取り入れながらナラティブ(物語)や世界観の体現といった作風に転向していった。
 もっとも、ナイロン100℃になってからも劇団健康時代の代表作である「ウチハソバヤジャナイ」を何度かにわたって再演するなどナンセンスコメディーへの情熱は完全に枯渇したわけではない。この「ヒトラー、最後の20000年〜ほとんど、何もない〜」で改めてケラはナンセンスに対する情熱を見せてくれた。 

 上記は「ヒトラー~」の時に書いた観劇レビューの抜粋だが、今回上演された「プラン変更 〜名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険〜」もやはりナンセンス劇で、しかも出演者も奥菜恵以外の6人は「ヒトラー~」にも出演していたことから、考えて、実質的に続編だと考えてもいい*3古田新太の名探偵アラータ、犬山イヌコのアルジャーノンくん、大倉孝二の神様は「ヒトラー~」にも同じ役柄で登場していたらしい。もっとも、「ヒトラー~」がどんな筋の舞台だったのかが全く記憶にないので、そのことは当時のブログの記録から分かったが、全然記憶はないのだが。つまり、今回同様そういう類の芝居だったということだろう。三谷幸喜は今回のコロナに際し、演劇への熱い思いをぶつけるような芝居を上演した*4が、同じコメディーでもケラはあくまでバカバカしさに徹した舞台を上演した。どちらも喜劇作家としての矜持を示したとも思うが、この違いも作家としての資質の違いを感じさせて面白いと思った。

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:「80年代的“笑い”のラジカリズム」STUDIO VOICE http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/00000104

*3:ちなみに「ヒトラー~」出演者だが、今回は出演していない賀来賢人はどうしたんだろうと考えていたら、すごくよさそうな役柄で「半沢直樹」に出演していた。役者として当然の選択だと思う(笑い)。と考えていたら、古田新太も出ていたわ、「半沢直樹」。

*4:simokitazawa.hatenablog.com

無観客ライブの新たな可能性拓くオンラインライブ「佐々木彩夏(ももクロ)『A-CHANNEL』」@GYAO

無観客ライブの新たな可能性拓くオンラインライブ「佐々木彩夏ももクロ)『A-CHANNEL』」@GYAO


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『A-CHANNEL』 *1はこれまでの配信ライブのイメージを一変した驚きのライブであった。ももクロ佐々木彩夏の演出家としての才気に驚嘆させられた。無観客ライブの新たな可能性を拓くオンラインライブで、以降心あるライブ演出者はこれを意識せざるえないということになるのではないか。
 このライブを見てしまうとこれまでの配信ライブのほぼすべてが集客ライブ中継かテレビの音楽番組の劣化版にすぎないと感じられてしまうからだ。
 私は演劇が専門なのだが、京都に笑の内閣という劇団という劇団がありその演出家である高間響は「昨今流行しているZOOM演劇はほとんどが劣化した舞台か映画にすぎないと批判したうえで、そうではないZOOM演劇でしかできないものを創作しなければならない」と提唱し、信長の時代にもしZOOMがあって軍議にZOOMを活用していたらというZOOM時代劇*2を創作した。佐々木彩夏によるオンラインライブ『A-CHANNEL』も無観客配信でなければ実現できないありかたを提唱したという意味では革命的なものだったのではないかと思う。
 今回の無観客ライブのテーマは「あーりんの成長」。4パート(小学生・中学生・高校生・社会人)の構成で、あーりんワールドが展開される。佐々木彩夏が生きてきたこれまでの半生を音楽劇として振り返るという設定なのだが、それは最近発売となった自らのファーストソロアルバム「A-rin Assort」のアルバムライブとして、一種のジュークボックスミュージカルのように展開される。ももクロではこれまでも自らの楽曲によるジュークボックスミュージカル「ドュユ・ワナ・ダンス?」ややはり音楽劇のように構成されたアルバムライブ「MOMOIRO CLOVERZ」*3などを上演してきたほか、佐々木彩夏自身も横浜アリーナ両国国技館といった大会場でのライブを毎年開催してきたが、今回のライブは20代半ばという若さにも関わらずこれまで本人が体験したライブ演出のノウハウをすべて注ぎ込んだものとなっており、その実現にはもちろん各分野のプロの全面的な協力を得ているとはいえ、そのすべてにおいて「こういうものでなければならない」という本人の美学が入りこんだものとなっている。
 実は最後にアンコールで歌われた曲につけた手話の振り付けについて、それを佐々木と協力して制作した手話専門家が舞台裏を紹介*4しているのだが、これは専門家の言うとおりに振りつけられた手話をやっているのではなくて、自らが歌詞を手話で表現する時にそれに込めたい意味を実現したいとして、徹底的な話し合い、打ち合わせの末にそれが実現したことが語られているのだが、おそらく、映像、美術、ダンスの振り付け、構成、カメラワークなどすべての部分についてスタッフに丸投げして適当にやってということはなく、同じようなやりとりが交わされたのではないかと思う。  
 実は今回のライブにはコロナ禍によって中止になってしまったソロコン「AYAKA-NATION2020」の代替え開催の意見合いもあったのだが、単なる「ソロコンの劣化版」にしないための仕掛けが随所にあった。実はライブ前に「今回のライブはいろんな場所を移動しながら進行する」と説明していたので、ロビーや客席、サブイベント会場など多目的な機能を持つ横浜アリーナを移動しながらライブするのではないかと予想していたのだが、あーりんの選択は予想の斜め上を行く
 会場は横浜アリーナではなく、大規模なフェス系クラブイベントが開催可能な新木場スタジオコースト*5。ここにまるで映画撮影のように舞台美術、照明機材を持ち込み、プリセットされて合成されたアニメーションや映像を除けばライブ自体はすべてを一発撮りの生中継で曲ごとに場所を移動しながら、おそらく単独のカメラによる長回し的な移動撮影で展開*6された。テレビ局の制作スタッフはなぜ自分たちにこれが出来なかったのか*7を振り返って考えてみるべきだと思う。
 ここまで演出家、佐々木彩夏のことばかり語ってきたが、もちろん、今回のようなライブを可能にしているのはあーりんのパフォーマーとしての人並外れたポテンシャルがあってのことだというのは間違いない。同じようなことを企画したとして、それが人を飽きさせないで魅了し続けることのできるパフォーマーが日本に果たしてどれだけいるのか。
こんなことが可能になるのは演者でもある佐々木彩夏がそれこそももクロに入る前の幼少時代からアイドル「あーりん」をセルフプロデュースしてきた稀有な存在だからだ。松田聖子とか小泉今日子とか過去にも自らを独自のアイドルとセルフプロデュースしてきたアイドルはいたはずだが、あーりんほどキャラとしての「あーりん」が本人によってはっきりと意識化されている例は珍しいのではないか。そのことの結果として、キャラクターとしての「あーりん」はアニメや人形(劇)、バーチャルな世界との親和性がきわめて高い。過去の例でもあーりんはゆるキャラふなっしーやバーチャルAIのキズナアイ、最近では自宅にいる(ある)チロちゃんなどバーチャル世界のキャラクターと組み合わせた時に無類の面白さを発揮するが、今回もそれはアニメの「あーりんちゅあ」から新曲「ハッピースイートバースデー!」*8からCROWN POP、アメフラっシをバックダンサーを引き連れての子供姿でのあーりんによる「ゴリラパンチ」、アニメ主題歌をカバーした「キューティーハニー」、アニメ「ちびまる子ちゃん」のキャラと共演する「私を選んで! 花輪くん」へとシームレスにつながっていく。やはり、アニメの主題歌ではあるがももクロ曲の「笑一笑 ~シャオイーシャオ!~」は後輩をバックに従えて、普段ステージに使われている空間から中継。
 ひとりに戻ってピンクの少女らしい衣装に着替えてた「だって あーりんなんだもーん☆」では歌うあーりんの上をピンクのCG画像が舞った。続く「 君が好きだと叫びたい」は会場の屋外部分にあるプールに無数のプラスティックボールを浮かべたセットで靴を脱いで裸足になり足を水につけながら歌った。アニメ「SLAM DUNK」の主題歌のカバーなのだが、あーりんが歌うバージョンはMCを務めた「愛踊祭」の課題曲としてヒャダインが編曲したもので、あーりんには珍しい恋愛ソングにもなっている。ここからは中学生ブロックが続くのだが、“50's”がモチーフにの「My Hamburger Boy(浮気なハンバーガーボーイ)」「My Cherry Pie(小粋なチェリーパイ)」に合わせて今度は全員がかわいいマスクをつけての演出となりCROWN POP、アメフラっシのメンバーを引き連れて会場内を移動していく。廊下や通常は飲料販売なども行うカウンターなどあらゆる場所をステージに使う演出が見事であった。
 アニメのあーりんロボコントに引き続き「あーりんは反抗期」ではセーラー服で再登場。最初は三つ編みの真面目な生徒だが、反抗期が講じて次第に不良に変貌、ついにはももクロ曲をソロカバーした「あーりん飛ばしすぎ!」に突入、この日のために構成作家のオークラが書いた特別バージョンの歌詞をたったひとりで歌い上げた。 
 ソロライブのAYAKA NATIONでもプロのダンサーではなく毎回あえて後輩のアイドルグループのメンバーを起用し、その魅力を引き出すような演出を試みているが、この配信ライブでもダンスが得意なCROWN POP、アメフラっシの2グループのメンバーをダンサーに起用した。後輩グループのファンの一部には毎回、「バックダンサーとして借りだされた」などと批判する声があるが事実はまったく逆だ。今回はコロナ禍対応の演出でマスクをつける演出が多く、いつもよりも顔を見えにくいなどの問題があり、ディスタンスを取るためにあーりんのかなり後ろで踊る必要があるのだが、GYAOの映像は解像度が高く、アーカイブもあるためにそれぞれのグループのファンも自分の好きなメンバーの踊る姿を何度も確認しながら見ることができるし、カメラ割りもあーりんの指示で後輩メンバー個々をアップで映す場面を用意している。特に今回はリハーサルの時間があまり取れずに早着替えや時間がない中振付を入れる必要もあり、実力派のCROWN POP、アメフラっシのメンバーがいればこその演出だったと思う。
 あーりんの成長を描いていくという演出のなかで、大人のあーりんを描いた「Memories, Stories」「Grenade」
「空でも虹でも星でもない」と続くブロックが素晴らしい。特に「空でも虹でも~」は歌詞とオーバーラップするように他のももクロメンバーや昔のあーりんの映像が映し出される演出がエモーショナルであった。
 とはいえ、この日の白眉はアンコールで歌われた手話付きの「モノクロデッサン」のソロでの歌唱である。この歌は有安杏果がまだいた5人時代の楽曲であるが、それぞれのメンバーカラーである5色の色が歌詞にそのまま歌われており、歌割りもそれを反映したものとなっているため、4人になってからは杏果卒業直後のフォーク村で、杏果パートを加藤いずみが受け持つ形で一度だけ歌われた以降はほかの歌のように歌割の変更がしにくいことや、「どの色が欠けてもこの夢の続きは描けないからいろいろとあるけどめげずにゆくのさ」という5人を前提とした部分はあるので、4人で歌いにくいということもあって半ば封印されていた感があった。とはいえ、この歌には転調後のピンクパートこというあーりんの大きな見せ場もあり、あーりんのソロ曲としての復活は誰も予測できなかったことだが、絶妙な着地点であった。

佐々木彩夏「A-CHANNEL」2020年7月12日 セットリスト
SE. あーりんちゅあ
01. ハッピー▽スイート▽バースデー!
02. ゴリラパンチ
03. キューティーハニー
04. 私を選んで!花輪くん
05. 笑一笑 ~シャオイーシャオ!~
06. だって あーりんなんだもーん☆
07. 君が好きだと叫びたい
08. My Hamburger Boy(浮気なハンバーガーボーイ)
09. My Cherry Pie(小粋なチェリーパイ)
10. あーりんは反抗期!
11. あーりん飛ばしすぎ!
12. Bunny Gone Bad
13. スイート・エイティーン・ブギ
14. あーりんはあーりん▽
15. Memories, Stories
16. Grenade
17. 空でも虹でも星でもない
18. Early SUMMER!!!
19. Girls Meeting
<アンコール>
20. モノクロデッサン

natalie.mu

(見逃し配信8月28日まで)

*1:
3夜連続!!! 『A-CHANNEL』直前生配信 第1夜 (2020年7月9日)

*2:simokitazawa.hatenablog.com

*3:
ももいろクローバーZ / レディ・メイ(from 5th ALBUM『MOMOIRO CLOVER Z』SHOW at 東京キネマ倶楽部)

*4:minamiruruka.seesaa.net

*5:www.studio-coast.com

*6:見せ方のことばかりを考えていたが、これなら撮影スタッフは照明、音響などをプリセットしておけばひとりだけで済み、ディスタンスも取れるわけだ。

*7:予算の問題はもちろんあるだろうが、FNSやNHK制作の音楽番組をこれと比べると、要するに既存のイメージ上で作るか、出来ることの可能性を探るかの違いがあることは明白だと思う。

*8:
佐々木彩夏「ハッピー♡スイート♡バースデー!」MUSIC VIDEO

たこやきレインボー ニコ生で無観客生配信LIVE「CLUB RAINBOW‘20」@ニコニコ生放送

たこやきレインボー ニコ生で無観客生配信LIVE「CLUB RAINBOW‘20」@ニコニコ生放送

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2018年にツアーを開催したまるでクラブのダンスフロアのような空間にライブを変容させるという「CLUB RAINBOW」のコンセプトに基づきそれに最新曲も追加した「CLUB RAINBOW‘20」をたこやきレインボーの無観客ライブとして展開した。無観客とはいえ、ひさしぶりのワンマンライブということでたこ虹の現時点でのポテンシャルが爆発した、と思う。
たこやきレインボーといえばその名前からの連想もあり、元気で愉快なグループのイメージがある。「たこ虹の家にいるTV」などの配信コンテンツを見てもそうしたイメージは裏書きされるが、実はそのパフォーマンスにおいてはそれだけにとどまらないスタイリッシュでアーティスティックな要素を前面に打ち出す時も多く、クラブ音楽的なアレンジで曲間をつないでいく、この「CLUB RAINBOW」の演出は「カッコいいたこ虹」を強く印象づけようとしていたかもしれない。
 「虹色進化論」「Rainbow Plane」と見ていくとたこ虹はダンスパフォーマンスの力も歌唱の技術もグループアイドルとしてはトップ級にあることがうかがえる。avexと契約した当初はそれまでのヒャダインのコミカルな関西色を前面に打ち出した作風とダンスミュージックを売り物とするavexというレコード会社の方向性に齟齬が感じられる時もあり、ファンの間にも毀誉褒貶が多かった時期もあったが、この日の完成度で展開されていく楽曲の多才さを見ているとここにきて完全に高いレベルで関西色、ダンスミュージックなどのすべての要素がかみ合って唯一無二のたこ虹のパフォーマンスが出来上がってきたことが得心できるのではないかと思う。
 冒頭でのカッコよさにも圧倒されたが、彼女たちしかできない魅力が爆発したのが、「尼崎テクノ」から新曲の「恋のダンジョン UME」へとつないでいく流れだろう。特に「恋のダンジョン UME」はMVとサブスクで楽曲のみ聞いていた段階ではピンとこない部分もあったのだが、ライブで生きる曲。今後のライブではこの日はあえてセットリストに入れなかったメジャーデビュー曲「ナナイロダンス」などと並ぶキラーチューンとなっていきそうだ。
 それにしてもここまで言及した段階では音楽のノリやカッコよさに興奮させられるという感じの感想だった。もちろん、その水準に達するパフォーマンスができるグループも数少ないからそれだけでも高い評価に値するのではあるが、このライブには後半部分にエモーショナルな感情を揺さぶられる部分があった。
 彩木咲良作詞の「SuperSpark」が素晴らしい。たこ虹が所属する事務所「スターダストプロモーション」がスターダスト(星屑)という名前を持つことから、ももいろクローバーZを始めとしたその所属グループは星にまつわるモチーフを主題として歌うことが多いのだが、この「SuperSpark」もそうした1曲。メンバーの彩木の作詞ということもあって、星をメタファー(隠喩)として、自分たちのことと重ねて歌っている。アイドル曲はももクロの場合でもそうだが、空なら空、星なら星となぞらえて歌っていながら、実はそれが自分たちの思いと二重重ねとなってくるような構造を取ることが多いが、「SuperSpark」は典型的なそういう楽曲である。それで思いをこめ感情をぶつけて歌うことで感情を揺さぶられることが時折起こるが、今回のライブはそれが現在の状況と重なり合って、さらに心の琴線をかき乱すような強い印象を与えた。
 ももクロもそうだがこうした感情をファンに引き起こさせていく力はアイドルの場合重要だ。たこ虹の場合、この「SuperSpark」を作詞、そしてこの日アンコール曲として最後に披露された「一緒に帰ろう」の作詞作曲も手掛けた彩木咲良は今後の彼女たちにとってのキーパーソンとして重要な役割りを担っていきそうだ。というのはこの2つの楽曲を見て分かるように、彩木の場合、単にいい音楽を創作する才能を持っているということだけにとどまらず、それがたこやきレインボーというグループの個々の意志、全員の意志を代弁するかのようになっているからだ。
 この曲は「並んで歩いてくこの道 暗くて静かな夜 ふとみんなで見あげたら 沢山の星たち 並んで眺めた夜空に一番星を見つけたんだ どんな星よりも1番に輝いていた」とはじまる。皆で見つけた一番星(宵の明星)のことを歌っているようで実はこの一番星はたこ虹の目標であることが次第に分かってくる仕掛けになっている。
https://www.uta-net.com/song/263759/
 そしてこの曲の途中で「夜空に光る あの一番星を 私たちいつか届くかな」という箇所がある。曲の中には具体的なイメージは直接は描かれていないけれど、「一番星」と言うときに彼女たちの脳裏に浮かぶイメージはグループとしての目標として彼女たちがよく挙げる甲子園球場でのライブかもしれない。そのほかにもいろんな目標はあるだろう。
 そのどれも当てはまるようにあえて描かれた歌詞だけれど、本当はあえて口にださないひとつのことを示していることを私たちは皆薄々気づいている。だから、どこか一点を見つめるような彼女たちの強い眼差しを見る時にいつの間にか強い感情に突き動かされて、思わず感情移入させられ涙ぐんてしまったのである*1。 

www.youtube.com

live2.nicovideo.jp

CLUB RAINBOW'20
2020年7月12日(日)

虹色進化論
Rainbow Plane
なにわのはにわ
たこ虹物語〜オーバー・ザ・関ヶ原
にじースターダスト
どっとjp ジャパーン!
尼崎テクノ
恋のダンジョン UME
卒業ラブテイスティ
もっともっともっと話そうよ -Digital Native Generation-
輝け!おっサンシャイン!
SuperSpark
ちゃんと走れ!!!!!
オーバー・ザ・たこやきレインボー
(アンコール)
一緒に帰ろう

開場:2020/07/12(日) 16:00
開演:2020/07/12(日) 16:30

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01. ちちんぷいぷいぷい
02. 恋のダンジョンUME
03. プレイバックス
04. もっともっともっと話そうよ -Digital Native Generation-
05. めっちゃDISCO
06. ナナイロダン

*1:本文の中ではあえて触れないでおくことに決めたが、もちろん、「一番星」とは彼女たちの目標であるももいろクローバーZのことである。

PARCO劇場オープニング・シリーズ 三谷幸喜氏が書き下ろす新作『大地(Social Distancing Version)』WOWOW

PARCO劇場オープニング・シリーズ 三谷幸喜氏が書き下ろす新作『大地(Social Distancing Version)』WOWOW

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 本来はチケット予約して妻と一緒にPARCO劇場で観劇するはずだった舞台だが、WOWOWのStreamingで自宅での観劇となった。客席数を減らして、有料放送(WOWOW)の配信との併用ということになったわけだが、今後はこういう舞台が増えてくることになるのだろうと思う。
 ナチスドイツのそれを思わせるような強制収容所に収監された俳優たちを描いた群像劇だ。ユダヤ人などの民族的迫害ではなく、対象とされているのは演劇人たち。時の政府から有害かつ反政府的な存在と見なされて、隔離収容されてしまうという設定が皮肉で面白い。
 笑の内閣の高間響は自ら企画したZOOM演劇への宮台真司とのプレトーク対談で「世間の人から演劇あるいは芸術は憎まれている。理解されないと窮状を訴えるのではなく、自分たちはそういう存在だということを前提に行動を起こさないとならない」と語ったが、三谷幸喜の「大地」という舞台からもあいちトリエンナーレなどでの芸術全般への逆風やコロナ禍での演劇への世間からの風当たりの強さなど昨今の状況への危機感が感じられるといえよう。
 三谷幸喜には検閲への喜劇作家の闘いをコメディーとして仕立て上げた「笑の大学」という代表作があるが、そこまで直接政治的なものではないにしても、この物語にも権力に立ち向かう演劇人たちの矜持とそれと二律背反する英雄ならざる人間の小心も描かれる。
 そこにはコロナのもとで演劇はどのように振舞えばいいかの問題とも二重重ねになってくるような問題提議もある。物語の最後には観客の存在が演劇をやるものにとっては最大のモチベーションなのだというメッセージが語られる。この種のメッセージを直接作品で表現することは三谷にとって稀なことだが、そこには演劇が置かれた現状への思いを直接ぶつけたような強い意志も感じらせた。

演じるとは何か?笑うとは何か?生きるとは何か? 三谷幸喜が新生PARCO劇場に書き下ろす、三谷流俳優論。

作・演出:三谷幸喜
出演:大泉洋 山本耕史 竜星涼 栗原英雄 藤井隆 濱田龍臣 小澤雄太 まりゑ 相島一之 浅野和之 辻萬長

この日以外は配信チケットも販売。
eplus.jp